農業を営む際、留意すべきことのひとつが「経費」です。経費を適切に計上すれば、同じ収入でも手元に残るお金を増やすことができ、安定した農業経営への近道になります。
本記事では農業で計上できる経費について、特に開業時に焦点を当てて解説します。
農業は初期投資が高額なため、適切な費用の計上が欠かせません。また、開業時の経費に関係する「開業届」や「個人事業主」の概要についても紹介します。
開業時の経費はいつから計上できる?いくらまで?
就農したばかりで経理業務に慣れていないとき、「どの期間の支払いが開業時の経費として計上できるのか」「どの程度の金額が経費として認められるのか」など、開業時の経費について悩むことでしょう。まずは、開業時の経費として計上できる期間と金額を解説します。
開業にかかった費用だと説明できれば「いつからでもOK」
就農の準備のために使った費用、たとえば農業に関連する本の購入やセミナー受講料、研修費といった費用は「開業費」として扱われます。開業費は一度資産に計上して、開業した年も含めて2年目、3年目と少しずつ経費に計上できます。
これらの支出は、開業のためと説明できれば、いつでも開業費として計上して問題ありません。支出の理由が具体的に説明できるものであれば開業費に含めて計上し、節税を図りましょう。
開業にかかった費用なら「いくらでもOK」
開業費として計上できる金額は、期間と同じく支出の理由を説明できるのであれば合計金額の上限は問われません。しかし、1項目あたりの金額が10万円以上か、10万円未満かで扱いが異なります。
1項目あたりの取得価額が10万円を超えてしまうと固定資産として扱われるため、開業費に含められません。たとえば業務に使用するパソコンを購入した場合、10万円以上なら固定資産として扱い毎年「減価償却費」として計上、10万円未満なら「開業費」に計上します。
こうした仕分・帳簿記入は適切に行わなければなりません。しかし、仕分の考え方にもグレーゾーンがあるため、対象となる経費がどの費目に入るのか、適切な選択は簡単ではありません。
判断に迷うことの多い就農初期は、専門家に相談できる体制を整えておくことをおすすめします。保険チャンネルでは、ファイナンシャルプランナーへの相談を受け付けています。知識・経験が豊富なファイナンシャルプランナーが在籍しているため、お金に関するあらゆる相談に幅広く対応してくれます。
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FPに相談する際の注意点や農家こそFPに相談すべき理由についてはこちらの記事も参考にしてください。
関連リンク:FPに相談する際の費用はどのくらい?農家こそ相談すべき理由や注意点も解説
農業を始めるのに開業届は必要?
新規就農時には、「開業届は出した方がよいのか?」と気になる人もいるでしょう。ここでは開業届を出す理由を紹介します。
開業届は出す必要がある?
手続き上、開業届は提出する必要があります。開業届は所得税法第229条に記載があり、“事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出すること”と記載があるためです。
しかし、提出しなかったとしても2023年1月現在において罰則はありません。開業届を出さなくても開業した年分の確定申告を行えば、適切に税金を支払うことになります。そのため、国としては黙認している状況といえるでしょう。
開業届を出すメリットはある?
開業届を提出することの主なメリットは「青色申告特別控除を受けられること」「損失の繰り越しができること」の2つです。
青色申告特別控除とは、開業届をはじめとする必要な書類をそろえて青色申告承認を申請し、複式簿記で記帳した帳簿をもとに確定申告を行うことで、最大65万円の控除を受けられる制度です。65万円の控除は、条件にもよりますが年間10万円を超える節税効果を発揮することもあります。
さらに青色申告を行うことで、損益通算後の所得が赤字になった場合に3年間まで繰り越しできます。次年度以降、大きな収益を上げても、繰り越してきた赤字と相殺して支払う税金を抑えられます。
このようなメリットがあるため、節税を図りたい人は開業届を出すべきといえるでしょう。
開業届はどのタイミングで出せばよい?
次に気になるのは「開業届を提出するタイミング」についてです。
基本的には、先述した“開業等の事実があった日から1月以内”のとおり、事業所得を生じさせる行動を取った日を開業日にすればよいでしょう。
しかし、実際は「このときが開業のタイミング」と言い切ることは難しいため、事業を始めた月のなかで縁起のよい日や記念日などを選定するケースが多いようです。
また、実利的な面では失業給付金や再就職手当、配偶者の扶養から抜けるタイミングなどを考慮した方がよいでしょう。
農家は「個人事業主」になる?
新規就農者から「自分は個人事業主になるのか?」という疑問もよく挙がります。特に会社員から脱サラして農業に飛び込む人は、個人事業主や法人といった言葉を聞き慣れないかもしれません。
事業を行うなら、個人事業主になる
農業所得を含む事業所得を得ている人は、基本的には個人事業主になります。通常は開業届を提出し、開業日から個人事業主を名乗ります。
農業法人を設立するという方法もある
個人事業主として就農するケースのほかに「農業法人を設立する」という方法もあります。法人格を得ることで社会的信用を得やすくなり、銀行からの借り入れがスムーズに行われたり、取引先からの信用を得やすくなったりするなどのメリットが存在します。
個人事業主として就農する場合、農業法人を設立する場合、それぞれにメリット・デメリットがあるため、税制や手間と将来のビジョンを照らし合わせて最良の道を選択しましょう。
農業で開業するときの注意点
最後に、農業で開業するときに考えておくべき注意点を紹介します。
最初は農業法人への就職も視野に入れる
1つ目の注意点は「農業法人への就職を視野に入れること」です。
未経験から開業を目指す人もいますが、成功することは簡単ではありません。その理由のひとつは就農後の生活の煩雑さにあります。
農家の業務は作物の管理はもちろん、農業に関する知識の習得や経理についての勉強など多岐にわたります。また、日々の業務に加えて、周囲の農家との情報交換や人脈づくりの時間も必要でしょう。慣れない業務を行いながら、経営者として金銭の管理をするのはなかなか難しいものです。
一方、最初は農業法人に就職するかたちで就農すれば、作物の管理や経理業務をはじめとする事項を学びながらも、一定の収入を得られます。自分が農業に向いているかどうかも確認できるため、開業以外の選択肢に加えておきましょう。
農業に加えて生活防衛資金も確保する
2つ目の注意点は「生活防衛資金の確保」です。
開業時は事業運営に目が向き、衣食住など自分の生活に必要な資金が後回しになることも。事業用の資金の枯渇を防ぐことも大切ですが、それ以上に生活費の枯渇は大きな問題です。
一定期間収入がゼロになっても問題にならない程度の生活防衛資金を貯めたうえで、開業を検討しましょう。
農業で起業する人向けの補助金をチェックする
3つ目は「就農者に向けた融資制度・補助金のチェック」です。
日本では少子高齢化が進行していますが、特に農家の高齢化は深刻です。新規就農者がh植えるよう、国や自治体は好条件な融資制度や補助金を準備しています。
特に開業当初は資金が不足することが多いため、無利子融資や補助金は最大限に活用したいものです。安定的な農業経営に効果を発揮するので、受けられる融資・補助金の有無は確認しましょう。
就農者の開業資金の調達方法については、以下の記事で紹介しています。
開業に向けて、しっかりとお金・知識の準備をしよう
就農を目指す人が疑問を感じやすい、開業時の経費について解説しました。
開業費は上手に活用することで、開業したばかりで安定しない農業経営を「節税」の観点で助けてくれます。しかし、適切に計上しなければ税務署から指摘を受ける可能性もあるため、取り扱いには注意が必要な費目です。
また、開業時には開業届や青色申告特別控除をはじめとするさまざまな手続きの必要性を判断しなければなりません。しかし、一つひとつの事項を調べて取捨選択するには時間がかかります。
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