さわやかな味わいとのど越しを楽しめるシードル
ラテン語で「果実を発酵させてできたお酒」を意味するシードル。その名のとおり、一口飲むと、果実ならではのフルーティな香りが口いっぱいに広がります。料理の味を邪魔することもないため、食前から食後まで、幅広いシーンにぴったり。さわやかな味わいとのど越しが楽しめるとあって、今では女性を中心とする多くの人たちに愛されているお酒です。
シードルが生まれた時代については諸説ありますが、一説では11世紀頃の商業船の往来をきっかけとして、フランス・ノルマンディー地方へシードルアップルの挿し木が流入し、以降、フランス全土でシードルが製造されるようになったと言われています。
リンゴがシードルになるまでには、複数の工程があります。まず、収穫したリンゴを屋外で外気に触れさせ、熟成させます。その後、圧搾機を使って搾った果汁をタンクに入れ、発酵を進めます。その際、糖分の一部が、もともとリンゴにある酵母の働きによって、アルコールや炭酸ガスに変化していくことで、シードル独特のシュワっと感が生まれるのです。その後、表面に浮いてきた果肉を除去したり、新たなタンクに移したりする作業を経て、ようやくシードルが完成します。発酵と熟成にかかる期間は、平均して3カ月ほどになるようです。
数十種類ものリンゴをブレンドして造られるシードルも

シードル用のリンゴ。食用よりも小ぶり
ここでは、シードルの“聖地”ともいえるノルマンディー地方に焦点を当て、シードル用リンゴについてご紹介します。
フランスの北西部に位置し、穏やかで湿度が保たれているノルマンディー地方の気候は、ワインのもととなるブドウよりもリンゴの栽培に適していたことから、この地では古くからリンゴが栽培されてきました。
シードルに使われるリンゴの種類は、苦味種(アメール amère)、甘苦味種(ドゥース=アメール douce-amère)、甘味種(ドゥース douce)、酸味種(アシデュレ acidulée)の全部で4種類。食用のリンゴよりもサイズが小さく、酸味があることが特徴です。これらのリンゴをブレンドすることで、シードルは出来上がります。中には数十種類以上のリンゴをブレンドして造られるものもあるそうですよ。
収穫時期は、熟れたリンゴが木から自然に落ちる9〜11月ごろ。木を揺すって地面に落ちたリンゴを手で拾い集める形で収穫します。
まだまだあるあるリンゴのお酒
リンゴのお酒はシードル以外にも複数種あり、例えばシードルをさらに蒸留・熟成させた「カルヴァドス」や、シードルとカルヴァドスをブレンドして熟成させた「ポモー」があります。
「カルヴァドス」のアルコール度数は、およそ40度。ウィスキーと同程度のアルコール度数の強いお酒で、食後に楽しむ人が多いようです。また、「カルヴァドス」の最たる特徴は、その独特な香りです。口に含んでいる時はもちろん、胃に落ちた後も、フレッシュなリンゴの香りが口中を漂います。最低2年は樽に入れて熟成させることが「カルヴァドス」の条件ですが、熟成期間が長くなればなるほど香りも強くなるようです。
一方の「ポモー」は、なめらかな舌触りの甘みが強いお酒です。食前酒としてはもちろん、食後にデザートと一緒に楽しむことができます。
近年、シードルは日本でもコンビニなどで簡単に手に入るようになり、開発・製造に乗り出す国内のメーカーも増え始めています。日本産シードルならではの特徴にも注目していきたいですね。
参考
素材研究(食):一般社団法人日本旅行業協会
【とっておきのヨーロッパだより】ノルマンディーのりんごのお酒:辻調グループ 総合情報サイト