ビールを核にした産業づくりを-「ビールの里構想」とは
天に向かって勢いよくツルを伸ばし、青々とした実のような「毬花(まりばな)」をたたえるホップ。麦芽、水と並ぶ、ビールの重要な主原料です。
日本一のホップ生産拠点である岩手県遠野市。大手ビールメーカーのキリンが、50年以上にわたって遠野の農家と契約栽培を行ってきたこともあり、「ホップの里」として全国に認知されつつあります。
遠野を「ホップの里」に留まらず、農家や醸造家、大手や地元企業、行政や市民が連携して、ビールを核とした産業でにぎわう街に変貌させるプロジェクトが、「ホップの里からビールの里へ」を合言葉に取り組まれています。
ビールの里構想が思い描く風景は、ユニークで野心的。地元の素材を活かしたビールを生産する小規模醸造所(マイクロブルワリー)が街に点在し、それらの醸造所とホップ畑をめぐる「ビアツーリズム」で日本中、ひいては世界中から人を集めるというものです。
遠野=ビールのまちに 農家・醸造家・市民と連携
プロジェクトのプレーヤーのうち、「ホップ農家」はビールの里に欠かせない遠野産ホップを育てる重要な役割を担います。現在遠野では、キリンの「一番搾り とれたてホップ生ビール」などに使われる、「IBUKI」というホップを中心に栽培しています。
今後は、それに加えて新しく開発したホップをはじめ、多種多様なホップの栽培を目指します。現在、国産ビールの大半には、乾燥してペレット状に加工した輸入ホップが使用されていますが、日本の醸造所が、日本ならではのオリジナリティのあるビールを作っていくには、「国産ホップ」は欠かせない存在です。一大生産地である遠野でホップ栽培をすることは日本のビールの未来にも繋がっていくことだと考えています。
さらに、多様な品種があれば、苦味や香りの華やかさにも濃淡を出せ、ビールのバラエティーが豊富になります。ゆくゆくは「遠野産ホップ」の世界ブランド化を目指したいといいます。
また、醸造家と連携して商品開発をしたり、ビールのおつまみとなる作物を栽培したりと、“生産者視点”でプロジェクトに関わり、遠野のビール文化を豊かにしていく使命を持ちます。
田村さんは、新しいビール産業・コミュニティの創出を目指して、各プレーヤーやプロジェクトメンバーと連携し、ブルワリーやビアツーリズム事業の設計や、起業家の育成をするなど、プロジェクト全体を束ねていきます。遠野に移住してきた2人の醸造家と田村さんは、醸造所「遠野醸造」を、2017年11月に設立。今年4月にはブルーパブ(醸造所付きレストラン)を開店予定で、本格的に遠野産ホップを使用したクラフトビールを醸造し、人々の喉を潤します。
田村さんは「遠野に来れば、いつもビールにまつわる楽しい体験ができる、と思われる場所にしたい」と、意気込みます。3年前から毎年8月に、市民が運営スタッフとなり、遠野産ホップを使ったビールを楽しむ「遠野ホップ収穫祭」を開催、昨年は6000人の遠野市民や観光客らでにぎわいました。
地域おこし協力隊制度を活用して、ホップ農家を募集
現在、「良質な遠野産ホップの安定供給」という面でプロジェクトの骨子を支える、ホップ農家3名を募集しています。
実は、国産ホップは生産量の大幅減という危機に面しています。その量は15年前と比べて約半減。要因の一つに、ホップ農家の高齢化や後継者不足があります。加えて、「ホップは、十分な収量を確保できるまでに3年はかかるといわれるなど、新規で取り組む作物としてはリスクが大きい」と、田村さんは話します。
ホップ生産現場の課題解決と就農者増加策ため、地域おこし協力隊制度を活用する本プロジェクトに関わるホップ農家は、最大3年間は月額14万円の基本所得を支給されながら、現地の生産法人や遠野ホップ農業協同組合から丁寧な技術指導を受けることができます。
スペインでは日本の枝豆のようにビールの定番という、シシトウにも似たおつまみ野菜「遠野パドロン」などおつまみとなる作物の栽培や、醸造や農業ツアーにも関わるため、既存の農家のイメージを越えて多角的な視点を養うことができるといえそうです。「農業は決して楽な仕事ではないですが、ホップの栽培に真摯に向き合いつつ、同じまちづくりのビジョンを共有してくれる人と働きたい」と、田村さんは求める人材像を語ります。対象者の年齢、農業経験の有無は問いません。
「このプロジェクトの成功が、日本のホップ農家やビール文化に良い影響を与えられるはず」と、田村さんは力を込めます。遠野発の「次世代農家」として働き、日本のビール史に名を刻む仲間を熱望しています。
募集要項の詳細はこちらをご確認ください。応募締め切りは、2018年6月16日(土)まで。
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BrewingTono 募集要項
キリン株式会社 キリンが応援する遠野のまちづくり