コンパニオンプランツとは?
野菜を1種類だけで育てるときと比べ、異なる種類の野菜を一緒に栽培すると、病害虫を抑えられたり、成長を促進できたりすることがあります。そうした良い影響をもたらす作物の組み合わせを「コンパニオンプランツ」と呼びます。
コンパニオン(companion)とは英語で「仲間」のことです。プランツ(plants)は「植物」です。つまり、コンパニオンプランツとは、相性のいい植物という意味になります。日本語では「共栄植物」「共存作物」「共生植物」などとも呼ばれますが、最近では「コンパニオンプランツ」のほうがよく聞かれるようになっています。
コンパニオンプランツに期待できる効果やメリット
では実際に、コンパニオンプランツによってどのような効果が期待できるのでしょうか。主な6つのメリットについて順に見ていきましょう。知れば知るほど、コンパニオンプランツに挑戦したくなるはずです。
病気予防
1つ目に挙げられるメリットは病気の予防です。野菜栽培の難しさの一つが、丹精込めて育てているつもりでも、思わぬ病気にかかってしまうことがある点です。
例えばナス科の野菜に多く発生する青枯(あおがれ)病。元気だった株が急にしおれて、数日もしないうちに、緑色のまま枯れてしまうことがあります。この場合には、長ネギやニラなど、ヒガンバナ科の植物の根に共生する拮抗(きっこう)菌が効きます。この菌が抗生物質の役割を果たして、土壌病害を引き起こす病原菌を減らしてくれるのです。
害虫防除
2つ目のメリットは害虫防除です。農薬や殺虫剤を使う手もありますが、健康のために、できればあまり使いたくないと考える人もいるでしょう。そこでコンパニオンプランツの力を借りましょう。
害虫は多くの場合、香りや色を頼りに自分好みの植物を探したり、逆に自分に毒となる物質を放つ植物を避けたりします。ところが多くの種類の作物を混植すると、香りや色が混じってしまうため、害虫は混乱して目当ての野菜にたどり着けなくなるのです。とくに、強い香りのあるキク科、セリ科、シソ科を苦手とする害虫が多く、近くで育てている野菜を守ることができます。
生育促進
3つ目のメリットは生育促進です。異なる種類の野菜を近くで育てると、草丈が大きくなったり、実付きが良くなり収量が増えたりと、全般的に生育が良くなることがあります。これは、土壌に住む微生物の種類が増えて、生物相が多様になり、土が肥沃(ひよく)になるためと考えられます。
例えば、マメ科の植物は土を肥沃にすることでよく知られています。根が持つ根粒菌が、空気中の窒素を固定(生物が利用できる窒素化合物に変換)して、周りの植物に供給する性質があるため、マメ科の植物はさまざまな野菜のコンパニオンプランツとして重宝されています。
空きスペースを有効活用できる
4つ目のメリットとして見逃せないのが、空間を有効利用できることです。例えばナスやトマト、トウモロコシのような草丈の高い野菜の場合、株元には意外とすき間ができます。そこに草丈の低いハーブ類などを植えても、互いに生育を妨げません。また、生育速度の違いや収穫時期のズレを利用して、複数の野菜を同じ場所で育てることもできます。
特に都市部では、ごく小さな庭先や、ベランダのプランターで野菜を栽培している人も多いでしょう。限られた空間を最大限に生かせるという点でも、コンパニオンプランツは家庭菜園向きと言えます。
肥料や農薬などを減らすことができる
5つ目のメリットとして挙げられるのは、農薬や肥料の量を減らせることです。先に「害虫防除」の項目でも触れたように、複数の植物を混栽することで、害虫を食べてくれる益虫(天敵)が住みやすい環境を整えることができます。その結果、害虫駆除のために農薬を使う必要がほとんどなくなる場合もあります。
また、野菜の種類によって必要とする肥料成分が異なりますが、互いに融通し合って、双方の育成が良くなることがあります。うまく野菜を組み合わせれば、全体の施肥量を減らすことにつながります。
受粉を助け、結実しやすくする
最後に紹介するメリットは、コンパニオンプランツが受粉を助けることで、実がなりやすくなることです。植物の花には、1つの花に雄しべと雌しべがある「両性花」と、雄しべだけの雄花と雌しべだけの雌花に分かれている「雌雄異花」の2種類あります。後者の場合、主にミツバチのような虫に花粉を雌しべに運んでもらう必要があります。その場合、コンパニオンプランツとしてカモミールやマリーゴールドを野菜のそばに植えると効果があります。受粉を助けてくれる虫が集まりやすくなり、結果的に結実しやすくなるという仕組みです。
コンパニオンプランツにデメリットはある?
このように多くのメリットがある一方、コンパニオンプランツにはわずかながらデメリットもあります。少し気をつければ避けられることばかりですから、以下の点に注意して取り組んでみましょう。
間引きや収穫などの作業に時間がかかってしまう
まず挙げられるのが、1つの畝やプランターに複数の品目が混ざっているため、間引きや収穫などに手間がかかることです。種まきや苗の植え付けの際、後々の作業工程をイメージしながら、できるだけ手間がかからない場所にまいたり植え付けたりするといいでしょう。「ちゃんと発芽するか心配!」とばかりに、あまりに密に種まきしてしまうと、間引きが大変になってしまうこともあります。
複数の品目を混ぜて植えることで、どこに何を植えたか分からなくなる
また、複数の品目を混ぜた場合、どこで何を育てているのかわからなくなってしまいがちです。とくに種からまいた場合、発芽しても、双葉の形だけから判断できず、「これ、何だっけ?」と混乱してしまうこともあります。そうした事態を避けるためには、手間を惜しまず、野菜などの名前を書いた園芸用ラベルを立てておくといいでしょう。あるいは、手書きでもパソコンでもいいので、簡単な「畑マップ」をつくっておくと、作付け計画も立てやすくなります。
相性が悪いもの同士を植えた場合、病気が発生することがある
3つ目に、相性の悪いもの同士を植えた場合、野菜に病気などが発生することがあります。ただ、これはコンパニオンプランツそのもののデメリットというより、知識や理解不足によるものだと言えるでしょう。むやみにいろいろな植物を一緒に植えればいいわけではなく、効果のある相性とそうでない相性があります。以下の「正しい植え方」を参考に、デメリットではなく効果を生む方法を実践してみましょう。
コンパニオンプランツの正しい植え方
先のデメリットの項目で触れたように、コンパニオンプランツの実践には「正しい方法」と「間違った方法」があります。しっかりと正しい植え方をマスターし、コンパニオンプランツの効果を最大限に実感してください。
植え方について
コンパニオンプランツの植え方には、大きく分けて「混植」と「間作」があります。「混植」とは、同じ畝に複数の異なる作物を混ぜて植えることです。混ぜ方にもさまざまあり、異なる作物を交互に植えたり、同じ穴に植え付けたり、メインの作物の周りにコンパニオンプランツを植えたりする方法があります。「間作」とは、一定期間だけ異なる作物を一緒に栽培することです。
いずれの場合も、重要なのは種まきや植え付けのタイミングです。それぞれの生育期間を意識しながら、複数の野菜の収量が上がるよう工夫してみてください。
【混植】組み合わせ例と効果について
まず「混植」の具体例を見てみましょう。例えばキャベツとレタスを交互に植えるとお互いの害虫を減らすことができます。ブロッコリーとレタスも相性のいい組み合わせです。
メインの作物の間にコンパニオンプランツを植える例としては、トマトとバジルの組み合わせが代表的です。トマトの株間や条間にバジルを植えることで、トマトの生育を促進することができます。
同じ穴に植える例としてはキュウリと長ネギなどがあります。ヒガンバナ科に分類される長ネギの根に共生する微生物の効果を利用して、土壌病害や連作障害を防ぐことができます。
【間作】組み合わせ例と効果について
次に「間作」の具体例を見てみましょう。間作では生育期間のズレを生かすことが大切です。例えば、生育に一定の期間が必要な根菜類の場合、同じ畝で比較的すぐに収穫できる葉物を育てることができます。大根の株元でルッコラを育てると、ルッコラの香りが害虫忌避の役割を果たしてくれます。
また、ジャガイモとサトイモの組み合わせもお勧めです。ジャガイモの土寄せが終わった頃、条間にサトイモを植え付けると、ジャガイモを収穫する頃にはサトイモが既に成長を始めています。ジャガイモに寄せていた土を、今度はサトイモに寄せることができます。
コンパニオンプランツの代表格「マリーゴールド」
さまざまな植物がコンパニオンプランツとして使われていますが、筆頭に挙げられるのがマリーゴールドです。オレンジや黄色の鮮やかな色彩が畑に文字通り彩りを添えている光景を目にすることも多いと思います。マリーゴールドはさまざまな作物と相性が良く、多くの野菜にそれぞれ異なる恩恵をもたらします。例えば、土壌に潜む有害なセンチュウに対しては、マリーゴールドの根が分泌する成分が効果的です。葉が持つ香りにも防虫効果があります。コンパニオンプランツとして非常に優秀なため、「植物のお医者さん」と呼ばれることもあるほどです。
コンパニオンプランツのお勧めの組み合わせと効果16選
ここからはいよいよ、確かな効果を期待できるコンパニオンプランツの組み合わせ例を具体的に見ていきましょう。家庭菜園でポピュラーな作物を中心に、代表的な16種のコンパニオンプランツを紹介します。
相性の良い組み合わせ①トマト×バジル
コンパニオンプランツの組み合わせで、とくによく知られているのがトマトとバジルです。トマトにはアブラムシが付きやすいのですが、バジルの香りがそうした害虫を遠ざけてくれる効果があります。また、南米原産のトマトは乾燥に強く、バジルは熱帯アジアのインド原産のため、水分を好みます。つまり、トマトにとっては余分な水分をバジルが吸収してくれることになり、土壌の水分を適切に保ってくれるのです。トマトとバジルは料理の際にも相性抜群ですから、この2つが一緒に育っている様子を見るだけでも食欲がそそられます。
相性の良い組み合わせ②トマト×ニラ
トマトには、ニラもとても効果的なコンパニオンプランツとなります。ニラの根や茎に共生する拮抗菌という菌には、強い抗菌作用があり、抗生物質の役割を果たします。そのため、土壌中の病原菌を減らすことができ、トマトに起こりがちな萎凋(いちょう)病を防ぐことができます。トマトなどのナス科の野菜とニラは、ともに根が深く伸びるタイプなので、その点でも相性がいいのです。トマトの苗を植え付ける際に、すぐそばに3~4本のニラを植えるといいでしょう。それぞれの根が触れ合うようにすることで、ニラの根がトマトの根を守ってくれます。
相性の良い組み合わせ③ナス×ショウガ
ナスは多くの野菜と共栄できますが、ここではコンパニオンプランツとしてショウガを紹介します。ナスは強い日光を好みますので、枝葉を広げるために十分な株間が必要です。また草丈も高くなるため、株元にはすき間ができます。そこを利用して日陰でもよく育つショウガを植えましょう。両者は生育期間がほぼ重なりますから、その点でも混植するのに都合のいい組み合わせです。ナスとショウガでは根に生息する微生物や虫が異なるため、土壌の生物相が豊かになり、病害虫の被害を抑える効果も見込めます。
相性の良い組み合わせ④ピーマン×ラッカセイ
ピーマンと相性のいいコンパニオンプランツはいくつかありますが、ラッカセイもその一つ。ラッカセイなどマメ科植物の根に付く根粒菌は、空気中の窒素を固定してくれるため、土壌が肥沃になります。
また、ピーマンの株元にラッカセイを植えると、マルチの代わりにもなってくれます。ラッカセイには、枝が地面をはうように横に広がる「ほふく性種」と、上に伸びる「立性種」があります。マルチ効果を期待する場合は、「ほふく性種」を選ぶといいでしょう。
相性の良い組み合わせ⑤キュウリ×長ネギ
キュウリのコンパニオンプランツには、長ネギなどのネギ類がお勧めです。ネギ類の根に共生する拮抗菌は、土壌中の病原菌を減らしてくれるため、「つる割れ病」などキュウリがかかりやすい病気を防ぐ効果があります。
その効果を最大限に引き出すには、同じ根域に根を広げることがポイント。キュウリは浅く根を張るため、ネギ科の中で浅根タイプの長ネギが適しています。互いの根が絡み合うように植え付けましょう。
また、キュウリなどウリ科の作物には、ウリハムシが寄ってきて葉をボロボロにしてしまいますが、その対策にも長ネギが効くとされます。
相性の良い組み合わせ⑥つるありインゲン×ゴーヤー
インゲンとゴーヤーを一緒に栽培すると、どちらもよく育ちます。ご存じのようにゴーヤーの実には独特の苦みがありますが、つるや葉にも独特の香りがあり、害虫が寄ってくることはほとんどありません。そのため、インゲンに付きやすいカメムシやアブラムシなどの害虫を忌避することができます。さらにゴーヤーも、インゲンの根に付く根粒菌の働きで養分を得られます。
また、どちらもつるを伸ばして成長する野菜なので、同じ畝で育てると、支柱や誘引ネットを共有でき、空間の有効活用にもつながります。
相性の良い組み合わせ⑦ブロッコリー×レタス
ブロッコリーにお勧めのコンパニオンプランツはレタスです。ブロッコリーなどアブラナ科の野菜には、アオムシやヨトウムシ(ヨトウガの幼虫)、コナガの幼虫が付きやすいのですが、レタスなどキク科の作物は、こうした害虫が嫌がる成分を出してくれるため、その忌避に効果を発揮します。逆にレタスを好むタバコガの幼虫は、アブラナ科を嫌いますから、ブロッコリーとレタスは、お互いの害虫忌避の効果があります。
相性の良い組み合わせ⑧トウモロコシ×エダマメ
トウモロコシとエダマメもとてもよく使われる組み合わせです。トウモロコシは肥沃な土壌を好みますが、その点、エダマメには土を肥沃にする働きがあるため、トウモロコシの追肥はほとんど不要になるほどです。また、トウモロコシの果実に食い入って食害する大敵アワノメイガと、エダマメの実を食害するシロイチモジマダラメイガが互いに寄り付きにくくなります。なお、草丈はトウモロコシのほうがグンと高くなりますが、エダマメは多少日陰でもよく育ちますから、陰になっても問題ありません。
相性の良い組み合わせ⑨ダイコン×ニンジン
ダイコンとニンジンを混植すると、どちらもよく育ちます。両方とも深く根を張る直根性のため、土中の空気の通りが良くなり、競合することなく、互いの根が伸びやすくなります。そのため、少ない肥料で栽培することができます。
また、アブラナ科のダイコンにはモンシロチョウやコナガの幼虫、アブラムシが付きやすく、セリ科のニンジンはキアゲハの幼虫に葉を食害されます。違う科の野菜を近くに混植することで、それぞれに寄り付く害虫を忌避する効果が期待できます。
相性の良い組み合わせ⑩アスパラガス×ニンニク
多年草野菜のアスパラガスは、いったん根付くと10年ほどと、長期にわたって収穫し続けられるのが魅力です。元気な株を長く保つために、病虫害対策をしっかり行いたいところ。そこで活躍してくれるのがニンニクです。ニンニク独特の香りのもとであるアリシンは殺菌作用があり、アスパラガスの病気の発生を予防するだけでなく、お互いの生育を助け合う効果が期待できます。アスパラガスとニンニクが交互になるように、アスパラガスの株間にニンニクを1株ずつ植え付けるといいでしょう。ネギやニラなどネギ属と一緒に植えるのもお勧めです。
相性の良い組み合わせ⑪ジャガイモ×セロリ
ジャガイモは春作と秋作がありますが、ここでは秋ジャガイモのコンパニオンプランツにぴったりのセロリを紹介します。ジャガイモの条間に栽培期間の重なるセロリを植えると、互いの成長が良くなる効果が期待できます。ジャガイモは成長するにしたがって葉を茂らせますが、セロリは半日陰でも十分に育ちます。むしろ、そのほうが徒長ぎみになり、葉っぱも柔らかくなるため、おいしくいただくには好都合です。
相性の良い組み合わせ⑫オクラ×つるありインゲン
オクラとの混植にお勧めなのはマメ科の野菜です。根に繁殖する根粒菌の働きで土が肥沃になり、わずかな施肥でも立派なオクラが育ちます。空間利用という意味で特にお勧めなのは、つるありインゲンです。オクラは草丈1〜2メートルほどと高く伸びますから、インゲンがつるを伸ばして成長する際、オクラを支柱代わりにすることができます。また、オクラは直根性のため、根を深く伸ばしますが、マメ科の野菜は根を浅く張るため、互いの根張りを妨げることもありません。地中の空間利用という意味でも相性のいい組み合わせです。
相性の良い組み合わせ⑬イチゴ×ペチュニア
おいしくて形のいいイチゴの実をならせるには確実な受粉が欠かせません。人工授粉でもいいのですが、まずはミツバチやアブなどの訪花昆虫が頻繁に寄ってくるような環境づくりを心がけましょう。そこでお勧めなのがペチュニアなど、訪花昆虫が好む花をイチゴの条間に植えることです。なお、ペチュニアを種から育てる場合は、イチゴの開花時期である4月に間に合うよう、前年の秋に種をまき、越冬させる必要があります。
相性の良い組み合わせ⑭ホウレンソウ×葉ネギ
ホウレンソウがかかりやすいのが、萎凋病という土壌病害です。萎凋病にかかると葉がしおれ、ひどい場合は枯れてしまいます。これを防ぐのに最適なコンパニオンプランツが葉ネギです。萎凋病の菌は根から侵入することが多いのですが、葉ネギを一緒に育てることで、葉ネギの根に共生する拮抗菌が病原菌を減らしてくれます。
また、ホウレンソウ独特の「えぐみ」を和らげ、甘みを引き出す効果もあります。葉ネギが余分な養分を吸収し、「えぐみ」のもとである硝酸態窒素が過剰に生まれるのを防いでくれるのです。葉ネギの代わりにワケギやアサツキでも、同じ効果が期待できます。
相性の良い組み合わせ⑮エダマメ×レタス
マメ科の作物は多くの野菜のコンパニオンプランツとして重宝しますが、ここではエダマメとサニーレタスの組み合わせを紹介します。シュンギクと同じキク科のレタスは、私たち人間はあまり感じませんが、独特の香りを放つため、エダマメに付く害虫を忌避する効果があります。また、サニーレタスの葉が広がることで、土壌の保湿にもつながり、エダマメがよく実ります。一方、エダマメの根粒菌の働きで土壌が肥沃になるため、サニーレタスの生育も良くなります。
相性の良い組み合わせ⑯サツマイモ×赤ジソ
サツマイモは、葉や茎(つる)に空気中の窒素を固定する微生物が共生しているため、やせた土地でもよく育ちます。逆に、肥料分の多すぎる環境では、つるばかりが伸びる「つるぼけ」が起こり、肝心のイモが大きくならなかったり、水っぽくなったりします。そういう場合は株間に赤ジソを混植しましょう。赤ジソが余分な肥料を吸収し、つるぼけを防いでくれます。また、サツマイモによく付くアカビロウドコガネというコガネムシの成虫は、赤い色の葉を嫌うため、産み付けた卵から生まれた幼虫がイモを食害するのを抑える効果もあります。
野菜の「科」による分類法で見る! 相性が良い組み合わせ
ここまで具体的なコンパニオンプランツの組み合わせ例を紹介してきました。「こんなにたくさん覚えきれない!」と思うかもしれませんが、いろいろな野菜を植物学上の分類である「科」で整理すると理解しやすくなります。例えば、ナスやトマトはナス科、エダマメやラッカセイはマメ科という具合です。基本的に異なる科の野菜を組み合わせます。上記ではピーマンとラッカセイの組み合わせを紹介しましたが、ラッカセイはピーマンと同じ科に分類されるナスやトマトとの相性も抜群です。このように、大ざっぱにでも科ごとの相性を知っておくと、コンパニオンプランツの組み合わせを考えやすくなります。以下の表を参考にしてみてください。
野菜の科ごとの相性
科 | 野菜の名前 | 相性のいい科の例 |
---|---|---|
アオイ科 | オクラ、モロヘイヤ | マメ科 |
アブラナ科 | カブ、カリフラワー、キャベツ、タアサイ、コマツナ、チンゲンサイ、ハクサイ、ブロッコリー、ミズナ、ダイコン、ラディッシュ | キク科、シソ科、セリ科 |
イネ科 | トウモロコシ | ウリ科、マメ科 |
ウリ科 | カボチャ、キュウリ、ズッキーニ、ゴーヤー、スイカ、メロン、マクワウリ | イネ科、キク科、マメ科、ヒガンバナ科 |
キク科 | ゴボウ、シュンギク、レタス | アブラナ科、ウリ科、バラ科 |
キジカクシ科 | アスパラガス | ヒガンバナ科 |
サトイモ科 | サトイモ | ショウガ科 |
シソ科 | シソ、バジル、タイム | アブラナ科、ナス科 |
ショウガ科 | ショウガ | サトイモ科 |
セリ科 | セロリ、ニンジン、パクチー、ミツバ | アブラナ科、マメ科、バラ科 |
ナス科 | トマト、ナス、ピーマン、パプリカ、シシトウ、トウガラシ、ジャガイモ、食用ホオズキ | マメ科、シソ科、ヒガンバナ科 |
バラ科 | イチゴ | キク科、セリ科 |
ヒガンバナ科 | ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、ワケギ | ウリ科、ナス科 |
ヒユ科 | ホウレンソウ | アブラナ科、ヒガンバナ科 |
ヒルガオ科 | サツマイモ、クウシンサイ | シソ科 |
マメ科 | インゲン、エダマメ、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ | イネ科、セリ科、ナス科 |
押さえておきたい! バンカープランツとアレロパシーについて解説
コンパニオンプランツについて調べていると、ときどき聞き慣れない言葉が出てくることはありませんか。ここでは野菜栽培でよく使われる「バンカープランツ」「アレロパシー」という言葉について解説します。
バンカープランツについて
コンパニオンプランツと似たものに「バンカープランツ」があります。バンカープランツとは、栽培中の農作物につく害虫の天敵をおびき寄せる植物のことで、「おとり作物」とも言われます。バンカーとは「銀行家(banker)」の意味で、天敵をいわば「銀行」となる植物に預けておき、必要に応じて引き出し、害虫を食べてもらうという方法です。代表的なバンカープランツに、アブラムシの天敵を増やすカラスノエンドウや、ヨトウムシの天敵を増やすシロツメクサなどがあります。コスモスやヒマワリ、ラベンダーなどの花は、バンカープランツであると同時に、受粉を助ける訪花昆虫を呼ぶ効果も期待できます。
アレロパシーについて
「アレロパシー(allelopathy)」とは、「ある植物が他の植物に及ぼす影響」のことです。もともとはギリシャ語由来で、「互いに」「感受」という意味の言葉が組み合わさって生まれた言葉で、日本語では「他感作用」と訳されます。具体的には、ある作物の茎や根、葉から分泌される物質がほかの作物に伝わり、それによって生育を促進したり、逆に妨げたりする作用のことを指します。
アレロパシー作用が働く経路は、植物によって異なります。例えば、光合成や呼吸の際に揮発成分が空気中に放出されたり、雨や露などで濡れた葉から成分がにじみ出たり、根から土中に成分がしみ出たりすると考えられています。
まとめ
本記事では、家庭菜園初心者にもわかりやすいよう、コンパニオンプランツの基本から具体的なお勧めの組み合わせを数多く紹介してきました。こうした組み合わせによる効果は、必ずしも科学的に解明されているものばかりではありません。先人たちの知恵の結集として確立されてきたものも多くあります。
せっかく趣味で始めた家庭菜園ですから、できれば農薬や化学肥料に過度に頼ることなく、植物本来の力を最大限に引き出してみましょう。多くの作物を混植・間作することで、畑には多様性あふれる環境が生まれ、植物同士が共生しやすくなります。コンパニオンプランツを生かして、新鮮でおいしい野菜づくりに挑戦してみてください。
参考文献
「決定版 コンパニオンプランツの野菜づくり」木嶋利男(家の光協会・2018年) ほか