日本でも増えるスパイス
スパイスと言えば、どのようなものを思い浮かべますか。
コショウやシナモン、クローブ、クミンなどは知っている方も多いでしょう。
カレーに入っているイメージも強いように、海外で作られてきた料理にはスパイスが欠かせないことも。カレーにクミン、洋菓子にシナモン、中華料理に八角、韓国のキムチに唐辛子、スペインのパエリアにサフランなど。各国の料理で独自のスパイスが使われています。
様々な海外料理店が増えるにともなって、私たちも知ってか知らずかして、スパイスを口にする機会も増えています。
スパイスの種類は様々
スパイスとハーブとの違いは乾燥しているかどうか
では、実際、スパイスとはどのようなものなのでしょうか。
スパイスを使った家庭料理をふるまったり、ラジオ出演、著書『料理をひきたたせる「スパイス」がわかる本』(セルバ出版)を出すなど、「スパイスの女王」の異名を持つ専門家、遠井香芳里(とおい かおり)さんに話を聞きました。
遠井さんがよく聞かれるのは「スパイスとハーブの違いは何か?」ということ。
「定義が定まっていないため、専門家でもまちまちです。一般的に多く言われるのは、スパイスとは乾燥した木の皮や幹、根、蕾。一方、ハーブはフレッシュ(生)だったり、葉や茎に当たるものです」。
パクチーの種はコリアンダーとしてスパイスに
同じ植物でも、使われ方で名前も異なることがあります。
例えば、ローズマリーは、生でも使えますし、乾燥しても使えます。大手企業でもハーブ系スパイスとくくるなど、区分はまちまちです。
また、近年、人気が高まったパクチーは、クセの強さからも想像がつくようにハーブにくくられます。ただし、その種はコリアンダーと言われ、スパイスに区分されます。
日本でのスパイスの歴史
薬としても使われたスパイス
スパイスは日本でも実は古くから使われてきました。
8世紀には海外から日本へ渡っており、奈良の正倉院からもクローブが見つかっています。他にもコショウやシナモンも輸入されていたようです。
さらに、薬としても使われた甘草(リコリス)は、江戸時代に栽培もされていました。山梨県の高野家では、江戸幕府から任された甘草の栽培管理でお屋敷が建つほど。現在では、甘草屋敷として観光地の一つにもなっています。
日本独自の和スパイス
何より日本には、独特のスパイスがあります。
ワサビ、ゴマ、ショウガ、山椒などがそれ。これらは和スパイスとも呼ばれるようです。
ご存じの通り、これらは現在も日本で栽培されているものです。
これらがスパイスの一種だと思っていなかった方も多いでしょう。スパイスは決して辛いだけのものではありません。
日本で育てられるスパイス、難しいスパイス
コショウやクミンは日本では難しい
栽培はと言うと、コショウやクミンなど、ほとんどのスパイスは輸入に頼っているのが現状のようです。カレーに欠かせないクミンは、平成27年には過去最高2,463トンが輸入されました。
輸入に頼る背景には理由が2つあると遠井さんは話します。
1つは、日本の気候では栽培が難しいため。もう1つは、先のとおりスパイスは木の皮や幹、根などのため、穫れるまでに時間がかかるため。クローブは、実をつけるまで20年かかるそうです。
ベランダでも育てられるローズマリー
一方で、ワサビ、ゴマなどの和スパイス以外にも、日本で作れるスパイスもあります。
ハーブとしてミントをベランダで育てる方もいるでしょう。同じようにローズマリーも比較的、栽培が簡単でベランダで育てられるスパイスだと言います。
ただ、日本でもハーブ園はあるものの、スパイスだけで構成されたスパイス園はないそう。まだこれからの作物と言えそうです。
スパイスは野菜とも相性抜群。子供の野菜嫌いにも
スパイスは調味料のように味を整えます。
江戸時代のレシピに、煮た大根に、白みそ・みりん・シナモンパウダーを混ぜて、付けて食べるというものがあったそうです。
野菜との相性が良いスパイス。ニンジンをクミンで炒めるだけでも美味しいと遠井さんは話してくれました。
現在でも、野菜の苦さが嫌いという子供にスパイスで克服させることもできるでしょう。使い方ひとつで広がる可能性を秘めたスパイス。農作物や、飲食店、もちろん家庭の調味料として、選択肢の一つにいかがでしょう。
神戸税関貿易統計
http://www.customs.go.jp/kobe/boueki/00boueki_top.htm