有機栽培で生産向上、ふしちゃんファームが実践するハウス管理とは
関東平野の農業適地であり、最先端の研究学園都市でもある茨城県つくば市。
この地で起業したふしちゃんこと伏田直弘さんは、有機栽培にこれからの農業の可能性を見出しました。
ハウス8棟でスタートし、就農2年目に有機JASの認証を取得しました。
現在、ハウス面積は16,000㎡、露地面積は2haに拡大し、小松菜、水菜、ロメインレタス、ほうれんそうを周年栽培。
社員7人、パート16人、特定技能実習生2人が従事しています。
有機野菜の高品質・適正価格・安定供給には、合理的な管理が重要だという伏田さん。
その実践の証として、食品安全、環境保全、労働安全などに取り組む農場に与えられるJGAP、ASIANGAP認証を取得。葉物野菜のアジア輸出を本格化させています。
化学肥料を使わない野菜を作るために伏田さんが技術を追求してきたのが、IPM(総合的病害虫・雑草管理)です。
「特にハウス栽培では、病気をもたらす虫や雑草を防ぐこと(物理的防除)が大事です」と言葉に力をこめる伏田さん。
ハウスの周囲に防草シートを張って地際からの虫の侵入をガードしたうえで、耐病性品種を使い(耕種的防除)、害虫が発生したら天敵を使うこと(生物的防除)、有機栽培に定められた農薬を使うこと(化学的防除)を意識しています。
こうした考えをもとに取り組んだのが、管理が難しいとされる有機いちごです。
「オーガニックのいちごはニーズがあるにもかかわらず、供給が足りていません。特に国産の有機いちご生果はほとんどなく、マーケットとしても魅力的です」
3年前からハウス3棟で試験栽培を手掛け、海外輸出を狙ってスケール化に乗り出したふしちゃんファーム。栽培品種には、果実が硬めで輸送に耐える「恋みのり」と「かおりの」を選びました。
育苗はせずに専門業者から有機苗を購入するのも合理化の一手段です。
ハウスの仕様にこだわり、大規模化は「換気」が成功のカギ
今シーズン、ふしちゃんファームでは、有機いちごのハウスを11棟に拡大して生産を本格化します。
段階的に棟数を増やし、最終的には60棟を目指しています。この計画を成功させるべく、ハウスに新たに導入したのが「自動換気」でした。
「いちごで防ぎたい病害虫は、スタート時の炭疽病とうどん粉病、灰色カビ病などです。これらの病気の主な発生原因は、土壌が十分に乾いていないか、乾きすぎていることです。我々ができる管理は、単純にハウスの開け閉めと、水を出す・止めること。それを自動化しました」と伏田さん。
換気の自動化に踏み切った背景には、伏田さんのハウスが有機栽培向けにカスタマイズされた独自のハウス仕様であることも関係しています。
有機栽培の実現に不可欠なIPM(総合的病害虫・雑草管理)の観点から、防虫ネットは0.4㎜のものが展張されていますが、目合いの細かいネットは害虫の侵入を防げる代わりに換気効率の低下という副作用が生じてしまいます。このため伏田さんのハウスではサイド換気に加え、慣行栽培では珍しい肩換気(巻上げによる肩部の換気)と屋根面の外部遮光といった昇温を抑制する設計を取り入れました。
しかしこのことが、内張カーテンまで含めると最大で8か所の開閉作業を伴うことにもなっています。
潅水の自動化はすでに導入済みでしたが、換気については小松菜などの葉物では朝ハウスを開け、夕方に閉めれば十分なので、手動でハウスの巻き上げをしていました。
しかし、いちごなどの苗ものにはきめ細やかな管理が必要です。適温適湿を保つために常時モニタリングして、頻繁にハウスを開閉する必要があり、小松菜と同時に管理するにはスタッフの手が回らなくなるのは明らかでした。
昨年は11月以降の温度管理が難しく、ハウスを閉めるタイミングが遅れて開花に若干影響したことからも、機会損失やヒューマンエラーを防ぐために「自動換気」の必要性を確信した伏田さん。導入したのは、『電動カンキット®N制御盤Lite-Solar(ライトソーラー)』(以下『Lite-Solar』)。
ソーラー電源対応の自動巻き上げ換気装置で、「ビニペット」などのハウス部材で信頼のある東都興業株式会社の製品です。
「いちごを作るのに高価なシステムはいりません。ハウス内の温度をモニタリングして、それに合わせて自動で開閉するシンプルな機能があれば収量は向上します」と伏田さん。
『Lite-Solar』の無駄のないシンプルな機能が思想にマッチしました。
太陽光発電で立地を選ばず、低コストで始めるスマート農業
「『Lite-Solar』は、シリーズの中でも4ステップで簡単に自動設定ができるシンプルさが売りの『電動カンキットNⓇ制御盤Lite』をベースに開発をしています」と話すのは、東都興業の勝田徹さん(同社営業本部・広報室、施設園芸技術指導士)です。
巻き上げの高さのリミットは、電動カンキット®駆動機のねじを回して簡単に調整が可能です。ここで設定した開口幅に合わせて、任意の設定温度を超えると自動的に巻き上げが始まり、目標を下回ると自動で巻き下がります。
電動カンキットN制御盤には、いくつかのモデルがあり、『Lite-Solar』ではソーラーパネルで駆動用の電力を自家発電できます。曇天・雨天時の発電量の不足が心配されますが、同社が北海道や秋田県で行った半年間の実証実験で、冬季の日照が少ない地域でも止まることなく駆動することが確認されています。
仮に雨天が続いても5日間分の巻き上げ換気の駆動電力を確保できます。
自動化に関して伏田さんは、「そもそも自動化できることを人の手でやるのはもったいない。農業は人にしかできないことをするべき。やり方はいろいろありますが、なるべくコストに反映させたくありません。『Lite-Solar』は電源工事が不要で、どこにでも設置でき、落雷などによる電源損失のリスクに備える選択肢です。それに、再生可能エネルギーで有機いちごを作るのはすごくいいですね」と話します。
「水田畑や中山間地などの電源のないところでも換気を自動化でき、スモールスタートでスマート農業を始めることができます」と勝田さん。
電動カンキットNおよび同制御盤による栽培管理技術は、農林水産省スマート農業技術カタログ(施設園芸)にも掲載されています。スマート農業に関する国や自治体の補助事業が適用されるケースもあります。
伏田さんは、低コストで人件費やエネルギーの課題に寄与する点も評価して、いちごのハウスの標準仕様とすることを検討しています。
目指すのは、有機いちごの栽培面積・出荷量で日本一。
試験栽培では直販サイトなどで人気を博して100〜200万円を売上げ、初年度は500〜600万円、来年度以降は2000万円以上を見込んでおり、将来的には1億円が目標。
まさにスモールスタートからのビッグビジネスになりそうです。
ふしちゃんファームで導入された自動換気については、東都興業株式会社にお問い合わせください。
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