交付金を必要経費として申告できる「農業経営基盤強化準備金制度」
本来、交付金は利益として計上されるため課税対象となりますが、2013年に発表された農業経営基盤強化準備金制度により、必要経費として算入できる特例措置が定められました。各市町村へ事前申請をした上で、交付金を農業経営基盤強化準備金として積み立てておけば、確定申告のときに個人事業主は必要経費に、法人は損金として算入できます。
農地の取得や農業機械の導入など大きな投資が必要な場合、交付金を最大5年積み立てておき、それを取り崩すことで購入費に充てる事が出来ます。更に、準備金を利用して購入した資産は、圧縮記帳することで、帳簿価額を一定額まで課税所得から減額することも出来ます。
認定農業者であることが条件
農業経営基盤強化準備金制度の対象者となるのは、個人の認定農業者と特定農業法人または特定農業団体、その他の委託を受けて農作業を行っている組織です。個人の場合は兼業農家も対象となり、新規就農者も申請が可能です。認定農業者として、農林水産省からの交付金を受け、青色申告で確定申告を行っている農家が対象となります。
認定農業者になるには、事前に5年後の目標とその内容を記した「農業経営改善計画」を作成し、市町村に提出します。新規就農者の場合は「青年等就農計画」などの提出も必要です。この時、将来取得する予定の資産(農地、設備、農機など)を計画に盛り込んでおきます。すでに農業経営改善計画を提出済みで、新たに取得する資産が出てきた場合には、再度計画の提出が必要です。
対象となる交付金の種類
2018年度の農業経営基盤強化準備金制度には、下記の交付金があります。
・畑作物の直接支払交付金
・米・畑作物の収入減少影響緩和対策交付金
・水田活用の直接支払交付金
対象となる資産と適用品目
節税にもつながる農業経営基盤強化準備金制度ですが、積立金で購入できるのは農業に関する資産に限られます。農地の他には、ビニールハウスや貯蔵庫、農機を入れて置く小屋などの農業設備、トラクターや精米機などの農業機械、農業用ソフトウェアなどが対象になります。ただし、販売所や加工所などの設備、軽トラックやフォークリフト、パソコンなど、農業以外にも使える農機は対象外です。また、トラクターがリースの場合も除外されます。
対象品目に関しては、麦、大豆、甜菜(てんさい)、でん粉原料用ばれいしょ、そば、菜種に限られます。ただし、複数の農作物を栽培している場合は、対象品目以外も適用となります。つまり、大豆で交付金を受けている人がトマトの栽培も行っている場合、トマト用のビニールハウスを購入するために積み立てても適用されるというメリットがあります。
限度額と覚えておきたい注意点
農業経営基盤強化準備金制度は、その年の所得額を超える金額の積立はできません。積み立てたい金額と所得額を比べた場合、少ないほうが準備金として算入できる限度額となります。また、農業経営改善計画に記した期限を過ぎると、積み立てた準備金は一括収入に組み込まれます。まだ購入に達していない場合は、計画を更新する必要があります。
更に、農地を購入予定だったがトラクターを購入したなど、計画の予定に無いものを購入した場合も適用されないので注意が必要です。
正しく理解して節税につなげよう
農業の効率化や経営の安定化、収入の拡大に欠かせない農業経営基盤強化準備金制度。確定申告の際には、農林水産大臣の証明書や取引記録などを記帳した書類が必要となるなど、十分に仕組みを理解しておく必要がありますが、大幅な節税につながります。
農林水産省の農業者向けのウェブマニュアルをチェックしたり、各県の地方農政局や農政事務所に相談して有効活用しましょう。