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見ごろ迎える大輪。循環型農業に取り組む遠藤ファームがヒマワリ迷路を始めたワケ

見ごろ迎える大輪。循環型農業に取り組む遠藤ファームがヒマワリ迷路を始めたワケ

群馬県との県境にある埼玉県熊谷市のヒマワリ迷路が、SNSの“映え”スポットやデートスポットとして注目を集めている。運営するのは、20年以上にわたってネギをメインに栽培してきた遠藤ファーム株式会社だ。化学肥料を一切使わない循環型農業を手掛ける中で着想したという、ヒマワリ迷路の誕生秘話を聞いた。

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循環型農業を実践する中で生まれた、圧巻のヒマワリ畑

JR熊谷駅から車を走らせること30分。旧熊谷市立小島中学校近くに達すると、広大な畑一面に咲き誇るヒマワリたちが取材班を出迎えてくれた。
計16カ所にもまたがる計約6ヘクタールのヒマワリ畑には、順次畑を変えのべ約120万本のヒマワリが顔をのぞかせる。畑の中は迷路状の通路になっており、誰もがいつでも無料で出入りできるというから驚きだ(商用目的での利用は要事前登録制有料)。

このヒマワリ迷路には、毎年のようにテレビ局などが取材に訪れるといい、映画やミュージックビデオのロケ地にもなっている。Instagram(インスタグラム)では「#遠藤ファーム」のハッシュタグとともに、来場者が畑で撮った写真であふれるなど、首都圏でも有数の“映え”スポットとして知られている。

「私は農業をするうえで、未来の子供たちに顧客設定をしています。未来の子供たちにとって農業は必要なのか、それはどんな農業なのか常に考え、導きだした答えの一つが、未来の子供たちには農業に触れる場所が必要だということ。そんな場所を作りたかったんです」

こう話してくれたのは、遠藤ファーム代表取締役生産者の遠藤友章(えんどう・ともあき)さんだ。

遠藤さん

遠藤友章さん

遠藤ファームの歴史は、会社員で兼業農家だった友章さんの父がネギ栽培を始めたのが起源。
幼少期から農作業を手伝ってきたという友章さんは塾講師などを経て、15年前に就農。自身に経営が代がわりした2019年に法人化を果たした。
現在、手掛ける野菜は白ネギや大和芋など50品目以上。化学肥料を一切使わずに、家畜ふん堆肥(たいひ)や自家製の緑肥を中心とした有機質肥料で栽培することにこだわっている。

友章さんが就農してから新たに取り組み始めたのが、当時まだ世間でのなじみが薄かった「SDGs」を意識した循環型農業。
同社が手掛ける農業の構図はこうだ。

まず、同じ作物を連作することで土中の養分欠乏などが生じる連作障害を避けようと、収穫が終わったネギや大和芋の畑に菜の花やクローバー、ヒマワリの種をまく。同時に蜂を飼い、畑に咲いた花から蜂蜜を採取する。蜂蜜の採取が終わったら、ヒマワリなどの花草は緑肥化し、再び野菜を植える際に畑へ戻すというサイクルを実践している。

商品

ボタニカルな雰囲気漂う直営販売所(画像提供:遠藤ファーム)

採取した蜂蜜を使った6次化も自社で手掛ける。担当するのは、妻で取締役社長の遠藤政子(えんどう・まさこ)さんだ。商品ラインナップはシャンプーやヒマワリオイルなど豊富。これらの商品が並ぶ直営の販売所「Maahoney(マーハニーショップ)」もボタニカルな雰囲気が漂い、販売員としての経験を持つ政子さんならではのこだわりが随所に垣間見える。

商品

クローバーや菜の花、ヒマワリの蜂蜜を使った商品ラインナップ

農業から養蜂へも派生し、自ら育てた草花は農業のために土にかえる。肥沃で豊かな土によって、新たな命が芽吹く-。ヒマワリ迷路は、そんな自然の循環から生まれた「未来の子供たち」の憩いの場というわけだ。

根底に地方創生への思い

花を咲かせた畑を観光スポットとして無料開放し始めたのは、新型コロナが猛威を振るった2020年のこと。
子供が通う保育園や近隣の幼稚園ではコロナ自粛で遠足に行けない、卒園アルバムに載せる写真が少ないといった声が相次いだ。そんな中、「農園のヒマワリ畑を迷路にして開放し、畑いっぱいに駆け回る子供たちの笑顔を写真に収めてもらいたい」(政子さん)と無料開放に踏み切った。

ヒマワリ迷路のみならず、駐車場までをも無料で開放している理由は、できるだけ多くの人に地域へ足を運んでほしいと思ったから。
友章さんは「まずは現地に来てもらい、遠藤ファームやヒマワリ迷路に親しんでわくわくしてもらいながら、SGDsや循環型農業に触れ合える場所にしたかったんです」と説明する。

昨年11月と今年7月には、夜間のひまわり畑でイルミネーションを実施した。「夜のコンテンツを作ることが地方創生につながる」(友章さん)と考えたからだ。

「イルミネーションを目当てに、夜にこの地域を訪れてくれた人達が、近隣の飲食店や宿泊施設も利用するという流れを作りたい。自分たちだけがもうかるのではなく、地域全体を盛り上げたいという思いが根底にあります」と友章さん。

イルミネーション

昨年11月のイルミネーションでは、有料開催ながら一晩で350人以上が来場。今年7月は2日間の開催で、延べ400人がヒマワリ畑を訪れた。
ヒマワリ畑の評判はSNSの口コミなどで広がっていき、農園を訪れた観光客らが販売所でシャンプーやヒマワリオイル、はちみつドリンクなどの商品を買い求めるという流れができている。収益の軸を生産物や加工品のみに絞っている遠藤ファームにとっては、ヒマワリ畑の存在がこの上ない広告塔になっているという。

観光客や家族連れに畑へ来てもらい、農場や自社の取り組みを知ってもらう機会をつくる。蜂蜜を使った商品の魅力に触れてもらい、ファンになってもらう。来場者の口コミや写真の投稿が新たな訪問者を呼び、地域全体が潤う。そんな農家と消費者とのつながりの循環も見えた取材だった。

イルミネーション

取材協力

遠藤ファーム株式会社
https://www.endo-farm.com

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