秋田県鹿角市ってこんなところ
豊かな自然と三つのユネスコ無形文化遺産
北東北三県のほぼ中央、秋田県北東部に位置する秋田県鹿角市は鹿角八幡平、十和田の2つのインターチェンジがあり青森市、盛岡市、八戸市など主要都市と1時間圏内で結ばれています。市内には、十和田湖、八幡平からなる「十和田八幡平国立公園」や、ユネスコ世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である国特別指定史跡「大湯環状列石(おおゆかんじょうれっせき)」など魅力的な観光スポットがあります。さらに、八幡平の大日霊貴神社(おおひるめむちじんじゃ)に伝わる国指定重要無形民俗文化財「大日堂舞楽(だいにちどうぶがく)」と、幸稲荷神社(さきわいいなりじんじゃ)で祭礼として奉納される日本三大囃子の一つ「花輪(はなわ)ばやし」の三つのユネスコ無形文化遺産を有しており、歴史と文化を今に伝える国内でも類をみない貴重な地域として知られています。
雪と共に生きる暮らし
11月下旬から降り始め、12月中旬から3月下旬まで積雪がある鹿角市の積雪のピークは1月〜2月。市街地で60〜80㎝ほど積もります。寒さが最も厳しい1月下旬〜2月中旬にかけては、最低気温が-10℃以下になることもしばしば。この寒さにより、空気中の水分が凍り、朝日に照らされ輝く「ダイヤモンドダスト」が現れ、幻想的な風景を楽しむことができます。
きりたんぽ発祥の地が育む豊かな農産物
秋田名物「きりたんぽ」の発祥の地・鹿角市では、秋田を代表する米「あきたこまち」や「淡雪こまち」、果樹では「北限の桃」、「鹿角りんご」、畜産は日本短角種「かづの牛」、「八幡平ポーク」など、多くの農畜産物を育んでいます。 他にもキュウリ、トマト、ネギ、えだまめなど野菜栽培も盛んで、農業は市の基幹産業になっています。
鹿角で農業を始めよう!就農への第一歩「農業インターンシップ」とは
豊かな農畜産物を有する鹿角市では、未来の農業人を育成する多彩なプログラムを実践しています。その一つが「農業インターンシップ」です。市内の農業法人で実際の農業の現場を体験しながら経営者や先輩社員と共に働き、農業が自分に合う仕事かどうか、実際の現場で確認することができる制度です。
受け入れ法人ごとに特色があり、その数は県内トップクラスの9法人。個人経営の農家とは異なり、法人の場合、就労条件や待遇などがしっかりしているので体験者も安心して農業を学ぶことができます。そこで今回は、市内にある2つの農業法人をご紹介。体験メニューの一例や、インターンシップから就農を果たした若きファーマーの現在から、“かづの流”農業インターンシップの特徴をひも解いてみましょう!
最新鋭の農業機器がそろう、末広ファームのインターンシップ体験
113名の組合員から託された圃場(ほじょう)で、水稲(84ha)、大豆(20ha)、ネギ(13ha)、キャベツ(3ha)を手がける農事組合法人「末広ファーム」。代表理事の柳沢 義一(やなぎさわ・よしかず)さんを中心に社員7名、パート45名が農産物を育てています。その中で一際明るい笑顔を見せているのが2022年4月入社の袴田 響(はかまだ・ひびき)さんです。高校卒業後に雇用就農をした響さんが農業に興味を持つようになったのは、郷土の自然や文化、産業を学ぶ取り組み「ふるさと教育かづの学」がきっかけと話します。
「高校生の時に『かづの学』の一環として農業体験や収穫祭に参加したことで、自分も“おいしい!”と言ってもらえる食べ物を作りたいと、農業に関わる仕事がしたいと考えるようになりました」
そう話す響さんが働く末広ファームでは、インターンシップを受け入れる際、社員と同じシフトを組み、時期に応じて一連の作業を体験するプログラムを組んでいます。
「ネギの場合は定植後、土寄せ作業や防除、収穫(ネギ掘り)、皮むき、選果、出荷と作業が細かく分類しています。各作業は熟練の技術が必要になるため、当法人では班別に担当作業を決め、シフトを組んでいます」
と、柳沢代表。春の定植後、8月上旬から12月上旬まで収穫作業が続くネギは管理から収穫、出荷作業まで一連の流れを長い期間行うため、短期間のインターンシップでも農業の現場をしっかり学ぶことができます。
ネギ就農体験の一日
時間 | 体験内容 |
---|---|
8:00 | 体験はじまり (おはようございます!) |
8:30 | 体験開始(それぞれの作業を班ごとに開始。リーダーが作業を分担します) |
10:00 | 休憩 (体力勝負の農作業体験。こまめに休憩を取って英気を養います) |
11:00 | 体験再開 (収穫ネギはすぐに皮をむき、選果体験へ) |
12:00 | 昼休み |
13:00 | 体験再開 |
15:00 | 休憩 |
16:00 | 体験再開 |
17:00 | 体験終了(おつかれさまでした!) |
*夏場は防除作業が早朝になるため、15時終業。
大型トラクターの迫力を間近で体験!
取材に訪れた7月下旬、キャベツ定植前の圃場にはドイツ製の大型トラクターに取り付けたストーンクラッシャーが、石を豪快に粉砕。オペレーターはなんと、響さんです。小柄な響さんが自身の倍以上もあるトラクターを運転する様はなんてかっこいいのでしょう!
「農業法人でのインターンシップは大型トラクターをはじめ、GPS機能が搭載された農業機器など最新鋭の農業機械に触れることができるのも魅力です。高齢化や担い手不足が深刻化する農業にとって機械化は必要不可欠。インターンシップではこれからの農業の課題や解決方法なども感じ取っていただけると嬉しいですね」(柳沢さん)
末広ファームでは、体験者の要望に応じた作業体験を初め、鹿角市の農業の特徴などさまざまな視点から営農へのアドバイスを行っています。新入社員の響さんは体験者と同じ視点に立つことで、農業を志す人の不安に寄り添っていきたいと話します。
「自然相手の農業は、時に過酷な時もありますが、日々、できる仕事が増え、それが収穫につながる喜びはかけがえのないものです。農業の楽しさをインターンシップを通して知っていただき、一緒に鹿角の農業を盛り上げていきたいです」
柳沢代表やベテラン社員のもとで学ぶ響さんの存在は、体験者にとって、なんでも相談できる頼れる先輩になることでしょう。
非農家からの挑戦。農業体験が導いた新しい人生
宮城県仙台市から家族と共に移住・就農をした澤野 正樹(さわの・まさき)さんは秋田県美郷町の出身。15年間続けた舞台関係の仕事がコロナ禍によって激減し、これからの人生を考えた先にたどり着いたのが農業でした。
「コロナ禍によってエンターテイメント業界は窮地に追いやられ、先が見えない毎日に不安を感じていました。そんな荒んだ気持ちを癒したのは、生まれ育った秋田の自然です。移住先を探していた時、鹿角市の移住定住支援サイトを見つけ、わかりやすく整理された情報とサイトの美しさにひかれ、同市への移住を考えるようになりました」
鹿角市との運命的な出会いはあったものの、家族を養うためには仕事をしなければならないー。移住の相談を市の担当者にしていたところ、「雇用就農」という働き方を知ることに。
「農業に興味はあっても未経験の自分がいきなり1人でやるのは無理があります。雇用就農なら給与をもらいながら農業に従事できるので、家族がいる自分にぴったりだと思いました。まずは農業インターンシップで、農業とはどんな仕事かを学んでみては?と市の担当者にすすめられ、参加することにしました」
2020年末、3日間の農業体験に参加した澤野さんは3つの農業法人をまわりました。1日目に体験したセリの収穫では夜、体が動かなくなるほどの疲労感に襲われることに。農業の厳しさを身をもって体感したことも大きな収穫だったと当時を振り返ります。
「2日目には現在の雇用主である『鏡田ファーミング』で指先がかじかむ寒さの中でニンジンの機械収穫体験をしました。3日目はリンゴの収穫と、さまざまな作物や法人を広く経験させてもらったことで、就農への覚悟が定まったように思います」(澤野さん)
移住・就農は人生における大きな決断であり、見知らぬ世界に飛び込むことは時に孤立しがちです。鹿角市は希望者の話にしっかり耳を傾け、ベストな方法を提案。農業インターンシップは移住後、地域農業との関係性を築く上でも貴重な経験になることでしょう。
「3K(キツい・汚い・危険)と誤解される農業ですが、それをひたむきにやり続けている姿は本当にかっこいいと思います。生きる上で最も大切な食を支える仕事は尊く、その一員になれたことは誇りです。若い世代にその姿を見せ、担い手育成など人の循環に繋げていくことが目標です」
と、今後の展望を話す澤野さんは最後に、農業を志す人にメッセージを寄せてくれました。
「農業はその土地や風土と密接な関係にある仕事です。就農にはまず、その土地に入って関係性を築くことが大切です。そのためにもまずは農業インターンシップをぜひ活用しましょう!農業の楽しさ、厳しさ、自分が向いているか向いていないかを知る意味でもおすすめです」
豊かな大地をフィールドに農業を生業にしてみたいー。農業を志すなら秋田県鹿角市を訪れてみましょう。多彩な農業法人で農業体験をすることで目指す営農のかたちが見えてくるはず!鹿角市の先輩ファーマーたちが、あなたの挑戦を待っています。
■お問い合わせ■
鹿角市産業部農業振興課
〒018-5292 秋田県鹿角市花輪字荒田4-1
TEL:0186-30-0274
FAX:0186-30-1515