塗布型遮熱剤とは?光を遮らずに真夏の暑さから作物を守る
猛暑日や真夏日が年を追うごとに増え続け、平均気温も上昇傾向にある昨今。こうした猛暑対策には主に遮光カーテンが使われてきましたが、近年は塗布型遮熱剤も大きな注目を集めています。
塗布型遮熱剤とは、温室の屋根に吹き付け塗布・展着させることで、手軽にハウス内の温度上昇を抑えることができるというもの。メーカー・製品によって遮光率や遮熱持続期間は異なるものの、「今はいろんな製品がありますが、農家さんに私がまずオススメしているのは『レディヒート』。私自身が惚れ込んだ製品だからです」と、福岡で1993年から温室・ビニールハウスの工事・メンテナンスを手がけているアグリサポートシステム株式会社の代表取締役、清水さんは語ります。
それは、『レディヒート』が熱線(IR)を反射する一方で、光合成有効放射(PAR)をより多く透過させるため、ハウス内の温度はしっかりと下げながらも作物の光合成を妨げないから。
また、遮熱持続期間が多くの製品は3ヵ月であるのに対し、『レディヒート』は6ヵ月だというところも重要なポイントなのだそうです。
清水さんによると、「効果が3ヵ月続くとは言っても、他の製品は雨が続くとそれよりも早く塗布した遮熱剤が落ちてしまうことがあります。また、一定期間が経過すると自然に剥離するタイプのものも多いのですが、それはつまり、性能が徐々に劣化していくということ。塗布した直後は良くても、3ヵ月後には効果が薄れているんです」とのこと。その点、『レディヒート』は3〜4ヵ月経過しても自然に剥離するのではなく、遮熱する必要がなくなったタイミングで『レディクリーン』という除去剤を使い、遮熱剤をきれいに取り除くタイプの製品です。
「私たちが創業して間もなく、1994年からお付き合いいただいているレッドファームさんを例に挙げると、トマトのハウス栽培に遮熱が必要なのは6月から9月までの4ヵ月間。その間は一貫して効果が持続しますし、もし残暑が厳しければ10月まで『レディクリーン』で遮熱剤を落とすタイミングを伸ばせば良い。万が一、想定外の冷夏になれば、早めに落とすこともできるんですよ」と、清水さんは『レディヒート』だからこそできる臨機応変な使い方を教えてくれました。
夏場の品質低下を乗り越え、反収も1.2倍アップ 労働環境の改善にも
福岡県の最西端に位置する糸島半島。この自然豊かなエリアで栽培される野菜は、今や「糸島ブランド」として県内外で広く認知されています。そして、ここで生産されているトマトの多くは、礫耕栽培という方法によってつくられたもの。培地に土ではなく溶岩を使い、培養液を散布して育てるこの栽培方法では、水を与えると固くなってしまう土とは異なり、根に十分な酸素が行き届くため、トマトの甘さが増すという特徴があります。
そして30年近く前、レッドファーム代表・富永孝文さんの父が、本格的に礫耕栽培を始めました。
そのトマト農園を、富永さんが継いだのは18年前。もともとは配管工事の仕事をしていたそうですが、父の病気を機に家業を手伝うようになったそうです。
「後は継がなくても良いから、自分が好きなことをしろ」と言われていたものの、「父がせっかくここまでの設備を整え、なおかつ礫耕栽培トマトを全国的に評価されるブランドにまで高めたのに、辞めてしまうのはもったいない」と考え、自身が代表として続けることを決意。そこから創意工夫を重ね、ハウス6棟、36aという規模は変わらないものの、当初は17〜18トンだった年間の反収を26〜27トンにまで高めることに成功しました。
その試行錯誤のうちのひとつが、清水さんから提案された『レディヒート』の導入。遮光カーテンだけを使っていた頃は、トマトの生育が鈍かったり完熟するのが早すぎたりして、他の時期よりも味が落ちていました。しかし『レディヒート』を使い始めてからは秀品率が上がり、そのぶん収量もアップしたと言います。
「年間を通して、より安定した品質を維持できるようになったというところが、何よりの成果ですね。また、ハウス内の気温が40℃を超えることがほぼなくなったことで、パートさんたちの労働環境が大幅に改善されたというところも大きな収穫でした」と、富永さんは語ります。
作物に必要な光をしっかりと取り入れながら、ハウス内の作業性をも高めることができる。それが、『レディヒート」の魅力だと言えるでしょう。
気になる価格と塗り方。デメリットもついに克服、この夏は『レディヒート』で乗り越えよう
遮光カーテンやその他の遮熱剤と比較して、良いこと尽くめのように見える『レディヒート』ではありますが、もちろん欠点がない訳ではありません。そのひとつが価格。
「やっぱり高いですね(笑)。単価が高いので最初は躊躇しましたが、結果的に収量を伸ばすことができているので、費用対効果は決して悪くありません。ただ、もし冷夏になれば、せっかく施工したものを早々に落とさないといけなくなるというリスクはあると思います」と、富永さんは正直に教えてくれました。
そして、もうひとつが液剤をハウスの屋根に吹き付ける施工。「これはどの遮熱剤でも同じだと思いますが、自分自身が屋根に登って塗布する作業は、ハウスが6棟もあると大変です。もし滑落して大怪我でもしたら…という不安もありましたね」と、導入したばかりの頃を振り返ってくれました。
そこで、その話を聞いたアグリサポートシステムの清水さんは、ドローンによる吹き付け塗布を提案。これはスマート農業に該当するため一部の自治体※で助成金が出るということもあり、速やかに実現。塗布作業の悩みは、翌年には解決しました。
※JA福岡市の助成金を活用
ただし、このドローンによる施工は、アグリサポートシステム独自のサービス。
「正直、当社が福岡近隣エリアを超えて、広範囲でこのサービスを提供するのは難しいんです。そのため、全国各地に同じようなドローンサービスを提供できる会社がもっと増えてくれることを、私たちは期待しています」と、清水さんは語ってくれました。
ドローンを使った吹き付け塗布を、全国どこでも気軽に頼める環境が整えば、デメリットと言えるようなものはほとんどなくなります。
富永さんが栽培しているトマトに限らず、光を多く必要とし、なおかつ高温を避けたい作物であれば、『レディヒート』を使わない手はありません。ドローンを使った施工サービスが全国的に普及していけば、それにともないその遮熱効果を享受できる生産者も、今後は飛躍的に増えていくのではないでしょうか。
夏の暑さの中でも、収量と高品質を求めるなら、塗布型遮熱剤を使うのが一つの手です。
中でも総合的なコストパフォーマンスに優れた『レディヒート』。関心のある生産者さん、販売会社さんは、お気軽にお問い合わせください。
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