生産者・消費者どちらのためにも。物流の常識を変える新たなビジネスモデル確立への挑戦
「生産者が大切に育てた作物の鮮度を保ったまま届けたい」。北海道にある運送会社、(株)ティーアール・ネットサービスの渡邉貴浩(わたなべ・たかひろ)社長は、この思いを実現するため、従来の物流の仕組みを変えようと挑戦を続けています。
これまで、収穫した作物は物流トラックが集荷に来る日まで生産者が保管・梱包(こんぽう)するのが一般的でした。しかし、高齢化などに伴い、保管・梱包作業は生産者の大きな負担となっていました。
そこで(株)ティーアール・ネットサービスは、生産者が畑で収穫した作物をそのまますぐに集荷して自社倉庫に貯蔵し、時期が来たら梱包まで行って消費者の元に届けるという、これまでの常識を変えるサービスにシフトしました。
「生産者さんの元を訪れてお話を聞くと、みなさん丹精込めて野菜や果物を作っています。その様子は自分たちの子どもを育てているようでした。この思いを、物流業者である弊社が受け取り、最高の鮮度のまま、消費者に渡していきたいのです」と渡邉社長は話します。
(株)ティーアール・ネットサービスが農作物を保管・貯蔵するセンター(倉庫)を持つことによって
・生産者は、保管場所の確保や梱包の手間がなくなる
・消費者は、今まで以上に鮮度の良い農作物を受け取ることができる
・(株)ティーアール・ネットサービスは、自社で出荷調整ができるようになりロスが低減する
というWIN-WIN-WINな仕組みが実現しました。
「あそこのトラックは良いよ、鮮度を保ったまま運んでくれるから」と、渡邉社長の取り組みは生産者からの評判を呼び、目立った営業活動をせずとも人づてでの紹介が続いて年々売上高が上がっているといいます。
ところで、この仕組みで重要なのが、‟センター(倉庫)での長期保管時にいかに鮮度を落とさないか“ということ。これを支えているのが、鮮度保持システム『スーパークーリングシステム』です。
収穫後の劣化スピードを抑制することができる『スーパークーリングシステム』を知った時、渡邉社長は倉庫が「魔法の冷蔵庫に変身した」と驚いたそうです。
カギとなった『スーパークーリングシステム』。鮮度を維持するその仕組みとは?
収穫した農作物は熟成を迎え、その後は劣化していき、老化・腐敗へと進んでいきます。(株)ティーアールネットサービスでは、二つの仕組みの導入で鮮度を保持しています。
鮮度保持の仕組みその1.野菜そのものの鮮度を保持する『スーパークーリングシステム』
『スーパークーリングシステム』は、青果物等の個体自体に影響を与え、劣化原因を解決することで鮮度を維持します。
野菜は収穫後も呼吸をすることで代謝がおこり劣化が進んでいきますが、『スーパークーリングシステム』は野菜や果実に電界を与えることで呼吸量を抑え、劣化を抑制します。
鮮度保持の仕組みその2.保存環境を整え鮮度を保持する『フレッシュエース』
スーパークーリングシステムと併せて渡邉社長が導入したのが『フレッシュエース』です。『フレッシュエース』は保存環境に影響を与え、鮮度保持を維持します。
①加湿機能による、劣化の抑制
作物は収穫した直後から蒸散によって水分が失われていきます。『フレッシュエース』で加湿を行うことで、いつまでもみずみずしく保つことができます。
②エチレン分解による、劣化の抑制
野菜や果物は熟成する過程でエチレンガスを発生させ、このガスが劣化の原因ともなります。『フレッシュエース』は、これを効率的に除去することで鮮度を維持することができます。
③除菌・消臭による、劣化の抑制
『フレッシュエース』は、光触媒によって除菌・消臭を行い、細菌の増殖を抑え、徹底的に劣化の原因を抑えていきます。
二つを併用することで鮮度をより維持することができるようになったのです。
さらに『スーパークーリングシステム』は、そのコンパクトさも大きな特徴です。壁に薄いパネルを貼るだけで電界環境が作られるため、既存の倉庫でも広さを確保したまま設置することができます。
肝心の鮮度はいかに…?
では、その鮮度保持システムの効果はどのくらいのものなのでしょうか。
収穫後、一定期間寝かせることで糖化が進んで甘くなるジャガイモですが、保管期間が長くなると問題になってくるのが「芽」です。こちらの倉庫では、『スーパークーリングシステム』を導入してから芽が全く出なくなったそうで、さらに食味も変わったといいます。
『スーパークーリングシステム』のある倉庫で保管したものは見た目もきれいなままで、糖化のバランスもよく、ホクホクとした食感も損なわれません。むしろ収穫したばかりよりもおいしくなっているといわれることも多いそうです。
『スーパークーリングシステム』による鮮度保持で生産者の思いを食卓に並べたい
物流業界には「コールドチェーン」という言葉があります。生産者から消費者に届くまで、低温物流で所定の温度を保ったまま流通させることですが、保管する環境によって実現できていない会社があるのも事実でした。『スーパークーリングシステム』を導入したセンター(倉庫)とコンテナは、物流に「新たな付加価値」をつけたといえます。
「売り上げだけを考えれば、物流は鮮度にこだわるよりも回転が早い方が利益は上がります。しかし、フードロスやSDGsの観点から考えると、劣化させずに消費できる『スーパークーリングシステム』は時代にあった導入でした。」と渡邉社長は振り返ります。
さらに倉庫で『スーパークーリングシステム』の効果を実感し、トラックやコンテナにも設置しました。これにより、生産者が畑で収穫した作物をそのままの鮮度で運び、消費者の元に届けられるようになったといいます。
さらに、渡邉社長はこの鮮度保持ができる仕組みを生かして「季節商材の販路拡大も手がけるようになったそう。お正月やクリスマスなどに必ず需要の増える食材を、前もって倉庫に保管しておくことで、安定した量・品質を消費者に届けられるようになりました。
物流の仕組みを変えた(株)ティーアール・ネットサービス。今後は海外への販路拡大も視野に入れているといいます。今や北海道は世界中が知る農産物の一大産地。そこで収穫された新鮮な野菜を食べてほしいという願いはあったものの、やはり物流にかかる日数がネックとなっていました。
しかし、『スーパークーリングシステム』を導入したコンテナを使えば、海外への輸送中も劣化を抑制して出荷することができます。
新たな武器を手に、「北海道の素晴らしい食材を日本はもちろん、世界の人に知ってもらいたい」という(株)ティーアール・ネットサービスの挑戦は続きます。
《取材先》
株式会社ティーアール・ネットサービス
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