生産者が利用しやすいIoTで地域のスマート農業を推進
全国各地の自治体から地域課題の相談が寄せられるITベンチャー企業が、栃木県宇都宮市にある。農業を中心にIoT製品とクラウドサービスを提供する株式会社farmoだ。水位センサーと給水ゲートを用いてスマホで遠隔監視と水管理ができる『水田ファーモ』をはじめ、施設園芸、露地、果樹の環境モニタリングシステム、気象センサーも開発した。これらのIoT製品がどこからでもインターネットにつながり、通信費用無料で使えるように無線基地局『ファーモ・アンテナ』で通信インフラを整備。地域のスマート農業の普及に貢献している。
生産現場で実験を重ねて生産者や自治体と一緒に開発を進めていくのが、同社のスタンス。そこで生み出されたIoT製品・サービスは、コスト面も含めてユーザーに『便利でちょうどいい』と支持されている。数千台の機器を同時にインターネットにつなぐ基地局さえ、ユーザーが30分で建てられる手軽さだ。生産者の要望を受けて、岩手県花巻市では『ファーモ・アンテナ』で市内全域の通信インフラを整備。新潟県長岡市ではファーモ製品でスマート農業を推進するなど、事業に採択されるケースも増えている。
農業用水の管理や防災も。地域に課題解決の仕組みをつくる
困りごとの相談から地域課題の解決に至ることも少なくない。『水田ファーモ』を応用した事例を2つ紹介しよう。
一例目は、土地改良区の水路・溜め池・河川の水位遠隔監視。管内の溜め池の貯水量は職員が足を運んで確認しなければならず、取水時期には生産者からの「水が来ない」という問い合わせの対応に追われる。そこで溜め池への水位センサー設置を提案。水量の過不足をパソコン上で確認して問い合わせにも即答。業務の効率化や省力化につながった。昨年度、山形県河北町などで実装し、同様の悩みを抱える土地改良区からの引き合いも多い。
二例目は、スマート田んぼダム。減災対策の一環として整備が進められているが、排水マスの設置費用やゴミ詰まり防止などの管理負担のため生産者の了承が得られにくいことが課題だ。「設置してもらえる良いアイデアはないか」と相談を受けて、以前、水稲農家の要望で製品化した『排水ゲート』を活用。普段は農業者に遠隔排水に使ってもらい、非常時は自治体側でパソコンからすべての排水を一斉に止める仕組みの実証実験を宇都宮市と河北町で実施。農業に防災を絡めたソリューションとして注目されている。
「難しく考えていた課題が、水位センサー1本で解決することもあります」とfarmo代表の永井洋志さん。同社の技術、製品、インフラを使って、スマート農業の推進とそこから始まる地域DXのサポートを目指す。
手軽さと低コストを実現する技術力は、2005年にインターネット開発・運営から事業をスタートさせた同社の強み。Webシステムやアプリ開発の実績と大量のデータをさばいた経験があり、システムを安定的に稼働させるクラウド管理のノウハウを持つ。6月には農業を中心に課題ごとのサービスを提供する『ファーモ・クラウド』の運用を開始する予定だ。
「メーカー、自治体、農家さんが一緒に課題解決に取り組む文化が広がって、地域が明るくなったらいいですね」と永井さん。こうした現場での協業が地域DXの促進にもつながるだろう。
お問い合わせ
株式会社farmo
〒320-0855 栃木県宇都宮市上欠町866-1
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