【プロフィール】
■渡辺拓也さんプロフィール
ウォーターセル株式会社 代表取締役社長 北海道の開拓農家出身。商社で食品事業に携わった後、2022年4月ウォーターセル取締役、2023年4月から現職。営農情報のデジタル化と活用で農業が抱えるさまざまな課題を解決し、持続可能な農業づくりを目指す。 |
■横山拓哉プロフィール
株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長。 北海道出身。国内外大手300社以上への採用支援、地域創生事業部門などで、数多くの企画・サービスの立ち上げを経験。2023年4月より「マイナビ農業」を運営する地域活性CSV事業部長就任。「農業をもっと近く、もっと楽しく」を身上に、農業振興に寄与すべく奔走している。 |
【動画で見る】
デジタルで情報を管理する
横山:アグリノートとは、どのようなツールなのでしょうか。
渡辺:アグリノートは、営農に関するさまざまなデータを記録、集計、出力できる営農支援ツールです。現在、日本全国で1万8000以上の農業生産法人様や個人の農家様にご利用いただいています。わかりやすく、使いやすい工夫を重ねることで、高齢の農家さんにも多く活用いただいています。
横山:実は私の祖父も、北海道で農家をしています。最近は父が農業に加わり、今まで紙に記入していたことを、エクセルで記入し始めたんですね。すると祖父が「パソコンだとこんなに楽にできるんだ」と非常に驚いていました。
渡辺:アグリノートも、まさに同じような経緯で始まりました。農家が圃場や作付けに関する情報を紙で記録、ないしは紙にすら記録せずに頭の中で管理していたものを、デジタルで管理しようとできたサービスです。簡単に振り返って確認でき、共有も楽になることが、デジタル化のメリットであり、アグリノートが提供している価値だと思っています。
大規模化への働きかけ
横山:渡辺さんが現場で耳にする農業課題はありますか。
渡辺:少子高齢化によって、日本全国で離農が進む中で、次世代の担い手の方に土地がどんどん集まってくる現象が発生しています。次世代の担い手の方からは「このまま規模拡大を継続して、今の経営が成り立っていくのか」といった声を、切実なお悩みとして聞きますね。持続可能な農業を目指すうえで「大規模化への対応」や「次世代へのノウハウ継承」は、1丁目1番地のテーマになってくると思っています。
横山:それらの課題に対して、アグリノートではどのようにアプローチすることが可能でしょうか。
渡辺:大規模化していたり、飛び地になっていたりする農地を、アナログで管理し続けるのは難しいです。アグリノートを活用することで、圃場をGoogleマップ上で視覚的に管理したり、農作業の記録を作業員の方がパソコンやスマートフォンで簡単に記録したりできますね。
横山:その他にも、農業従事者が減る一方で農業生産法人は増えていることもあり、1社1社が農地内で取り扱う品目数がどんどん増えていますよね。そこもデジタルで管理していく必要がありますね。
渡辺:おっしゃる通りです。また、管理する圃場の数や面積が増加すると生産量も増えるため、営農データの管理以外にも「販路の拡大」や「販売価格の安定化」といった経営課題も出てきます。そういった新たな課題を解決するサービスとして、インターネット上でお米の販売ができるBtoBのマッチングサービス「アグリノート米市場」も始めました。お米の卸売企業様や、中食・外食企業様に買い手として入っていただいています。
横山:つまり、外食企業などがスーパーや市場に行かなくても、アプリから米を買うことができる。そういった世界観になるということでしょうか。
渡辺:その通りです。担い手が減少している中で、いかに次世代を担う生産者の方とつながるかは、買い手の企業様の課題でもあります。生産者様の課題だけでなく、買い手様側の課題も解決することをアグリノート米市場では目指しています。
横山:栽培を管理するだけでなく、もはや経営すらも後押しできるような存在になっているのですね。
農林水産業が環境に負荷をかけている?!
横山:他に、アグリノートのデータを活用できる方法はありますか。
渡辺:2023年には農林水産省から、GAPの取り組みを通じた活用支援事業の対象ツールとして選定いただきました。そのためGAPの認証取得においてアグリノートを活用していただいている事例が多くあります。また、多様な生物が保全された圃場を次世代に継承していくため、生物多様性の可視化にも取り組んでいます。最近活用している大きな部分でいうと、環境負荷の軽減についてもアグリノートとして取り組んでいますね。日本全体の温室効果ガスの排出量のうち約4%を農林水産業が占めているといわれています。農業界において、いかに農産物由来の排出量を減らしていくかが課題です。
横山:排出量を減らすには、具体的に何をしていくことが必要でしょうか。
渡辺:まずは温室効果ガスの排出量を可視化することが大事だと思っています。しかし、農業界では可視化が進んでいません。その理由は大きく二つあり、一つはそもそも可視化するのが困難であることです。温室効果ガスの計算には、肥料の使用量や圃場の面積をはじめとする多くのデータが必要で、一から準備していくのは非常に大変です。一方アグリノートには元々、圃場の管理や、農作業の記録という目的で入れていたデータがあります。今はそれらのデータを、温室効果ガス排出量の計算という目的においてもフル活用することを目指しています。
横山:温室効果ガス排出量の計算に必要なデータのすべてを、アグリノートにため込むことができるということですね。
経済的なリターンで環境保全を促進
横山:温室効果ガス排出量の可視化が滞っている二つ目の理由は一体何でしょうか。
渡辺:二つ目は、経済的なインセンティブがないことです。可視化における計算は大変な作業ですから、経済的なリターンがないと普及しません。。そこで、補助金やカーボンクレジットのような、分かりやすく短期的に副収入が得られる取り組みを増やすことが必要だと考えています。例えば2023年3月には、環境配慮型の農業を行うとクレジットとして認定される「J-クレジット制度」という仕組みが、農林水産省から発表されました。
横山:カーボンクレジットにおいて、アグリノートはどのような役割を担っているのでしょうか。
渡辺:カーボンクレジットの申請には、いろいろな日報データが必要です。なので、アグリノートに入れているデータをカーボンクレジットの申請に活用していただくことで、生産者様や、カーボンクレジットの申請や販売を行う事業者さんの事務的な負荷も軽減できると考えています。
横山:なるほど。データの集計、出力に、販路の確保。さらには環境の保全からクレジット申請まで行うことができる。一石三鳥、一石四鳥と、どんどんいいことが出てきますね。
渡辺:ありがとうございます。まさに、記録したデータをいかに活用していくかが、弊社が今注力しているところです。
記憶から記録。そして共有へ
横山:アグリノートさんは、昨年で10周年を迎えました。これからの10年間、今度は何を目指していくかを聞かせてもらってもいいですか。
渡辺:これまでアグリノートは「農業は記憶から記録へ」というスローガンを掲げ、この10年農家の皆様の声を伺い、改善を続けてきました。それでも、アグリノート単体で提供できるメリットには、限度もあります。これからの10年は「農業は記憶から記録。そして共有へ」をキーワードに、さまざまなパートナー企業様との連携を加速していくことで、さらに生産者様の役に立つサービスづくりにも取り組んでいきます。
横山:先日、農薬の会社であるバイエル クロップサイエンス株式会社さんと提携されたことも話題になっていましたよね。
渡辺:はい。バイエル クロップサイエンス様の強みと、アグリノートの強みを掛け合わせることで、営農管理から防除技術の提案まで、一気通貫したソリューション開発を目指していきます。日本の農業の持続可能な成長に両者で貢献していきたいと思っていますので、ぜひ今後のパートナーシップにご期待いただければと思います。
横山:農業界で頑張る1社1社が、手を取り合って、その輪を大きくしていくことが、農業界に大きなインパクトを与えるのですね。本日はありがとうございました。
(編集協力:三坂輝プロダクション)
【PR】GAPに興味のあるモニター生産者を募集しています!
営農支援ツール「アグリノート」は農林水産省の「GAPの取組を通じた生産工程管理ツールの活用支援事業」に採択されました。本事業にご参加いただけるモニター生産者を募集しています。
[募集組織数]
・先着300組織
[参加特典]
・ 営農支援ツール「アグリノート」の利用料が1年分無料
・ 「アグリノート専用 在庫管理Excelツール(試用版)」の配布
・ 国際水準GAPの取組に向けた「アグリノート」活用コンテンツの提供
[参加申し込みフォーム(フォーム内の参加条件もご確認ください)]
https://docs.google.com/forms/d/1CH1a7skTgUunjQvbCpcKR1pjk-cF5NhfGfaoPrFXjzc
[参考]
・GAPの取組を通じた生産工程管理ツールの活用支援事業
https://www.maff .go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_tool.html
・GFP農林水産物・食品輸出プロジェクトHP
https://www.gfp1.maff .go.jp/
【PR】第13回農業WEEK・第1回農業 脱炭素・SDGs EXPOに出展します!
2023年10月11日(水)~13日(金)に千葉県・幕張メッセで開催の『第1回農業 脱炭素・SDGs EXPO』に出展します。持続可能な農業づくりへの貢献に向けた各種取り組みについてご案内しますので、ぜひご来場ください。
[参考]
・第13回農業WEEK 第1回農業 脱炭素・SDGs EXPO 公式ページ
https://www.agriexpo-week.jp/hub/ja-jp/lp/ex-sdgs.html