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地域農業の雇用確保と新たな働き手の発掘へ。“1日農業バイトデイワーク”の可能性を実感

地域農業の雇用確保と新たな働き手の発掘へ。“1日農業バイトデイワーク”の可能性を実感

鹿児島県南西部に位置する指宿(いぶすき)市は、県内の他地域に比べて新規就農が多いエリア。温暖な気候により露地栽培が可能で、新規就農でもコストを抑えられる点や、全国生産シェアの高いオクラや豆類がある点も理由となり、Iターン移住で就農する人も少なくないそう。しかし、高齢化で離農が進み、働き手不足が進展。そのような状況を踏まえ、“1日農業バイトデイワーク”の普及に取り組んだ『公益社団法人 鹿児島県農業・農村振興協会』の上福元彰さんに話をうかがいました。

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高齢化×コロナ禍で地域農業は深刻な働き手不足に

『鹿児島県農業・農村振興協会』は、農林業の担い手の確保・育成をはじめ、農林業技術の改善や県産農林水産物等の安心・ 安全などに関する事業により、鹿児島県の農林業の振興を図る目的で設立されました。農業の人手不足に対し、同協会では平成30年に鹿児島県担い手・地域営農対策協議会の委託を受け、鹿児島県農業労働力支援センターを設置。農家からの労働力確保に関する相談対応、労働力確保事例や技能実習生等の情報提供、求人・求職者のマッチングに向けた支援等にも取り組んでいます。

しかし、農村部の高齢化に加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により労働力不足はより深刻な事態に。これまでのように親族や集落で労働力を補っていた小規模農家だけでなく、法人農家も大きな影響を受けます。同協会では民間人材派遣事業者やシルバー人材センターなどと連携を取るものの思うような結果とはならず、他に良い手立てはないかとアンテナを張り巡らせていた同協会の上福元さん。農業新聞で取り上げられていたスマートフォンアプリ“1日農業バイトデイワーク(以下、デイワーク)”の記事に目が止まります。

上福元さん

1日単位の募集ができるため、休日だけや都合のいい日だけアルバイト感覚で働ける点が気軽でいいなと。農業者の身近なところで手伝いができる働き手が増える可能性に期待が持てました。2021年11月には、このアプリの普及に着手しました。

2021年12月から、指宿市担い手育成総合支援協議会と連携してモデル的に“デイワーク”の普及をスタート。

「農家さんに向けた第1回の説明会は20名ほどが集まりました。その中で積極的だった10戸をモデル農家として活用の進捗を見守っていたのですが、実際にアプリで募集したのは3戸だけ。無料アプリなのでハードルが低いし、北海道や長野県では全域で浸透している感じだったので、イメージと違う結果に驚きました。高齢の農家さんはスマホやアプリ操作に戸惑うことや、面接も無しに見ず知らずの人をいきなり雇用することに抵抗があるようでした」と、上福元さんは言います。

出だしで思うような結果は得られなかったものの、1月末時点ではモデル農家以外も含め県下で6農家が76名の求職者とマッチング(延べ393人)に成功。活用した農家さんからは「繁忙期だけ募集できるのが便利」「遠方からの応募があった」との声も。また、マッチングした76名の約6割は20〜30代と、比較的若い世代が多くいました。なかにはダブルワークに活用する会社員もいて、多様な働き方にフィットできる魅力を実感したと言います。

そんな時に、株式会社マイファームが『令和3年度農業労働力確保緊急支援事業のうち農業労働力産地間連携等推進事業(以下、産地間連携事業)』の実施事業者として公募を開始。支援があれば、農家さんに対してさらなる周知ができると考え、2022年2月に公募に応募したそうです。

助走から加速へ。『産地間連携事業』で農家と働き手への周知を図る

『産地間連携事業』では、8月に県下3ケ所で「デイワーク」活用セミナーを開催したり、規模に関係なく幅広い農家に活用してもらうため、“農家さんのための「daywork」活用マニュアル”や “臨時パートさん雇用の手引き”といったガイドブック、アプリそのものを紹介するチラシを制作。それらは、“デイワーク”で既に労働力確保に取り組まれていた長野県へ出向き、アドバイスを受けながら作成したそうです。また、地元新聞が定期的に発行する情報紙に取り組みの記事を出してもらうなど、農家と働き手に向けた周知活動に注力しました。このような普及活動があり、5月の事業スタートから4カ月弱の間で延べ775名(リピーター含む)のマッチングにつながりました。加えて、受け入れる農家に対しては「魅力ある職場づくり」の重要性を認識してもらうことも大事だと上福元さんは言います。

長野県へ出向いた際に受けたアドバイスを参考に作成したチラシやパンフレット。スマートフォンに慣れていない人にも分かりやすいように、イチから丁寧な説明が記載されています。

地元新聞が定期発行する情報紙に掲出した記事。掲載後は農家からの問い合わせもあり、デイワークの普及に効果的だったとのこと。

「また働きたい、と思ってもらうためには農家さんの意識改革や環境整備も大事です。うまく募集ができている事例の紹介や労働関係法令に関する説明会も実施。アプリ利用者に対するアンケートも活用しながら、募集する農家さんと働き手それぞれに魅力のあるサービスにしていきたいですね」(上福元さん)。

導入・活用で手応えを感じている農家の声

【Case1】オクラ・豆類を栽培する松木千年さん・奈津子さん

“デイワーク”を活用し、働き手の確保を行っている2農家にも話を聞いてみました。まずはオクラや豆類をメインに手がける松木千年さん・奈津子さん。従業員+外国人技能実習生の受け入れで人材確保を行っていましたが、コロナ禍で外国人の入国が不透明になり、実習生をキャンセルしました。そんな中、指宿市担い手協議会からのアプリ説明会のお知らせを知り、参加して導入を決めたそうです。

松木夫妻

繁忙期は通常プラス4名の人手が必要。その分をアプリで募集しました。不足する分だけを日雇い形式で確保できるので、人件費的にも助かっています。アプリ自体に機能が多く備わっていて、慣れるとかなり便利。ただ使いこなすまでは試行錯誤が必要かもしれません。配慮した点は、事前情報をきちんと伝えること。ほ場にはトイレや休憩施設が無いので、食事の場所やトイレはどこを使うなどの説明を入れています。使う道具や手袋などの準備も必須。農作業初心者の応募者も多く、毎日違う人が訪れる時は説明の苦労はあるけれど、作業に慣れて楽しそうに仕事をしている様子を見たり、リピーターさんが増えたりするとうれしいですね。

取材にお伺いした3月中旬はスナップエンドウの収穫とハウスオクラの準備時期。ぷっくりツヤツヤのさやが美味しそうです。手入れの行き届いた広いほ場で、開聞岳をバックに働くのは気持ちがよさそう。

【Case2】自社農園や野菜の選別・流通など広く手掛ける物袋純次さん

次は、自社農園や地元で収穫された野菜の選別、出荷を行う有限会社開聞繊維・物袋青果の社長・物袋純次さん。収穫時期の忙しさは目が回るほどで、さらに2022年夏から新たな品目の選別作業を請け負うことに。

物袋さん

ハローワークで求人しても音沙汰ナシ。作業時期が近づいてきたので直接相談に行ったところ、ハローワークの職員から“デイワーク”のチラシを手渡されました(笑)。すぐにアプリで募集をかけると4名の応募が。以来、妻と息子がデイワーク担当となり、必要な時期に必要な人数の確保にあたっています。今日もジャガイモの選別をしている6名とニンジン収穫をしている5名がアプリで集まった人たち。コンスタントに応募があるのでほっとしています。難しいのは時給金額の設定かな。高くしすぎるとうちも大変ですから。受け入れに関しては、休憩室を用意したり、作業説明のミーティングを行ったり、初めての人はリピーターさんと組んでもらったりと工夫しています。今のところ継続して活用していくつもりですよ。

この日はデイワークで募集した6名の方々が事務所横の選果場でジャガイモの選別をしていました。慣れている方の教育のもと、みなさん手際よく作業されているのが印象的でした。

農家同士の情報交換・交流を深め、課題に取り組む

左から指宿市農政部農政課 人・農地プラン推進室 主査・吉元 隆寿さん、主幹兼推進係長 前田昭市さん、(公社)鹿児島県農業・農村振興協会 農林業技術部部長 上福元 彰さん、鹿児島県農業労働力支援センター 農業労働力支援員 古賀 誠さん。協会と自治体が一体となって労働力確保に努めており、また農家とのコミュニケーションも密に図られ、チームワークの良さが伝わってきます。

導入・活用で成果を実感している農家の話から、自治体の支援窓口やハローワークでの“デイワーク”の浸透具合がうかがえます。デイワークから従業員への登用に至ったケースもあるなど、働き手を確保する手段としての手応えと、これからの可能性が見えてきました。

上福元さん

指宿市での事例を踏まえ、鹿児島県全域で活用の輪を広げていきたいと思います。今回の『産地間連携事業』では、アプリの周知・活用を中心に活動しました。今後は私たちが積極的に介入するというよりは、農家さん同士でアプリの活用事例を発表したり、検討したりする場を設けるなど、間接的な支援を行っていきたいですね。口コミで広がるのが理想です。一方で、働き手の質の問題や人材が日替わりになる場合の説明負担、受け入れる農家側の環境整備という課題も見えてきました。今後の活用を注視しながら、農家さんと働き手の双方がうれしいマッチングを目指したいと思います。

左右対称な名峰『開聞岳』。雲ひとつなく、その美しい姿で取材班を迎えてくれました。この雄大な自然を背に働くのは指宿で農業をする醍醐味のひとつですね。

■お問い合わせ■
公益社団法人 鹿児島県農業・農村振興協会
〒890-8577 鹿児島市鴨池新町10番1号
TEL: 099-213-7222
FAX: 099-213-7229
E-mail:nourin@ka-nosinkyo.net

<取材協力>
*公益社団法人 鹿児島県農業・農村振興協会
*指宿市農政部農政課 人・農地プラン推進室
*マツキアグリ 松木千年さん・奈津子さん
*有限会社開聞繊維・物袋青果 物袋純次さん

そのほかの取組をチェックする
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