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長崎県で新たな人材確保の兆し。外国人材の雇用の取り組みについて

長崎県で新たな人材確保の兆し。外国人材の雇用の取り組みについて

農業分野において外国人材の重要性が高まる一方、賃金や住宅確保の問題から、スムーズに登用できている現場は決して多くありません。そのような中、“産地間連携”をうまく活用して外国人材を雇用し、人材不足に立ち向かおうとしているのが長崎県です。外国人材の派遣を行っている株式会社エヌと、初めて外国人材の起用に踏み切ったJAながさき西海させぼ広域かんきつ部会を取材し、その取り組みについてお話を伺いました。

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2019年に長崎で人材派遣会社が発足。地方の発展と外国人材との共存共栄を目指す

株式会社エヌ(以下、エヌ)は、労働力支援サービスを通じて農林水産業の所得向上と成長化を図るため、長崎県のプロジェクトで2019年2月に設立された人材派遣会社です。エヌは、長崎県が出資をする公益財団法人長崎県農林水産業担い手育成基金、JA長崎県中央会、株式会社アソウ・ヒューマニーセンターの3社が合弁事業として開始したもので、地方の発展と外国人材との共存共栄を目指しています。2019年4月に特定技能制度(※)が始動したことで、エヌでも特定技能外国人材の派遣を開始しました。
※国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度

天皇杯受賞の「西海みかん」。産地で規模拡大に伴う労働力不足が深刻に

JAながさき西海させぼ広域かんきつ部会(以下、JA西海かんきつ部会)は、長崎県の佐世保市、平戸市、松浦市、佐々町にまたがる広域部会です。2016年度には「園地登録園制度」を中心としたブランド率向上対策等が評価され、「西海みかん」が農林水産祭において天皇杯を受賞しています。 高齢化による離農・農地の集積が進み、一農家当たりの栽培面積は2014年の125aから2019年には141aと年々拡大しています。

規模拡大に伴い、特に収穫期の労働力不足が顕著となっていることから、JA西海かんきつ部会では労働力確保対策として、シルバー人材や農福連携、株式会社エヌによる日本人大学生派遣の活用等に取り組んできました。
しかしながら、農繁期と閑散期がはっきり分かれた柑橘栽培において通年で雇用することは難しく、通年雇用を望む就労者との間にギャップが生じ、十分な労働力を確保できない状態が続いていました。

国内の限られた外国人材を有効活用する「リレー派遣」という新構想

エヌでは2019年よりカンボジアより外国人材の受け入れを行い、JA西海かんきつ部会を含む長崎県内のJA・農業者等へ派遣。産地の労働力確保に取り組んできましたが、2020年からは新型コロナウィルスの拡大を受け、外国人材の新規入国が停滞。状況を打開するためには新たな取り組みが必要でした。

国内の限られた外国人材を有効活用するために、エヌが着目したのは「リレー派遣」でした。リレー派遣とは、冬場が農繁期である長崎県と、夏場に農繁期を迎える他産地の間で同じ人材を行き来させて、各地域の労働力の確保につなげる枠組みです。2020年の夏ごろに試験的に行った長野県とのリレー派遣から、枠組みの有効性を確認したエヌは、2021年4月にエヌ信州支店(長野県塩尻市)、同年7月にエヌ北海道支店(北海道斜里郡斜里町)を開設し、これらの地域と長崎県間でリレー派遣を本格的に開始しました。
2022年には、入国制限が解除され外国人材の受け入れが一気に進んだことと、リレー派遣の支店が整備されたことから、同年9月末時点で132名の派遣が実現しました。

「外国人材の住居はエヌの各支店が確保し、賃金は派遣先(JA等)が支払いをすることになっています。外国人材がしっかりと給与をもらえるように、派遣先の担当者が外国人材とコミュニケーションをとりながら、派遣期間に空きのないよう配置調整を行っています。ほかにも、外国人材に地元JAのイベントに参加してもらい、農家さんと交流する機会をつくることで、派遣が円滑にいくように努めています」とエヌの鳥越利雄さんは話します。

受入への不安が一転、産地も外国人材の登用に積極的に

JA西海かんきつ部会においては、3戸の農家で3人のカンボジア人を期間雇用しました。これまで外国人材の受け入れは検討してきませんでしたが、今回の受け入れで外国人材活用の有効性が確認でき、雇用の幅が広がったといいます。

「受け入れ前は、農家さんも『言葉が通じるのか』『間違って作業していたらどう伝えればいいのか』という心配があったそうですが、実際に受け入れてみると、コミュニケーションに難はなく、黙々と一生懸命に仕事をしてくれる外国人材の姿を見て受け入れてよかったという声が寄せられました。JAの担当者にも『受け入れを進めていける』と手ごたえを感じていただきました」(鳥越さん)

西海かんきつ部会での受け入れをきっかけに、JAながさき西海全体で外国人材の受け入れが進められました。地域全体で繁忙期ごとに外国人材を活用できるように、JA職員が配置調整を行っています。 初めて外国人材を期間雇用した育苗農家の井上さんは、「県内でも他の地域では受け入れが盛んなところがあるが、まさか自分の地域でも外国人材に来てもらえると思っていなかったので驚きました。よく働いてくれてとても助かっています」と、喜びの声を寄せます。

「今後エヌでは、年間300名の外国人材の派遣を目指していきたい」と鳥越さん。
「通年雇用が可能な派遣先を長崎県内のみならず北部九州まで視野にいれて確保していきながら、リレー派遣の派遣先として連携できる地域の拡充を進め、人材不足を地域の連携で乗り越えていきたいと考えています」と今後の展望を話します。
エヌの取り組みは長崎県内に留まらず、全国各地の人材不足の解消に向けた一手となることでしょう。

問い合わせ

株式会社エヌ
TEL:0950-20-1201
問い合わせフォーム

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