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事業承継のスタートは「何を」「誰に」引き継ぐかを考えること 事業承継生産者交流会【後編】

事業承継のスタートは「何を」「誰に」引き継ぐかを考えること 事業承継生産者交流会【後編】

親子間事業承継を経験した5名の生産者に、本音で事業承継あるあるを語ってもらった前編。ただ、事業承継と一言でいっても「何を」「誰に」引き継ぐのか、明確になっていない人も多いのではないでしょうか。後編では、引き続き事業承継士・伊東悠太郎さんによるファシリテーションのもと、生産者が「何を」「誰に」承継したいと考えているか、語ってもらいました。

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誰に事業承継するか

伊東:みなさんは誰に事業承継をしたいと考えていますか。

竹本:古い考えと言われるかもしれませんが、家族に継いでほしいです。娘と息子がいますが、どちらかに継いで欲しいですね。直接伝えてはいませんが、顔に書いてあると思います(笑)

石井:何か目的があってこの事業をやるなら、家族でも第三者でもいいと思っています。

鈴木(厚):正直、今の体制だと親族じゃないと無理だろうと思っています。理由は株を買えないから。負債やリスクも含めて背負う覚悟がある人にしかやってもらえないことを前提にすると、親族になると思います。

鈴木(義):自分も家族に継承していきたいと思っています。父や祖父が受け継いできた仕事を、自分のところで途切れさせたくないのが一番大きいですね。

平出:自分はまだ完全には事業承継をしてなくて、これから株を買わなきゃいけません。株の話を親とするのはハードルが高いので、なんとなくしかしませんが、いざそれが自分の立場になった時、第三者に売る際にも一番いいのはMBO(マネジメント・バイアウト)なんですよね。ただ土地と切り離せない部分もあるので、難しいじゃないですか。先ほどの「何を継いでほしいのか」という話でもありますし、税金もかかるし。そこまでして承継するって何なんだろうと考えました。

伊東:経営規模が大きいと継ぐ、継がないの判断は難しくなっていくと思います。

平出:スタートアップ企業が会社を育てて大手に売るのは、一つの成功のステップじゃないですか。ただ農業の場合は時間軸が全然違うので、そういうスタイルは絶対取れないんですよね。家族承継が一番シンプルだけど、それでも大変な部分もあるし、家族に受け継ぐときも「何を承継させるか」から考えないと簡単に事業承継って言えないなと。

伊東:もし今、株価や税金などのお金の部分がクリアできたら、従業員にスムーズに会社を渡せますか。

平出:今現在はまだ無理ですね。見えないコストがあるじゃないですか。例えば借地があれば、親には貸してたけど子どもには貸さないっていう話になったり。そこを整理していかないといけないですね。

事業承継によくある悩み

鈴木(厚):よく「跡継ぎの問題は死んでみなきゃわかんない」と言われることもあるんですけど、それは悪い例だと思います。良い例は、うまくいくかどうかわからないけど、考えて準備した上で承継すること。そこで皆さんに聞きたいのは、承継にかけた時間について。私は20歳で就農して40歳で会社法人を立ち上げたので、20年間父親と一緒の時間を経て、完全に事業を引き継ぎました。みなさん何年ぐらいでしたか。

平出:私は20年ですね。親はもうリタイアしています。

竹本:僕は10年で社長が替わりました。おやじには今も作業に出てきてもらっています。

石井:僕も手伝いから入ったので、10年ぐらいです。

平出:若いうちが良いのは間違いないでしょうね。
39歳で承継した時、自分では早いと思っていたけれど、解決しなきゃいけないことが早めにクリアにできたのは良かった。これが49歳だったらエネルギーもなくて頭が回ってないだろうなという感覚はありますね。若い時の方がマルチタスクが出来るんですよね。

伊東:やっぱり並走期間は5年〜10年ですね。長すぎても短すぎてもダメ。それから、お父さんはあと5年だと思ってるけど、息子はあと3年だと思ってるとか、それぞれで並走期間のスパンがずれている場合、トップスピードをどこにするかがずれてしまいます。そこをすり合わせておく必要がありますね。スパンを決めれば、1年ごとに何をしていくべきかが見えてくると思います。

良い事業承継のためにやるべきこと

伊東:折角なのでこれを機に、2週間以内のアクションと何を継がせるかを皆さんで考えていきましょう。石井さん、いかがでしょう。

石井:僕はズバリ「事業承継の仕組みを考えて、見える化する」です。
事業承継ってどういう仕組みになってるのか、会社の理念や仕組みを一度見える化して、
そこから落とし込んでいければいいな、と。

平出:「仕事の深淵の面白さを伝える」です。
この交流会を経て、圧倒的に足りないのはここだなって気が付いて。多分この辺(仕事の面白さ)を伝えないことには、良い会社を作ってもダメだんじゃないかと思ったのと、これを一人で持っていなくなってしまうのはまずいなって思ったので、テーマにしました。

鈴木(義):「自分の出島への準備」と「会社のブランド」です。うちの会社(京丸園)のブランドを守りたいという気持ちでこのテーマにしました。

鈴木(厚):「バトンゾーンを楽しむ!」「息子と一緒にジョギングをする」。
僕があと5年なのか10年なのか、期限を決めて、その間に親子喧嘩じゃなく一緒に楽しみながら、「頼むぞ!」みたいな形でバトンを渡せたらいいなとイメ―ジしました。で、何をするかというと、息子が毎朝ジョギングをしているので一緒に走ろうかなと。多分僕は、ああしろ、こうしろ、と語っちゃうと思うんですよね。でも走ってると息切れして言えないんで(笑)。こうやって一緒に走ったよなっていうのが、最後に残るものなのかなというのをイメージして書きました。

竹本:「“見込みがある”と見られる」こと。
おそらくたけもと農場がこれまで続いてきたっていうのも、周りの人が評価をしてくれるところを守りきるっていうのがうちが大事にしたいことになるかなと思いますね。

伊東:僕が残したいものは「水稲種子」。先程、品目にこだわらないことも大事という話もありましたが、それを踏まえても絶対に残したいものだと思えました。なぜなら日本で発祥の地だから。
何百年前にこの土地で種もみを作り始めた誰かがいたからこそ今僕が発祥の地だと言えるのはすごく価値のあることだと思っています。
二つ目は屋号です。「〇代目伊東二太郎」っていうのが代々続いていて、これを続けていくのが僕の願い。
この2つを続けていくためには、皆さんが言ってくれたことが重要なんだなと思います。

<編集後記>
前後編にわたってお届けした事業継承生産者交流会。これからの農業をどう受け継いでいくか、生産者のリアルな本音や試行錯誤が語られました。
事業承継には、まずはコミュニケーションが必要不可欠。そして一つひとつやるべきことを明確にし、計画を立てることが重要です。自分たちに合った事業継承のやり方を考えてみてはどうでしょうか。

(編集協力:三坂輝プロダクション)

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