【対談・前編】行政×農家×企業の最強コラボで地域と農業を盛り上げる！ in上高地あずさ珈琲
株式会社KRフードサービスが運営する『上高地あずさ珈琲』は、石と天然木を使ったシックな内装が印象的。数あるカフェチェーンの中でも、長野産の食材にこだわったメニューをいただきながら、上高地のリゾートホテルにいるような雰囲気を堪能できるのが魅力です。独自の店づくりを支えているのは、自治体や農家さんとの信頼のネットワーク。関係者のみなさんに、出会いから取り組み、地域活性化への思いを語り合っていただきました。
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【企業】長濱 秀介さん
株式会社KRフードサービス 事業サポート本部 企画部。長野の農家様からリンゴやミルク、米などを直接仕入れ、長野尽くしのメニューを提供する『上高地あずさ珈琲』を運営。同店店舗で自治体と連携し、長野キャンペーンを実施するなど地元のPRにも力を入れる。
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【行政】荻原 誠信さん
長野県営業局。長野県長野市出身。地元農家、市町村と協力し、長野県の魅力発信や県産食材の提案を担当。
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【行政】渋澤 陽一さん
長野県飯綱町 企画課。長野県飯綱町出身。農政担当の頃より、農家の支援と長野県産品のPR活動、地域活性化に取り組む。
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【農家】フジワラ ルーツ ファーム 藤原 奈緒美さん
関東から長野県飯綱町に移住し、新規就農者として夫婦で「信州の環境にやさしい農産物」認証のリンゴを栽培。シードルフェス（町の小さな音楽フェス）を企画。
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長野→おいしそう→空気がきれい、から始まったプロジェクトとは
スペシャル対談の会場となったのは、兵庫県西宮市・ららぽーと甲子園内の『上高地あずさ珈琲』。お店のエントランスにはリンゴジュースにリンゴ蜂蜜などの物販コーナーがあり、長野を旅しているようで自然と気分が上がります。
『上高地あずさ珈琲』のコンセプトは、上質な大人食堂カフェ。席ごとに違うイスやテーブル、ファブリックで、上高地の山岳リゾートホテルをイメージしたという店内は、ショッピングセンターのざわめきから一歩奥まり、何時間でものんびりしたくなるほどの心地よさです。
上高地と名乗るからには、代表が信州ご出身など、相当な思い入れがあったのでしょうか。
いえ、実は初めは縁もゆかりもありませんでした。当社も大阪に本社を構えています。ただ、前社長が毎年、上高地に旅行に行っており、いつも「上高地は何度訪れてもいい場所だ！」と聞いていたのをきっかけに本事業がスタートしました。
長濱さん
それで店名が上高地に。よほど気に入っておられたのですね。
もちろん愛着は感じていましたが、深い意図があったというより、長野→おいしそう→空気がきれいという連想からの見切り発車でした。
当時はカフェブームで、さまざまなブランドが登場していた頃。以前から運営している『かごの屋』は関西では商圏の限界が見え始めておりましたし、うちもカフェをやってみようということで「それなら長野、上高地だ！」と。
長濱さん
カフェ業界では後発組でしょうか？
後発だからこそ、特徴づけをしたかったんです。当社の強みは、セントラルキッチン方式を採用せず、各店舗でプロの料理人が腕を振るっていること。この強みをカフェでも生かし、長野産の素材を使った出来立ての料理を食べていただこうと考えました。
長濱さん
地元食材をどう仕入れたらよい？→ 早速、情報を求めて長野県大阪事務所へ
お店で調理ができるならメニューの幅も広がり、自信を持って提供できますよね。
では、食材をどんどん仕入れて特徴ある店をつくられたのですね。
実は……最初に仕入れることができたのは地元食材といっても牛乳とリンゴくらい。それも加工リンゴでして。長野にこだわっていると言いながら、本格的ではありませんでした。（汗）
食材をどう仕入れたらいいのか、ルートもノウハウもなかったんです！
長濱さん
荻原さん
そこで、長野県大阪事務所を訪ねて来られたのですね。
とにかくどうしたらいいかわからず、食材を探し求めて県の事務所にたどり着いた、という感じです。何か情報はないか、教えてもらえるかな、と。
長濱さん
荻原さんに『上高地あずさ珈琲』を立ち上げた経緯やコンセプト、長野産の食材を使った料理を提供したいとお話したところ、「おもしろい店だね。いいね！」と好感触。「個性的な農家さんを知っているので、紹介するよ」とも言っていただきました。当時、県事務所に通っていたのは私とは別の担当者ですが、この一言は大いに励みになったようです。
長濱さん
荻原さん
県内の特に若手の農家さんの中には、「こだわりの農産物を自分で売りたい」という方が出てきていました。しかし、どうやって消費者に届けたらいいのか、特に商流・物流などがわからず、私自身もモヤモヤしていたんです。以前、小売店などに提案したりしましたが、「大量・安定供給できなければだめ」と門前払いされてしまったり……
スーパーに売り込み……。県がそこまでやってくださるんですか!?
荻原さん
商流・物流、さらに観光を含め総合的に長野県を売り込むため、大手交通事業者に研修派遣してもらい、色々勉強させていただきました。その後、「全国にネットワークを広げたい」と思い、県大阪事務所への異動を希望しました。生まれも育ちも長野で、一歩も外に出たことのない私にとって初めての県外勤務となりました。
そのタイミングで荻原さんと『上高地あずさ珈琲』が出会った。なんだか運命的ですね。
「長濱さん、来たで！ 世界が変わるかもしれん！」ついに門出の時来たり?!
荻原さんに「すばらしい取り組みをするお店ですね」と言われた担当者はよほどうれしかったのでしょう。事務所を出た後すぐ、社内にいた私に電話をかけてきました。「長濱さん……来たで!! 世界が変わるかもしれん！」と、受話器の向こうで興奮気味に話していたのを覚えています。（笑）
長濱さん
荻原さん
一民間企業に肩入れするのは役所としてどうかと悩みました。前例もありませんし、正直、葛藤はありました。ですが、せっかくのご縁ですし、こんな機会はまたとない。これをモデルに広まってくれればと思い、またなんといっても長野の農産物はおいしいし、魅力がたくさんある。リンゴはもちろん、形は悪くても味はいい。そんな農産物をあずさ珈琲さんなら、表現していただけると思い、県内視察を計画しました。
長濱さん
荻原さん
とくに好評だったのがブラムリーというものすごく酸っぱいリンゴ。紅玉よりもっともっと酸っぱい、しいて言えば炭酸ガムみたいな味のするリンゴです。私は個人的には酸っぱいリンゴが苦手なのですが（笑）、スライスしてグラニュー糖をかけてレンジで温めると、甘みをひきたたせる酸味となりアップルパイにとても合う材料となります。
こんなに酸っぱいリンゴが、こんなにおいしいの?! リンゴの世界は奥深い
その甘酸っぱいブラムリーを飯綱町の直売所でごちそうしてくださって。参加した当社の担当者はおいしさに感動していました。
長濱さん
荻原さん
「このリンゴ、うちのアップルパイに使おう」と、お店のメニューに即採用されるのを見て、すごくうれしかったです。また、こんなに素早い対応をしていただき、びっくりしました。
それから「リンゴってこんなに品種があるの？」と驚きました。味もいろいろ。9月ごろから収穫が始まり、1～2週間単位でどんどん品種が置き換わっていく。「おもしろい。関西の人にリンゴの違いを知ってもらおう」と思うとワクワクしちゃって。
ハイシーズンになれば「今週のスムージーはシナノスイート、来週はサンふじ」と違いを楽しんでもらえるなあ、とかイメージがどんどん膨らんだ。「長野のリンゴを使ってます」だけでなく、品種にもこだわっていることをアピールできるので、お店の魅力づくりにもなります。
長濱さん
荻原さん
私もワクワクしてましたよ。あずさ珈琲さんのお店を見て「このお店に何が合うんだろう？」とか考えると楽しくてね。
農業の活性化のためには技術指導も大事だし、地元産品を情報発信・提案することも大事。でもそれだけでなく、こうして実際にお店を見て、プロデューサー的な発想で企画しないと新しい動きになっていかないんだなと思いました。
後編へ
県内視察で飯綱町を訪れた『上高地あずさ珈琲』の面々。おいしいリンゴをつくっている農家さんや、飯綱町の担当者、農業振興公社の方々など、そこではまた新たな出会いが待っていました。
その出会いがどのように発展していったのか。【対談・後編】で詳しくお伝えします。乞うご期待！
【取材協力】
上高地あずさ珈琲 ららぽーと甲子園店
〒663-8178
兵庫県西宮市甲子園八番町1-100 ららぽーと甲子園2F
TEL：0798-48-6370
フジワラ ルーツ ファーム
〒389-1211
長野県飯綱町大字牟礼725-1
TEL&FAX 026-217-5714
fujiwararootsfarm@gmail.com
