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農にまつわる日本のお祭り 〜北陸、東海3選〜

農にまつわる日本のお祭り 〜北陸、東海3選〜

日本の祭りには地方に伝わる言い伝えや伝統を受け継いだものが多く存在します。見るものを魅了する屋台彫刻や、独特の踊りを披露する舞、日本神話に登場する神々への奉納など、今も古代の人々の思いを伝えています。毎年世界中からも多くの観光客が訪れる日本の祭りですが、その中でも農業が起源となる祭りは日本に数多く存在します。そこで今回は、北陸・東海地方において、毎年たくさんの人でにぎわう「農業が起源となった祭り」を3つご紹介します。
(画像は高山祭。提供:高山市文化財課)

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農耕祭から町民の祭りへと発展した「岐阜県・高山祭」

岐阜県・高山祭(画像提供:高山市文化財課)

岐阜県高山市で開催される高山祭には、春の「山王祭(さんのうまつり)」と秋の「八幡祭(はちまんまつり)」の二つの祭りがあります。毎年10月9日・10日に行われる秋の「八幡祭(はちまんまつり)」は、お囃子(はやし)や雅楽、屋台彫刻、伝統衣装をまとった大行列など、変化を繰り返しながらも江戸時代から受け継がれてきた伝統を守り、毎年多くの観光客を楽しませています。もともとは、豊作祈願や秋の収穫を祝うものとして親しまれてきたお祭りですが、城下町として高山の町が発展するようになると、農耕の祭りから町民の祭りへと移り変わっていきました。

高山祭では、春の山王祭では12台、秋の八幡祭では11台と、それぞれの季節にしか見ることのできない屋台が登場します。八幡祭でしか見ることのできない、4台の屋台が町を巡る「屋台曳き廻し(ひきまわし)」や、からくり人形を乗せた屋台・布袋台(ほていたい)の「からくり奉納」を楽しむことができます。八幡祭で特に人気の高い「からくり奉納」では、2体の唐子(からこ)人形が布袋和尚の人形の肩に飛び移るなど、巧妙なからくり芸を披露。人形たちの演技が祭りを盛り上げます。

祭り1日目の日が暮れると、100個のちょうちんを灯した屋台が町を巡り、曳き別れの歌「高い山」を歌いながら屋台蔵へと戻っていきます。昼と夜、それぞれ違った姿を見せる秋の高山祭。伝統の残る高山の美しい街並みが、祭りの夜は一層魅力的に映ります。

浴衣姿で町を踊り歩く「富山県・おわら風の盆」

富山県・おわら風の盆(画像提供:とやま観光推進機構)

毎年9月1日から3日にかけて富山県富山市八尾地区で開催される祭り、「おわら風の盆」では、浴衣に編笠をまとった踊り手たちが、民謡「越中おわら節」の曲に合わせて踊りを披露しながら越中八尾の町を踊り歩きます。「おわら」という言葉には「おわらひ(大笑い)」などいくつかの由来があるようですが、一説では、豊年満作を祈念した「おおわら(大藁)」が起源とも。また「風の盆」は、台風によって収穫前の稲が被害を受けないよう豊作祈願のために行った祭りの通称ともいわれています。農業との関わりが深い祭りであることがうかがえますね。

約300年もの間受け継がれてきたこの祭りには、現在「豊年踊り」「男踊り」「女踊り」の3つの踊りがあります。「豊年踊り」では農作業や稲刈りをしている様子が表現され、祭り期間中は観光客も交えてこの踊りを楽しむことができます。「男踊り」では農作業をする男性の様子が、「女踊り」では蛍狩りをする女性の様子が表現され、男性の踊り手たちは農作業着を模した法被姿で農夫を演じます。

町が一丸となって伝統を守り続け、地元の子供たちは小さな頃から踊りを練習するという「おわら風の盆」。踊り手たちの所作一つ一つに毎年多くの観光客が魅了されます。

豊作を感謝する祭りと、それを祝う祭り「三重県・神嘗祭(かんなめさい)、神嘗奉祝祭」

三重県・初穂曳 (はつほびき:神嘗祭を奉祝して行われる行事)(画像提供:伊勢御遷宮委員会)

一年を通して世界中からの参拝客でにぎわう三重県・伊勢神宮。「お伊勢さん」の愛称で親しまれる伊勢神宮には、日本神話にも登場する天照大御神(あまてらすおおみかみ)や豊受大御神(とようけのおおみかみ)といった神々が祀(まつ)られ、天照大御神は太陽神、豊受大御神は衣食住の守り神として人々からあがめられています。

神宮では年間を通して約1,500回の祭りが行われますが、その中でも10月に開催される神嘗祭は最も重要な祭りといわれています。神嘗祭では五穀豊穣(ほうじょう)と人々の平和を祈願し、新穀(その年にとれた穀物)が神様へ奉納されます。また、天皇陛下からは「御初穂」、各農家からは稲束が奉納され、参拝者は小さな袋に詰められたお米を奉納し、自然の恵みに対する感謝の気持ちを伝えます。

「命の根」が名前の由来であるという言い伝えもある「イネ」の歴史を感じさせてくれる神嘗祭。その祭りを祝うために全国から有名な祭りが集結する「神嘗奉祝祭・祭のまつり」も開催され、伊勢の町を大いに盛り上げます。

親から子へと継承され、昔も今も多くの人々を魅了する日本の祭り。私たちの祖先が五穀豊穣を祈願し、感謝の気持ちを伝えてきた祭りへの思いはしっかりと継承されています。からくり奉納や民謡をもとにした踊り、初穂の奉納など、祭りは自然の恵みへの感謝の念を、改めて思い起こさせてくれます。

 
高山祭
2018年10月9日(火)、10日(水)

おわら風の盆
2018年9月1日(土)~3日(月)

神嘗祭
2018年10月15日(月)~25日(木)

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