売上高が30億円を超す農業グループ
インタビューした相手は、農業法人のサラダボウル(山梨県中央市)の代表、田中進(たなか・すすむ)さんだ。もともと金融機関で働いていたが、農業を志して脱サラし、2004年にサラダボウルを設立した。
国内の10カ所で農場を運営しており、グループ全体の売上高は2024年3月期で30億円強を見込んでいる。すでに有数の事業規模だが、グループはなお発展の途上。農場は今後も増える見通しだ。

田中進さん。後ろに見えるのは「富士のふもと農園」(静岡県小山町)
試行錯誤をさまざまに重ね、栽培や販売のノウハウを高めてきた。とくに力を入れているのが人材育成。「“人を育てられる人”を育てる」ための仕組みができたことが、農場の全国展開を可能にした。
このことは経験を積み、ノウハウを確立すれば、利益を確保しながら事業を大きくできることを示している。にもかかわらず、鳴り物入りで農業に参入し、黒字化のメドが立たずに撤退する企業がたくさんある。
両者の何が違うか。そのことを、サラダボウルグループの農場のうち、撤退した企業の後を継いだ2つの農場から考えてみたい。みやま坂上農園(福岡県みやま市)と、やぶファーム(兵庫県養父市)だ。
救済した農場は1年目から黒字
みやま坂上農園は、もともと地元のバス会社が2018年に立ち上げた農場だ。栽培面積が0.6ヘクタールのハウスで特殊な技術を使い、高糖度のミニトマトの栽培を目指していた。
ところが栽培がうまくいかず、わずかな期間で農場から手を引くことを決めた。田中さんによると、病害虫が大量に発生したことが原因という。
撤退が決まったことで、バス会社の農業参入を後押しした農業委員会など地元の関係者は施設が誰も使わないままになることを懸念した。そこで施設の新たな担い手として白羽の矢が立ったのが、サラダボウルだった。