地域の農業者や行政と連携し、循環型農業の拠点に
富士山の裾野に広がる森の中、東京ドームと同じぐらいの敷地(5ha)にアサギリの肥料製造工場はあります。
敷地には200本以上の桜を植栽し、電線は地中に埋設することで、施設内から望む富士山の景観にも配慮し、見学に訪れた人の目を楽しませてくれます。また、景観だけでなく、数種類の脱臭設備や汚水処理施設を整備するなど、地域環境への対策にも力を入れています。
同社は、「完全循環型事業」「地球環境全体への貢献」をテーマに活動しており、牛ふんや食品残さ、下水汚泥などの有機性廃棄物を受け入れ、約6カ月間かけて完熟堆肥として生産者のもとへ出荷しています。
主力製品である『アサギリMIX』は、牛ふんを主原料(50%配合)に、食品廃棄物などを加え、独自のシステムで完熟発酵させた資源循環型の完全有機質堆肥肥料です。牛ふんだけでなく、多品目の原料を使うことで、有効菌の種類が増えるので土作りに最適です。
その『アサギリMIX』をペレット状に加工し、扱いやすくした製品が『アサギリMIX PELLET』です。ペレット状にすることで、散布性の向上(飛散防止・機械散布に対応)を図っています。製品化には、富士宮市の農政課や静岡県の農林事務所など、行政と連携したプロジェクトで進められています。
「地域の農業者や、行政と連携したプロジェクトを進めることで、地域への貢献やブランド価値の向上も見込めます。それと同時に品質に対する責任も大きくなりますので、徹底した品質管理と付加価値を加えることで、各所からの期待にしっかりと応えていきたいですね」と、代表取締役の蓑 威賴(みの たけより)さんはプロジェクトへの思いを話します。
独自のノウハウで、安全で良質な肥料に変換
近隣の酪農施設から集められた牛ふんや、食品工場から出る動植物性の食品残さ、自治体からの下水汚泥などが工場内の原料保管施設に集められ、品目ごとに管理されています。1日に搬入される有機性廃棄物の量は、多いときには140tにも及びます。
次に発酵槽に原料を移し、品目別に一次発酵、二次発酵を行います。品質の良い堆肥になるように、微生物の配合や撹拌など、独自のノウハウを投入して発酵を促進。発酵段階で高温好気性菌の活性を促すことで、原料の温度を上昇させ(80℃)、有機性廃棄物のネックとされる雑菌や病原菌、雑草の種子などを死滅させます。
アサギリでは、堆肥の安全性を担保するために、重金属などの有害物質について3カ月ごとに分析検査を行っており、過去12年間で一度も肥料取締法に定められた基準値の半分を超えたことがないといいます。
もちろん、野菜の生育障害が報告されている除草剤の成分『クロピラリド』の残留検査も実施しています。その徹底した安全管理と品質の良さが、プロの農業者から信頼される理由なのでしょう。
約6カ月の時間をかけて、十分な発酵と分解が済んだ堆肥は、車で10分ほど離れた山梨工場に運ばれます。この山梨工場では、ペレット状に加工する作業や袋づめの作業も行っています。
アサギリでは「バラ出荷」と「製袋出荷」に対応。出荷先が大規模農家やJAの場合は、トラックで貯蔵ピットや圃場に直接運び込む「バラ出荷」が多く、農業資材店やホームセンター向けには袋づめした製品を出荷しています。
文字通り倉庫に山積みになっていた堆肥肥料は、9~10月に山梨県や長野県などの果樹園向けに出荷する分だといい、静岡県のみかん農家からも12~1月にかけて出荷するオーダーが入っています。
また、ペレット状にしたことで扱いやすくなっているので、水稲への需要も増えています。代理店によれば、北は秋田県、南は熊本県で販売実績があり、中でも富山県南砺市や静岡県御殿場市でお礼肥として多く利用されています。
徹底した環境への取り組みは、日本有数の観光地である地域への思いから
家畜の糞尿や、下水汚泥を原料とする堆肥は、製造工程で悪臭が発生するのは避けて通れません。だからといって、周囲にまき散らしていては、近隣とのトラブルの原因にもなります。
アサギリでは、広大な敷地を生かし、土壌と植物による大型の生物脱臭施設を運用しています。それ以外にも加圧水流式脱臭装置を4台も稼働させ、発酵槽内の悪臭や水蒸気を回収し、酸・アルカリ洗浄脱臭を施すなど徹底した臭気対策に取り組んでいます。
「周辺が観光地であることも配慮した上で設備投資を行っています。ここまでの脱臭設備を備えている堆肥肥料の製造工場は珍しいと思います。有機性廃棄物の肥料化処分場は、世の中に必要な施設だと認識されていても、建設には理解してもらえないことが多いので、特に臭いに関しては厳しく管理しています」と蓑さん。
設備だけでなく、製造工程や原料の水分量や微生物の配合などを研究し、悪臭を出しにくい工程の開発にも取り組んでいます。さらに、工場内で発生した汚水についても、複数の浄化槽と曝気槽でろ過し、外部に排出しない仕組みも取り入れています。
最後に、堆肥肥料に対する現状を聞いたところ―「堆肥にもいろいろとありますが、完熟した良質な堆肥は意外と少なく、まだまだ需要があると感じています。堆肥肥料は、微生物やミネラルが豊富に含まれるので地力アップには最適です。都市部では、農地と住宅地が隣接する所も多いので、臭わないものを使いたいというニーズが多く寄せられています。『よいモノを作れば売れる』から『よいモノを作らなければ売れない』時代になっているので、今後も品質第一でやっていきます」と、笑顔で話す蓑さん。
妥協のない製品作りに邁進し、共生をテーマに近隣環境への配慮も怠らないアサギリには、これからも注目です。
<お問い合わせ>
株式会社アサギリ
〒418-0102 静岡県富士宮市人穴203-51
TEL:0544-52-0212
※2019年5月1日、「有限会社アサギリ」は「株式会社アサギリ」に商号変更いたしました
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