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【ケムシの駆除・予防】もう刺されない! 安全な対処法や予防策を解説

【ケムシの駆除・予防】もう刺されない! 安全な対処法や予防策を解説

農作物や人に悪影響を与えるケムシに、困っている人は多いのではないでしょうか? ケムシは、一度大量発生してしまうと手がつけられなくなり、農作物や人に大きな悪影響を与えてしまいます。最悪の事態を避けるためにも、ケムシの生態や特徴を正しく把握し、未然に大量発生を防ぐための対策を講じることが大切です。万が一、ケムシが発生してしまったとしても、落ち着いて適切に対処することで、その後の大量発生を防ぐことができます。
本記事では、悩みの種であるケムシに関する生態や特徴、具体的な予防策・駆除方法、刺された時の対処法などに関して、網羅的に解説しています。
最後まで読んでいただくことで、ケムシとの上手な付き合い方が理解できるはずです。

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ケムシの基本知識

チャドクガ幼虫

チャドクガ幼虫

私たちの身近に存在するケムシ。その特徴や生態をどれだけの人が知っているでしょうか。ここでは、ケムシについての基本的な情報をわかりやすく解説します。

ケムシとは?

ケムシとは?

ケムシは、日本全国で見られる昆虫の一つです。チョウ目昆虫のチョウやガの幼虫の中で、体に目立って毛が多いものを「ケムシ」と呼びます。

一方、毛の少ないものは「イモムシ」と呼ばれます。ケムシの中には人を刺す有毒な種類も存在しますが、実はその数は全体のわずか2%程度です。大部分のケムシは無毒で、人には害を及ぼしません。

ケムシの生態・特徴

ケムシは、日本のさまざまな場所で見られます。家の庭などの身近な場所にも、人を刺すケムシや刺さないケムシが生息しています。

刺すケムシ

刺さないケムシ

・チャドクガ(ツバキ、サザンカ、チャ)
・ドクガ(サクラ、ウメ、バラ、柿、ツツジなど多くの樹木と草花)
・イラガ(サクラ、ウメ、ケヤキ、柿など多くの樹木)
・クロシタアオイラガ(サクラ、ウメ、ケヤキ、柿など多くの樹木)
・マツカレハ(アカマツ、クロマツ、ヒマラヤシーダなどマツ類)
・マイマイガ(サクラ、クヌギ、クリ、ニレなど)
・アメリカシロヒトリ(サクラ、ヤナギ、柿、プラタナスなど)
・クスサン(クリ、クヌギ、コナラ、イチョウなど)
・オビカレハ(サクラ、ウメ、モモ、ヤナギなど)

( )内はつきやすい植物。
出典:公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会「庭の刺す毛虫・刺さない毛虫」

これらのケムシは、それぞれ異なる植物を好んで食べることから、生息場所や食性も異なります。

ケムシとイモムシの違い

ケムシとイモムシの違い

ケムシとイモムシは、どちらもチョウやガの幼虫を指しますが、その見た目や特性には違いがあります。ケムシは、体に目立って毛が多いことで知られています。

一方、イモムシは毛が少なく、より滑らかな体をしているのが大きな特徴です。このような外見の違いから、それぞれの呼び名がつけられました。

ケムシの種類と特徴

ケムシの種類と特徴

私たちの周りにはさまざまなケムシが生息しています。その中には、人にとって有害なものから無害で美しいものまで、さまざまな種類があります。

ここでは、ケムシの中でも特に注目すべき種類と、その特徴について詳しく解説します。

有毒なケムシとその特徴

代表的な有毒なケムシ

・チャドクガ(ツバキ、サザンカ、チャ)
・ドクガ(サクラ、ウメ、バラ、柿、ツツジなど多くの樹木と草花)
・イラガ(サクラ、ウメ、ケヤキ、柿など多くの樹木)
・クロシタアオイラガ(サクラ、ウメ、ケヤキ、柿など多くの樹木)
・マツカレハ(アカマツ、クロマツ、ヒマラヤシーダなどマツ類)

( )内はつきやすい植物。
出典:公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会「庭の刺す毛虫・刺さない毛虫」

ケムシの中には、人を刺すことで皮膚炎やアレルギー反応を引き起こす、有毒な種類が存在します。これらのケムシは、特に子供やペットが触れることのないよう注意が必要です。

有毒なケムシの中でも特に知られているのが「チャドクガ」で、触れると強いかゆみや発疹が出ることがあります。

チャドクガ

つきやすい樹木

特徴

発生時期

刺された時の症状

・ツバキ
・サザンカ
・チャ
・体は黒と黄色
・頭部は黄色
・4〜6月
・8〜10月
後からヒリヒリした痛みとかゆみ

チャドクガは本州以南に分布しています。ツバキやサザンカの葉に多く見られ、幼虫は集団で生活し、成長すると体長は約25ミリになります。

人を刺すのは長い毛ではなく、体中にある約50万本の微細な毒針毛です。毒針毛は幼虫が脱皮した後の皮にも残るため、冬の剪定(せんてい)時にも注意が必要です。

ドクガ

ドクガ(代替え)

つきやすい樹木・草花

特徴

発生時期

刺された時の症状

・サクラ
・ツツジ
・ウメ
・バラ
・柿
など多くの樹木と草花
・体は黒
・側面はオレンジ色
6〜7月 後からヒリヒリした痛みとかゆみ

ドクガ科のガは日本全国に分布しています。幼虫の体長は成長すると約25ミリになり、有毒な種類では毒針毛が600万本もあります。

ドクガ科のケムシは派手な体色や特徴的な毛束を持ち、一部の種類だけが人を刺します。

ただ、毒性がまだ確認されていない種類もあり、例として、ヒメシロモンドクガは刺さないとされていますが、長期飼育するとアレルギー症状が出ることがあったという報告もあります。

ドクガ科のケムシには、安全のために触れない方がよいでしょう。

イラガ

つきやすい樹木

特徴

発生時期

刺された時の症状

・サクラ
・ウメ
・ケヤキ
・柿
など多くの樹木
・体は黄緑色に褐色の斑点模様
・トゲのある多くの突起を持つ
7〜10月 電撃が走ったような痛み

ドクガは「かゆいケムシ」の代表で、イラガは「痛いケムシ」の代表と言っても過言ではないでしょう。

イラガの幼虫に刺されると非常に強い痛みが走り、その痛みは忘れられないほどですが、回復は比較的早いです。

刺すのは幼虫のみで成虫は無毒。幼虫は柿やサクラ、ウメなどの樹木の葉を好んで食べます。

人を刺さないケムシの種類

代表的な刺さないケムシ(毒なし)

・マイマイガ(サクラ、クヌギ、クリ、ニレなど)
・アメリカシロヒトリ(サクラ、ヤナギ、柿、プラタナスなど)
・クスサン(クリ、クヌギ、コナラ、イチョウなど)
・オビカレハ(サクラ、ウメ、モモ、ヤナギなど)

( )内はつきやすい植物。
出典:公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会「庭の刺す毛虫・刺さない毛虫」

ケムシの中には、人に害を及ぼさない種類も多く存在します。これらのケムシは、触れても安全で、むしろその美しい姿や生態を楽しむことも可能です。

マイマイガ

マイマイガ

マイマイガ幼虫

つきやすい樹木

特徴

発生時期

・サクラ
・クヌギ
・クリ
・ニレ など
・背中に赤黒い斑点が並んでいる
・体は多くの毛に覆われている
4〜7月

マイマイガは日本全国に生息しており、成長すると体長は60ミリに達しますが、毒性はありません。ただし、生まれて間もない幼虫には、毒性がある可能性があるため、触れないよう注意してください。

春から初夏にかけての幼虫は糸でぶら下がる特性があり、ブランコケムシとも呼ばれています。多種の樹木の葉を食べることができ、北アメリカでは森林の厄介な害虫として知られています。

アメリカシロヒトリ

つきやすい樹木

特徴

発生時期

・サクラ
・ヤナギ
・柿
・プラタナス など
・体に毛が多く、遠目には白く見える
・側面には黒い斑点がある
5〜9月

アメリカシロヒトリは本州・四国・九州に生息し、戦後にアメリカから渡来した侵入種です。年に2~3回発生し、5~9月に幼虫が出現します。

幼虫は巣を作り集団で生活することから、有毒のチャドクガと間違われることが多いですが、アメリカシロヒトリは無毒です。

しかし、多くの樹木の葉を食べることで知られており、都市の観賞樹の代表的な害虫の一つです。

クスサン

クスサンの幼虫

つきやすい樹木

特徴

発生時期

・クリ
・クヌギ
・コナラ
・イチョウなど
全身が白く長い毛で覆われている 4〜7月

クスサンは日本全国に生息するガで、幼虫は体長80ミリと大型です。成長した幼虫はその白く長い毛から、別名シラガタロウとして知られています。

年に1回、4~7月に幼虫が出現します。初めは集団で生活する黒灰色の幼虫が、成長とともに長い毛に覆われ、分散して葉を食べるようになり、独特のマユを作りサナギになります。

主にクリの葉を食べることから、クリケムシとも呼ばれますが、他の樹木も食害するため注意が必要です。触れると痛い毛を持つものの、毒は含まれていません。

ケムシの発生と予防

ケムシは、特定の時期や環境で急増することがあります。家の庭や近くの公園でケムシに遭遇することは、多くの人にとってはあまり心地よい経験ではないでしょう。

ここでは、ケムシがなぜ増えるのかや、増殖を予防するための方法について詳しく解説します。

ケムシが発生しやすい時期

ケムシが発生しやすい時期

ケムシの発生時期は種類により異なりますが、春から夏がピークです(チャドクガが4~6月と8~10月、イラガ類が7~11月)。ケムシの発生の背景には、ガが好む植物や気温など、卵を産みつけるための環境があります。

ガは鳥やスズメバチから隠れてまとめて産卵し、ふ化した幼虫は集団で生活することが多いため、大量発生しやすくなります。

アウトドアが楽しめるこの時期、ケムシが発生しやすい植物の近くは避け、公園などでの行動はケムシの存在を意識して行うと、被害を避けることができるでしょう。

ケムシが発生しやすい植物

ケムシが発生しやすい植物と、発生の特徴や対策を一部紹介します。

ケムシが発生しやすい植物と特徴・対策

植物名

特徴と対策

サクラ

●春の花見シーズンにはケムシは少ない。
●花が終わると、卵がふ化し大量発生する。
●葉の裏に卵が付くので、定期的にチェックし、卵があれば葉ごと切り取る。

ツツジ

●夏に産みつけられた卵が冬を越して春に大発生する。
●卵がふ化すると葉が食べられ、色が変わる。
●葉の裏に卵が付くので、定期的にチェックし、卵があれば葉ごと切り取る。

マツ類

●「アカマツ」「クロマツ」「カラマツ」などのマツ類の葉をケムシが好む。
●葉や枝に卵が付くので、定期的にチェックし、卵があれば枝葉ごと切り取る。幹にワラを巻き、越冬する幼虫をワラごと焼く方法も有効。

ケムシの被害を避けるためには、定期的なチェックと早めの対策が大切です。

ケムシの予防策とその方法

ケムシの予防策とその方法

ケムシの発生を予防するためには、ケムシが好む植物の周りを清潔に保つことが大切です。落ち葉や枯れた枝を定期的に取り除くことで、ケムシのすみかを減少させることができます。また、適切な庭木の剪定なども効果的です。

ケムシの好む環境

ケムシは日当たりや風通しの悪い場所を好む。

庭木の剪定を行うメリット

●適度な剪定で、ケムシが好む環境を減らすことができる。
●剪定により、葉や枝が減少し、ケムシの存在に早く気付くことができる。
●初期段階では葉の裏に集まっていることが多いため、駆除が容易。
●早期発見により、木全体に広がることを防げる。

庭木の剪定を行うタイミング

●ケムシは4〜10月ごろにかけて発生する。
●3月頃に一度、剪定を行うことを推奨。

適切な剪定で、ケムシの発生を予防し、早期発見を心がけましょう。

ケムシの駆除と対策

ケムシの駆除と対策

特に子供やペットがいる家庭では、ケムシの駆除は避けられない課題となることでしょう。

ここでは、ケムシを効果的に駆除する方法や、その際の注意点について詳しく解説します。

ケムシに有効な殺虫剤

ケムシに有効な殺虫剤

ケムシの駆除には、市販の殺虫剤が効果的です。特に、ケムシ専用の殺虫剤は、ケムシの生態や特性を考慮して作られているため、高い効果が期待できます。

【有効薬剤の例】

●MY PLANTS 虫からやさしく守るミスト
●オルチニン乳剤
●スミソン乳剤
●パイべニカVスプレー
●ベニカAスプレー
●ベニカJスプレー
●ベニカS乳剤 など

植物によって有効な薬剤は異なります。使用する際は、製品の説明書をよく読み、指示通りに散布してください。また、使用後は手をよく洗い、子供やペットが触れない場所に保管するようにしましょう。

家にあるものでの駆除方法

家にあるものでの駆除方法

家にあるものでケムシを駆除する方法として、熱湯をかけるやり方があります。ケムシが集まっている場所に熱湯をかけることで、手軽に駆除できます。

ケムシを熱湯で駆除する手順は、以下の通りです。

  1. バケツに50℃以上のお湯を入れます。
  2. ひしゃくやおたまを使って、直接ケムシにお湯をかけ、死滅させます。
  3. 柄の長いトングなどを使って死骸をつかみ、二重にしたポリ袋に入れます。
    ※毒針に触れないように注意してください。

特にチャドクガの毒は、50℃以上の熱で無毒化されるため、この方法が効果的です。ケムシの種類によっては毒の成分が解明されないものもいますが、熱湯をかけることはある程度有効だといえるでしょう。

ただし、熱湯を使用する際はケムシに近づく必要があり、ケムシに触れるリスクが高まり毒針毛が飛散する場合もあるので、注意が必要です。

また、お酢と水を1対3の割合で混ぜてスプレーしてかける方法も効果的です。万が一、植物に原液のお酢をかけると、植物自体にダメージを与えるため、注意してください。

ケムシの駆除の注意点と効果的なタイミング

ケムシの駆除の注意点と効果的なタイミング

ケムシを駆除する際の最も効果的なタイミングは、発生初期の段階です。その段階でケムシを駆除できれば、その後の大量発生を防ぐことができます。

また、ケムシの卵塊を見つけた場合は、速やかに取り除くようにしましょう。卵塊の除去方法としては、葉ごと切り取るか、ティッシュやガムテープなどを使用して、卵塊を取り除くやり方が効果的です。

駆除にあたり、必要な道具としては、ゴム手袋や長袖の服、帽子、防護メガネ、マスクなどが挙げられます。防護服やグッズをしっかりと着用することで、ケムシの毛や毒による刺激を防ぐことができます。

また、ケムシを直接取り扱う場合は、ピンセットや割り箸などを使用すると、安全に駆除することができるでしょう。

ケムシに関する健康リスクと安全対策

ケムシは、触れることで健康被害を受けることもあります。特に、子供や敏感な肌の人は注意が必要です。ここでは、ケムシに関連する健康リスクや、それに対する安全対策について詳しく解説します。

ケムシに刺された時の対処法

ケムシに刺されると、かゆみや赤み、腫れなどの症状が表れることがあります。まずは、ガムテープや粘着テープなどを活用して付着した毒毛を取り除き、流水で勢いよく洗い流しましょう。

その後、後述のようなステロイドや抗ヒスタミンの外用薬があれば塗っておくのもよいでしょう。症状が治まらない場合は、冷やして症状を和らげるのがおすすめです。

万が一、症状が強い場合や、アレルギー反応が心配される場合は、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。

ケムシによる被害症状とその対策

ケムシによる被害症状とその対策

写真はイメージです

ケムシによる被害症状は、刺された部位のかゆみや赤み、腫れだけでなく、離れた部位の発疹や、吐き気、めまい、頭痛などの症状が表れることもあります。

これらの症状が表れた場合、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。

また、ケムシに近づく際は、長袖の服や手袋を着用するなどの予防策を取ることで、被害を最小限に抑えることができます。

特に、ケムシが大量発生する春時期などは、ケムシが多い場所を避けるなどの配慮も必要です。

有効薬剤の紹介

有効薬剤の紹介

ケムシに刺された際の症状を和らげるための薬剤として、市販のかゆみ止めクリームやジェルがおすすめです。

子供向けの市販薬
(ステロイド配合塗り薬)

大人向けの市販薬
(ステロイド配合塗り薬)

・液体ムヒS2a
・コートf MD軟膏
・液体ムヒアルファEX
・フルコートf
・リンデロンVsクリーム/軟膏

これらの薬剤には、かゆみを和らげる成分が含まれており、刺された部位に塗布することで、症状の緩和が期待できます。

また、アレルギー反応が強い場合は、医師の処方によるステロイド薬や抗ヒスタミン薬の内服が必要となることもあります。

ケムシとの上手な付き合い方を学び適切に対処しよう

ケムシは私たちの周りに常に存在し、健康被害のほか、身近な植物や農作物などへの悪影響が懸念されます。しかし、ケムシの生態や特性を理解し、適切な対処法を学ぶことで恐怖や誤解を避け、安全に共存できます。

ケムシの被害が気になっている人は、ぜひとも紹介した予防策や駆除方法を試してみてください。万が一、ケムシに刺された場合は、適切な処置を行うようにしましょう。

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