三つ葉(ミツバ)とはどのような野菜?特徴や由来など
三つ葉は、セリ科ミツバ属の多年草で、数少ない日本原産とされる野菜です。1本の茎に3枚の葉が付いていることから「三つ葉」の名が付けられました。緑色の鮮やかさ、香りの爽やかさ、歯ざわりのよさなどから、日本料理に欠かせない香味野菜のひとつとなっています。
日本では、古くから全国各地の山野に自生していましたが、江戸時代の元禄年間から栽培が始まり、享保年間には葉茎を柔らかく育てる軟化栽培が行われるようになったと言われています。近年は水耕栽培が主流になり、周年で出荷されています。主な産地は、出荷量(2020年度)の多い順に、千葉県、茨城県、愛知県、埼玉県、静岡県。これらの5県で全国の出荷量の約65%を占めています。
三つ葉の種類は3つ!香りの強さに違いあり
市販されている三つ葉は、野生の三つ葉を改良したもので、栽培方法や出荷の形状によって以下の3種類に分けられています。
1.糸三つ葉
2.切り三つ葉
3.根三つ葉
それぞれの違いや特徴を解説します。
1.栄養価が高い「糸三つ葉」
青三つ葉とも呼ばれ、水耕栽培で密植して軟弱に伸長させたもので、根に小さなスポンジが付いた状態で出荷されています。年7~8回収穫でき、1年中出回っています。葉だけでなく茎も緑色で、香りが高くお吸い物や茶碗蒸しの彩に適しています。
2.香りが穏やかで食感がやわらかい「切り三つ葉」
白三つ葉とも呼ばれ、遮光した軟化床で栽培したもので、根を切り取った状態で出荷されます。主に関東地方で利用され、11月から3月にかけて多く出荷されます。葉は緑色で茎は白く、上品な香りが特徴でお雑煮やお吸い物によく使われます。
3.食感が楽しめる「根三つ葉」
根付きのまま出荷されます。春に種を播いて株を生長させ、冬に根本に土寄せをして軟化栽培し、翌春に収穫します。葉は緑色で茎は白く、細いゴボウのような根が特徴です。風味が強く歯応えがあり、セリと同様に根も食べることができます。
三つ葉の旬は種類によって異なる?
三つ葉は種類によって栽培方法が異なるため、出荷時期も異なります。
「糸三つ葉」は、周年栽培され、1年中出回っています。市場への入荷は、正月の需要に向けた12月が最も多く、夏場は少ない傾向にあります。「切り三つ葉」も1年中出回り、市場への入荷は12月をピークに翌年の1、2月に集中しています。「根三つ葉」は、露地もので収穫期が春先の3月から4月に限られ、季節性の高い野菜となっています。秋から翌冬にかけては、ハウス栽培のものが出回っています。
三つ葉を食べているのは日本と中国だけ
三つ葉は東アジアに広く分布していますが、意外にも、食用にしているのは日本と中国のみです。中国では野生の三つ葉を食用にしたという古い記録が残っており、日本では室町時代の農書「清良記」に、お正月に食される野菜として「三つ葉芹」の名が記されています。
三つ葉は栄養豊富?主な成分と効能
「和のハーブ」と言われるように、三つ葉の香り成分にはストレスやイライラを鎮め、安眠を促したり、食欲を増進させる効果があります。
実は栄養価も高く、体に必要なビタミン類とミネラル類が豊富です。特に糸三つ葉には、抗酸化作用を持つβカロテンが多く、100gあたり3200mgと、小松菜の3100mgを超える量です。βカロテンは体内でビタミンAに変換され、視力をサポートし、皮膚や粘膜の健康維持を助けます。ミネラル類では、細胞の浸透圧の調整やナトリウムを排出する働きのあるカリウムが多く含まれています。このほか、ビタミンC、葉酸、カルシウム、鉄なども摂取できます。糸三つ葉は、切り三つ葉と比べて栄養素の量が多くなっています。
糸三つ葉の成分表(100gあたり。抜粋) | ||||
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成分名 | 値 | 単位 | ||
エネルギー | 12 | kcal | ||
水分 | 94.6 | g | ||
タンパク質 | 0.9 | g | ||
脂質 | 0.1 | g | ||
炭水化物 | 2.9 | g | ||
食物繊維 | 2.3 | g | ||
ビタミン類 | βカロテン | 3200 | μg | |
K | 220 | μg | ||
葉酸 | 64 | μg | ||
C | 13 | mg | ||
ミネラル類 | カリウム | 500 | mg | |
カルシウム | 47 | mg | ||
マグネシウム | 21 | mg | ||
鉄 | 0.9 | mg |
加熱と生、どちらの方が栄養を逃さない?
三つ葉は生でも食べられます。栄養成分のうちビタミンCや葉酸などは水溶性であるため、長い時間、ゆでたり、水にさらすと大部分が流出してしまいます。三つ葉は火が通りやすく、ゆでると歯応えがなくなり、香り成分も飛んでしまうので、シャキシャキとした食感や爽やかな香りを楽しみつつ、栄養素をしっかり摂るならば、生食がおすすめです。茶碗蒸しやお吸い物などに使う際は、加熱を止めてから生の三つ葉を添えると、食感も栄養も損なわずにいただけます。
妊婦や子供でも安心して食べられる
三つ葉は、口にできる食べ物が限られる妊婦や幼い子供でも、安心して食べることができます。さらに、妊娠中の体に大切な栄養素も含まれています。カリウムにはナトリウムを体外に排出する働きがあり、妊娠中に高くなりやすい血圧を下げてくれます。葉酸はDNAなどの核酸やタンパク質を合成するのに欠かせない栄養素で、胎児の発育にも大きく関わっています。また、骨を構成するカルシウムは、幼児期に十分に摂取したい栄養成分のひとつです。
鮮度が良くおいしい三つ葉を見分けるポイント
色と香りが命の三つ葉は、鮮度のよいものを選びましょう。選び方には、3つのポイントがあります。
1.香が強い
2.みずみずしく色が鮮やか
3.根元から葉先までハリがある
ここでは、それぞれのポイントを詳しく説明します。
1.香りが強い
まず香りを確かめます。香りが強い三つ葉は、鮮度がいい証拠です。根三つ葉は糸みつばよりも香りが強いので、用途に応じて使い分けましょう。
2.みずみずしく色が鮮やか
次に葉を見ます。葉の色が濃く、つやがあってみずみずしいものを選びましょう。鮮度が落ちると、葉が黄色くなります。
3.根元から葉先までハリがある
茎がまっすぐでピンと張っているものが新鮮です。切三つ葉の場合は、茎が真っ白で直径2ミリほどのものを選びましょう。
三つ葉の鮮度を長持ちさせる保存方法
三つ葉は傷むのが早いのですぐに使い切るのがベスト。保存する場合は、買ったその日のうちに「冷蔵」もしくは「冷凍」で。それぞれの方法を詳しく解説します。
冷蔵保存すれば風味や食感を残せる
三つ葉を保存するときに最も注意するのは、乾燥させないことです。冷蔵庫で適切に保存すれば、10日間ほど香りと食感を楽しむことができます。
1.軽く水洗い
ボウルに張った水、または流水で、こすらずに全体をやさしく洗います。
2.根元を切り水気を拭き取る
根本をスポンジごと1cmほどハサミで切り落とし、ペーパータオルなどで葉の水気を拭き取ります。
3.水の入った容器に根元を浸ける
縦長の容器に水を3~4cmの高さまで入れ、切り口を水に浸します。らせん状に入れると、茎が折れずにうまく収まります。
4.容器にフタをして冷蔵保存
容器にフタをして冷蔵庫の野菜室へ。フタの代わりにラップを輪ゴムでとめてもOKです。
5.3日に1回は水を交換
容器の水を3日に1回交換すると、より鮮度が保たれます。葉に水分がつくと傷みやすくなるので、根元だけが浸かるようにすることがポイントです。
ゆでてから冷凍保存すれば鮮やかな色味を保てる
軽くゆでてから冷凍すれば、3週間〜1カ月ほど日持ちさせることができます。鍋、雑炊、おひたしなど、三つ葉を多めに使う料理におすすめの保存法です。
1.軽くゆでて氷水に浸す
さっと洗って根元を切り落とした三つ葉を、鍋に沸かした湯で5秒ほどゆで、すぐに氷水に浸して色止めをします。
2.水気を絞り一口大に切る
手で握って水気をしっかり絞り、使いやすい大きさにカットします。
3.ジップロックなどに入れて冷凍保存
カットした三つ葉は小分けにしてラップで包み、冷凍保存袋に入れ、空気を抜いて冷凍庫へ。
生のまま冷凍保存すれば適量を少しずつ使える
生のままカットして冷凍しても、1カ月ほど日持ちします。ゆでて冷凍保存したものよりほぐれやすいので、汁ものや天ぷらなどに、少量を使いたいときに便利です。
1.軽く水洗い
ボウルに張った水または流水で、三つ葉を軽く洗います。
2.水気を拭き取りざく切り
ペーパータオルなどで水気を拭き取り、根を切り落として、ざく切りにします。
3.ジップロックなどに入れて冷凍保存
冷凍保存袋に入れ、空気を抜いて冷凍庫へ。使うときは必要な分だけ、凍ったまま調理します。
三つ葉のおすすめレシピ5選
料理の添え物やトッピングとして使うことの多い三つ葉ですが、調理方法や使い方次第では、風味が際立ち、栄養も摂れて、主役を張ることができます。ここでは、三つ葉が主役になる簡単レシピを5つ紹介します。
1.手軽に風味を楽しめる「お吸い物」
顆粒だしを使って簡単に作れるお吸い物は、三つ葉に火を通しすぎないことがポイント。豆腐の代わりに焼き麩を使っても風味よく仕上がります。
豆腐と三つ葉のお吸い物
材料(2人分) | ||
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絹ごし豆腐 | 1/2丁(約75g) | |
三つ葉 | 1/4束 | |
乾燥わかめ | 小さじ2 | |
塩 | 小さじ1/3 | |
しょうゆ | 小さじ1/2 | |
顆粒だし | 小さじ1/2 | |
水 | 400ml |
1.豆腐は2cm角に切り、三つ葉は2~3cmの長さに切っておく。
2.鍋に水、塩、しょうゆ、顆粒だしを入れて煮立て、絹ごし豆腐と乾燥わかめを加えてひと煮立ちさせる。
3.三つ葉を加えてすぐに火を止める。
2.定番のお供「お味噌汁」
三つ葉の香りは、豆腐や卵、根菜、きのこ、海藻など、さまざまな食材と好相性。量を多く取りたいときは、定番の味噌汁で。
三つ葉となめこの味噌汁
材料(2人分) | ||
---|---|---|
三つ葉 | 1/2束 | |
なめこ(水洗いして水気を切る) | 1袋 | |
油揚げ(熱湯をかけて油抜きする) | 1枚 | |
だし汁 | 400ml | |
みそ | 大さじ2 |
1.油揚げは5mm幅に切り、三つ葉は2~3cmの長さに切っておく。
2.鍋にだし汁を入れて火にかけ、煮立ったらなめこと油揚げを入れて軽く火を通す。
3.弱火にして味噌を溶き入れ、三つ葉を加えてすぐに火を止める。
3.生で三つ葉を味わうなら「サラダ」
三つ葉の爽やかな香りとシャキシャキの食感が楽しめるサラダ。長ねぎの辛味とあいまって食欲をそそります。ドレッシングはごま油ベースでコクをプラス。
三つ葉のサラダ
材料(2人分) | ||
---|---|---|
三つ葉 | 1束 | |
長ねぎ | 1/4本 | |
おろししょうが | 小さじ1 | |
酢 | 小さじ2 | |
ごま油 | 小さじ1 | |
塩 | 小さじ1/4 |
1.長ねぎは斜め薄切りにして、水に5分さらして水気を切る。三つ葉は5cmの長さに切っておく。
2.大きめのボウルにおろししょうが、酢、ごま油、塩を入れて混ぜ合わせる。
3.2のボウルに1の長ねぎと三つ葉を入れ、よく混ぜて、器に盛る。
4.茎も丸ごと食べられる「おひたし」
三つ葉を丸ごと味わえるおひたしは、色鮮やかで目にもおいしい一品です。春先に出回る根三つ葉を使えば、旬の味覚が楽しめます。
三つ葉のおひたし
材料(2人分) | ||
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三つ葉 | 1束 | |
かつお節 | 適量 | |
塩 | 少々 | |
だし汁 | 大さじ2 | |
しょうゆ | 大さじ1 |
1.三つ葉は根を切り落とし、塩を加えた熱湯に茎から先に入れてさっとゆで、冷水に取って冷まし、水気を絞り、4cmの長さに切って器に盛る。
2.だし汁としょうゆを合わせて、1の三つ葉にかけ、かつお節をかける。
※少量のだし汁は、茶こしにかつお節を入れお湯を注いで取ることができる。
5.韓国風の味を楽しめる「ナムル」
おひたしを韓国風の味付けにすると「ナムル」になります。手早く作れておかずはもちろん、おつまみにもぴったりです。
三つ葉のナムル
材料(2人分) | ||
---|---|---|
三つ葉 | 2束 | |
焼のリ | 1枚 | |
塩 | 少々 | |
ごま油 | 適量 |
1.三つ葉は根を切り落とし、塩を加えた熱湯でさっとゆで、冷水に取って冷まし、水気を絞る。
2.1の三つ葉を3~4cmの長さに切り、ごま油と塩で調味する。好みで、おろしにんにく、すりごまを加えてもよい。
3.焼のリをちぎって加え、軽く混ぜる。
三つ葉をおいしくするワンポイント
色と香りで日本の食卓を彩る三つ葉。調理する際に、よりおいしくするためのワンポイントをご紹介します。
1.熱に弱いので注意
ゆですぎると色も歯ごたえも悪くなり、香りも飛んでしまうので、お湯にさっとくぐらせる程度にしましょう。熱い汁物や茶わん蒸しに飾るときも同様です。長い時間、熱いものに触れていると葉が変色してしまいます。料理を提供する直前に飾るようにしましょう。
2.結び三つ葉にすると見栄えがキレイに
煮物や汁物の飾りにするときは、葉を細かくカットして散らすだけでなく、結び三つ葉にすると見栄えもよく、日本料理やおせち料理の飾りにぴったり。
飾り三つ葉の作り方は、熱湯にさっとくぐらせたら冷水に入れて冷やし、茎の真ん中でふたつ折りにしてからひと結びします。
3.風味を穏やかにするなら油を使って調理
三つ葉は柔らかくアクの少ない野菜ですが、香りが強くて食べにくいと感じる場合は、油を使って調理するとマイルドな味わいになります。例えば、天ぷらやかき揚げ、油炒め、バターソテーにしてもおいしく食べられます。
4.野菜ジュースのアクセントとしてもおすすめ
三つ葉は市販の野菜ジュースの材料としても使われています。ニンジン、キャベツ、トマト、リンゴ、バナナ、グレープフルーツなど、ジュースのアクセントとして加えてみてはいかがでしょう。野菜や果物と一緒にミキサーにかければ、おいしく栄養豊富なジュースの出来上がり。
知れば知るほど使いたくなる万能野菜
三つ葉を食用としているのは、日本と中国だけ。線が細いけれどもビタミン・ミネラルが豊富に含まれ栄養価が高い。栽培方法などに応じて3種類あり、それぞれに旬や特徴が異なるなど、意外と知らない三つ葉の雑学。料理のアクセントになる名脇役だと思っていた三つ葉が、実は主役級の野菜であることも新たな発見ではないでしょうか。用途に応じて、糸三つ葉、切三つ葉、根三つ葉を使い分けると、料理がさらにおいしく楽しくなるかもしれません。火が通りやすく、生食もできるので、時短料理にも重宝します。ぜひ、野菜売り場で鮮度のよい三つ葉を選び、買い物かごに入れてみてください。三つ葉の魅力を知れば知るほど、使い方のアイデアも湧いてくることでしょう。
参考書籍「草土花図鑑シリーズ野菜+果物」(草土出版)