理解者のいない新規就農時代
――首藤さんが農業を始めたきっかけを教えて下さい。
農家の12代目として生まれ、学校を卒業後はサラリーマンをしていたのですが、父の体調不良を機に就農しました。体調不良の原因は農薬による薬害だと思い、私の代になった時に慣行栽培から全圃場自然栽培に転換しました。種子も自家採種で繋ぎ、販路も変えるなど一気にやり方を変えて、2013年から経営者として引継ぎました。
――全く違うやり方で、ご苦労も多かったのではないですか?
自然栽培は少数派なので理解者がおらず、当初は父にも反対されていました。何より孤独でしたね。
――そんな状況からどうやって4Hクラブの会長に?
4Hクラブには就農と同時に入会しました。地域のクラブ員の集まりに参加していると、各地区で愛媛県連絡協議会との繋ぎ役が必要ということで、行かせてもらったんです。そしたら色んな人がいて、とても面白くて。全国から集まってくる人はもっと面白いんじゃないか?と思って、色々な人と関わらせていただいて、今があります。
毎日農作業で忙しくしていると、どうしても世界が小さくなってしまいますが、4Hクラブには全国さまざまな環境で農作物を育てている人がいます。考え方も経営方法も違う。自然栽培だからと色眼鏡で見られることなんてありません。
年に何回かしか会わないけれど、こうして色んな仲間が全国にいるって楽しいですね。
会長になって見えたこと
――会長になって変わったことはありますか?
物の見え方が変わりましたね。農業政策や、民間企業が開発している農業製品は、全て僕たち農家のためにやってくれていると実感を持って分かるようになりました。
「当たり前だろう」と言われそうですが、地元で日々農作業と向き合っている農家にとっては、スマート農業だ法改正だと言われても、ピンと来ないんです。突然新しい情報が下りてきても自分の農作業と結びつかない、というのが本音です。
会長になって農水省へ意見交換に行かせていただいたり、民間企業の方と話す機会を頂き、私たちが何に困っているのか、どうすればもっと農業現場が改善されるのかを考えて耳を傾けて下さっている姿を見て、やっと繋がりました。
今はスマート農業が凄く面白いと思っています。特にセンシング技術は、これまで上手く説明できなかった僕の自然栽培も科学的に伝えられますし、数値化して積み重ねていくことで、共有したり的確に指導できるようにもなる。こうして自分事に繋げられるようになったのも、会長になってからですね。
――農家のトップは、色々な立場の意見が入ってくる貴重な立場なんですね。
だからこそ、もっとこの機会をいかさければいけないと思っています。
現況は各県の代表者が個人的な意見を述べていますが、4Hクラブの組織力を強化して全員の意見を吸い上げ、代弁できるような体制を整えたいと思っています。自分たちの経営努力ではどうにも出来ないことを農政や民間のサービスに繋げていけば、農業はもっと明るくなると思っています。
――私たち民間企業とも一緒に農業を変えていきたいですね。
民間企業の方は、「農業者は農協のものしか使っていない」と思われているようで、お互い話をするようになったのもここ2~3年なんです。4Hクラブは私のように農協出荷をしていない農家もいますし、後ろ盾がない分、フットワークも軽いです。色々な展開が生まれると良いと思っています。
――最後に、首藤さんが目指す今後について教えて下さい。
4Hクラブをカオスにしたいですね。もっと農業が好きな変人たちを集めたい!(笑)
今は個人経営の農家が圧倒的に多いですが、雇用就農者・独立就農された方など色んな人に来て欲しいです。また、4Hクラブ以外にも存在する農業団体とも繋がっていきたいですね。
――今後の4Hクラブの動きに期待しています。ありがとうございました。
【参考リンク】
全国農業者青年クラブ(日本4Hクラブ)
首藤さんの農園「土と暮らす」