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農閑期の仕事創出で外国人材の離職を防ぐ。一大キャベツ産地の嬬恋で進む産地間連携の取り組み

農閑期の仕事創出で外国人材の離職を防ぐ。一大キャベツ産地の嬬恋で進む産地間連携の取り組み

近年、日本の農業における労働力不足は深刻な課題となっています。そのような中、解決策のひとつとして「特定技能制度」の活用が進められています。この制度は一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れることで、人材確保が困難な産業における人手不足の解消を目指すものです。今回は、特定技能制度を活用する嬬恋キャベツ振興事業協同組合に着目し、産地間連携により通年で仕事を創出する新たな取り組みを紹介します。

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大変な作業だからこそ、外国人が活躍する

群馬県の西端に位置し、標高700m〜1,400mの高原地帯である嬬恋村。夏でも冷涼な気候が特徴で、日中と夜の寒暖差は甘みの強いキャベツを育みます。
そんな嬬恋村でキャベツを栽培する農家33軒で組織するのが、嬬恋キャベツ振興事業協同組合です。

嬬恋キャベツ振興事業協同組合事務局長の橋詰さん

「組合の立ち上げは今から16年ほど前です。当時の外国人研修制度を活用したいという農家の意向をきっかけに組合ができました。組合員は全員が大規模農家で、共同出荷や共同購入も実施しています」(橋詰さん)

早い段階から外国人労働者を積極的に受け入れてきたという同組合。背景には春~秋のキャベツ出荷量が全国1位の嬬恋ならではの厳しい事情がありました。

「嬬恋の農業は繁忙期がとにかく大変です。特に忙しい収穫期の中でも7〜8月は、植え付け作業が重なるため、朝2時に起きて、3時から9時まで収穫作業。一休みして、午後は植え付け作業。夕方以降は翌日収穫分のダンボールを組み立て、次の日も2時に起きる生活を繰り返します」

4月から6月にかけての作業は主に植え付けだけですが、それでも1辺100メートルの広いキャベツ畑を数時間往復し続けるため、根気強さが求められる作業だそうです。

植え付け作業の様子

「正直なところ、日本人にとっては『就農したい』といった目標がない限り、他のアルバイトの方が楽でしょう。昨年も、4月に入った約20名の日本人は6月までにほとんど辞めてしまいました。しかし、外国人の方は稼ぐことを目的にしているためモチベーションが高く、ひたすら繰り返す作業にも真面目に取り組んでくれます。農家にとっても、しっかり働いてくれるという認識になっています」

外国人労働者にとっても、嬬恋キャベツの生産は「大変ではあるものの、その分稼げる仕事」として必要とされているのです。

「去年来ていた外国人の方から『また来たい』と言ってもらえるので、こちらとしても嬉しいです。農家にとっても一から教える必要がなく、作業を任せて自分は別の畑に行けるため経験者はより重宝されています」

組合の立ち上げ当初は10名ほどの受け入れでしたが、今や33軒の農家で90名もの外国人労働者が働いているそうです。

「受け入れで一番困ったのが、村に外国人の方を受け入れる宿舎がないことでした。そこでそれぞれの農家が敷地内にプレハブを建てたり、倉庫の2階をリフォームしたり、空き家を活用したりと、外国人の方が生活するスペースを確保しました。今では『来年も来てもらいたいから』と、進んで宿舎を手直しする農家もいるほどです」

多いところでは、農家1軒で7名の外国人労働者を受け入れている同組合。最近ではスマート農業の活用や農地集積により、一軒あたりの経営面積が拡大傾向にあるため、多くの人手が必要になってきているといいます。

夏は嬬恋、冬は富山や宮崎へ。農閑期も仕事を創出

広大なキャベツ畑

順調に受け入れを増やしてきた一方で、農閑期である冬には仕事があまりなく、外国人の方にとっても思い通りに稼げなくなってしまい、場合によっては離職するという課題がありました。

「そこで農林水産省の『農業労働力産地間連携等推進事業』を活用して、農繁期の異なる地域との連携を始めました。例えば静岡から来た外国人の方は、同じくキャベツを生産する農家の下で働いていたため本人も余計なストレスを感じずに働くことができています」

取材時には、新たな連携先として富山県の干し柿農家の下で8名のカンボジア人が従事しているとのことでした。

「秋までに嬬恋キャベツでの作業を終え、11月から富山で柿の収穫や干し柿作りを担ってもらっています。嬬恋での仕事よりは少し時給が安く仕事量も少ないのですが、『嬬恋の作業はハードだから冬は休みながら少しでも稼ぎなさい』と言って送り出しました。3月末にはまたこちらに戻ってきますが、楽しくやっているみたいですよ」

また、新たな連携地域の確保とあわせて居住環境などの足並みを揃えるため、嬬恋キャベツ振興事業協同組合では宮崎県農業法人経営者協会と人材会社の3者で協定を結びました。お互いに情報を共有して、待遇を一律にするための取り組みを実施しています。

「今年は77名の外国人が特定技能制度を使って嬬恋に働きに来る予定です。人数が増えた分、新たに農閑期の仕事を確保する必要があったため、宮崎県農業法人経営者協会と人材会社との3者で協定を結びました。宮崎では冬期に野菜などのハウス栽培で人手が足りなくなるので、農閑期が冬に重なる嬬恋ではうってつけの連携先です」

将来的に嬬恋で通年雇用を目指す

収穫作業の様子

最後に今後の展望について伺いました。
「今は産地間での連携によって外国人の方に一年を通して仕事を供給する体制を実現していますが、今後は嬬恋だけで通年で働けるような体制づくりや働き方の改善にも取り組んでいきたいと考えています」

外国人労働者の働きやすさや収入面まで考慮し、さまざまな地域との連携を続ける同組合。
繁忙期の人材不足に課題を抱える産地は参考にしてみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ

嬬恋キャベツ振興事業協同組合
〒377-1526 群馬県吾妻郡嬬恋村三原399-4
TEL:0279-97-2102

そのほかの取組をチェックする
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