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認定新規就農者になるための条件とは? 必要な手続きやメリットを解説

認定新規就農者になるための条件とは? 必要な手続きやメリットを解説

新規就農を目指す中で、「認定新規就農者制度」が気になっている人も多いのではないでしょうか。さまざまな支援が受けられておトクな制度と聞くけれど、申請や審査が大変そう……というイメージもあるかもしれません。
この記事では認定新規就農者になるために必要な条件や資格、どのような手続きが必要なのかを分かりやすく解説します。また、認定新規就農者になった場合のメリット、認定農業者との違いについてもご紹介します。

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認定新規就農者制度とは?

ブドウ畑

認定新規就農者とは、「新たに農業を始めるにあたって、自らの農業経営の目標などを記した『青年等就農計画』を作成し、市町村からその認定を受けた農業者」のことです。認定新規就農者になると、青年等就農資金の借り入れや、青年就農給付金の受給などができます。

認定新規就農者とは

出典:農林水産省「認定新規就農者制度について

農林水産省は、新規就農者を地域農業の担い手として育成するためには就農段階から農業経営の改善・発展段階まで一貫した支援が重要であるとして、市町村の認定を受けた認定新規就農者に対して、早期の経営安定に向けたメリット措置を集中的に実施するとしています。

認定新規就農者になるための条件

認定新規就農者制度の対象者になるには、新たに農業経営を営もうとする青年等で、以下のいずれかに当てはまる必要があります。

  1. 青年(原則18歳以上45歳未満)
  2. 効率的かつ安定的な農業経営を営むために活用できる知識・技能を有する者(65歳未満)
  3. (法人の場合は)上記の1または2の者が役員の過半数を占める

すでに農業経営を始めていても、就農して5年未満の場合は対象となります。
また、原則として18歳以上45歳未満の青年が対象ですが、条件2に当てはまれば65歳未満まで認定新規就農者になれます。農林水産省は「効率的かつ安定的な農業経営を営むために活用できる知識・技能を有する者(45歳以上65歳未満)」として下記1〜5のいずれかに当てはまる者と定義しています。

  1. 商工業その他の事業の経営管理に3年以上従事した者
  2. 商工業その他の事業の経営管理に関する研究又は指導、教育その他の役務の提供の事業に3年以上従事した者
  3. 農業又は農業に関連する事業に3年以上従事した者
  4. 農業に関する研究又は指導、教育その他の役務の提供の事業に3年以上従事した者
  5. 上記1〜4に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認められる者

そのため、これらの条件に当てはまる場合は、50歳以上であっても認定新規就農者になることができます。
ただし、いずれの場合でも、すでに認定農業者になっている場合は認定新規就農者になることはできません。

兼業農家でも認定新規就農者になれる

「専業農家であること」は認定の要件ではないので、兼業農家であっても認定新規就農者になれます。市町村基本構想で示された農業経営を目指す農家が認定の対象になるため、専業・兼業どちらの場合でも基本構想に沿った経営計画を策定する必要があります。
兼業農家になるための就農スクールも存在しており、首都圏で就農した60名のスクール卒業生のうち4名が認定新規就農者になった事例もあります。

認定新規就農者と認定農業者の違い

認定農業者とは

出典:農林水産省「認定農業者制度について

認定新規就農者と似た言葉に「認定農業者」があります。認定新規就農者が文字通り新規就農する人や就農から5年以内の農家が対象となるのに対し、認定農業者の対象は幅広く「その市町村の区域内において農業を営み、又は営もうとする者」とされています。認定農業者制度では年齢制限がないほか、家族経営協定を締結した夫婦や親子などが共同で認定申請を行うこともできます。

また、認定新規就農者は5年間の認定期間中に認定農業者へ移行することができます。有効期限内に、新たに農業経営改善計画認定申請書(5年後の改善目標)を作成し、その市町村の定める経営改善計画の認定を受けた場合は認定農業者へスライドします。認定新規就農者の期間終了後に改めて認定農業者の申請を行うこともできます。

認定新規就農者 認定農業者
目的 新規就農者の育成・支援 地域農業のリーダーの育成・支援
対象者
  1. 18歳以上45歳未満の青年
  2. 青年以外の個人で効率的かつ安定的な農業経営を営むために活用できる知識・技能を有する者(45歳以上65歳未満)
  3. 役員のうち、上記(1)(2)が過半数を占める法人
その市町村の区域内において農業を営み、又は営もうとする者(年齢制限なし)
認定 市町村 市町村
認定期間 5年以内 5年以内
認定要件
  • 計画が市町村の基本構想に照らし適切なものであること。
  • 計画が達成される見込みが確実であること。
  • 計画が市町村の基本構想に照らし適切なものであること。(目標所得を目指すものとなっているかどうか)
  • 計画が農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであること。
  • 計画が達成される見込みが確実であること。

認定新規就農者になるための流れ

苗
認定新規就農者になるための流れ、具体的なステップを解説します。

農業技術や経営スキルを身につける

認定を受けるためには、直接必要な手続きを行うだけでなく、農業や経営に関する知識と技術を習得する必要があります。
営農技術があるかどうかは資金獲得における判断基準の一つになっており、事前に農業に関する技術や経営スキルを身につけておくことは大切です。
個人の農家で修業するほか、支援が充実している企業で活動するという方法もあります。栽培・生産する予定の農作物について研修を受けて学び、座学・実技の両面で知識や技術を習得することができます。

農地や資金を確保する

新規就農にあたっては、農地を借りる・買うなどして手に入れる必要があります。自治体の農政課や農業委員会、全国新規就農相談センターなどを通じて農地を確保するケースが一般的です。
農地の形状や面積によって、必要な資金が大きく変わるので注意してください。栽培する作物に適した土地を見つけるため、複数の候補に当たってみるとよいでしょう。
資金面では、農地の取得にかかる資金のほかにビニールハウスや農機具、生産資材の準備等にもコストがかかります。

青年等就農計画を作成する

営農に関する目標や将来の構想、具体的な栽培内容などの項目を盛り込んだ経営指標を策定し、「青年等就農計画認定申請書」に落とし込みます。
自治体にある営農を支援する担当部門(農林水産振興課・農業普及課など、部署名は自治体によって異なる)に相談しておくとよいでしょう。
青年等就農計画認定申請書のフォーマットは、農林水産省のウェブサイトに掲載されています。記入イメージも掲載されているので、合わせて確認しておきましょう。

自治体に計画を提出し審査を受ける

作成した「青年等就農計画認定申請書」を管轄の自治体の窓口へ提出し、審査を受けます。認定基準は農林水産省のウェブサイトに掲載されています。
提出された申請書は、市区町村で審査が行われます。その際、就農計画の作成にあたり指導を受けた農業者や指導センター、学校関係者などへの意見聴取がなされます。

審査に通過して「認定新規就農者」になる

基本構想に合った適切な就農計画が作られていると認められた場合には通知書が発行され、「認定新規就農者」となります。認定により、さまざまな支援制度が活用できるようになります。

認定新規就農者制度のメリット

畑のコンバイン

認定新規就農者になると、就農に際してさまざまな支援を受けられるメリットがある一方で、デメリットは特にありません。
ただし、認定新規就農者になるためには所定の手続きが必要であり、認定基準を満たすためのしっかりとした就農計画を立てなければならないため、注意が必要です。

【メリット】農業経営を安定させるための支援策を受けられる

認定新規就農者になると、早期に営農を安定させるためのさまざまな支援を受けられるため、経済的に大きなメリットがあります。交付金や無利子の融資を受けられるほか、経営所得安定対策への加入などもできます。詳しくは次章以降で紹介します。

【注意点】単独で計画を作成することが困難

認定新規就農者になるデメリットは特にないものの、しばしば挙げられるのが申請の難しさです。認定を受けるためには「青年等就農計画」を作成し、所定の様式で管轄する市区町村へ提出します。書類の作成にあたっては、前もって役所の担当部門や農業普及指導センターなどに相談しておきましょう。

認定新規就農者になると受けられる主な支援

認定新規就農者になると、以下のようなさまざまな支援が受けられるようになります。自治体によって制度が異なる場合があるので、市区町村の担当部門で確認してみてください。

農業次世代人材投資資金(就農準備資金・経営開始資金)

「次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金(2年以内)及び就農直後の経営確立を支援する資金(3年以内)を交付」する制度として設けられているのが、農業次世代人材投資資金です。就農時の年齢が原則49歳以下であることが条件で、前年の世帯所得が原則600万円以下の場合に対象となります。
「就農準備資金」は研修期間中の研修生が交付の対象となります。最長2年間、月額12万5000円・年間最大150万円が交付されます。
「経営開始資金」は認定新規就農者が対象です。経営開始資金として最長3年間に渡り、月額12万5000円・年間最大150万円が交付されます。

青年等就農資金(無利子融資)

新規就農者を対象とした無利子の融資として「青年等就農資金」があります。国の出資金をもとに、株式会社日本政策金融公庫が融資に関する審査及び諸手続きを行っています。
資金の用途は幅広く、農業生産用の施設・機械の整備、家畜の購入費、果樹や茶の新植・改植費や、長期運転資金などに使うことができます。
借入限度額は3700万円(特認限度額1億円)、返済期間は17年以内(うち据置期間5年以内)となっています。

農地利用効率化等支援交付金

地域が目指すべき将来の集約化に重点を置いた農地利用の姿の実現に向けて、目標地図に位置付けられた者が経営改善に取り組む場合、必要な農業用機械・施設の導入に支援が受けられる制度です。300万円を上限(一定の条件を満たして経営面積の拡大を目指す場合は600万円への引上げ有り)とし、補助率は事業費の10分の3以内となっています。

経営所得安定対策(ゲタ・ナラシ)

経営所得安定対策として、ゲタ・ナラシ対策があります。
ゲタ対策は諸外国との生産条件の格差により不利がある国産農産物の生産・販売を行う農業者に対して、「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額分に相当する交付金を直接交付する制度です。
ナラシ対策はコメ及び畑作物の農業収入全体の減少による影響を緩和するための制度です。農業者のコメ、麦、大豆等の当年産の販売収入の合計(当年産収入額)が標準的収入額を下回った場合に、その差額の9割が補てんされます。補てんを受けるには、農業者からの積立金の拠出が必要となります。

農業経営基盤強化準備金

経営所得安定対策等の交付金を活用して、計画的に農業経営の基盤強化(農用地、農業用の建物・機械等の取得)を図る取り組みを支援するものです。
農業経営改善計画などに従い、経営所得安定対策等の交付金を農業経営基盤強化準備金として積み立てた場合は、この積立額を個人は必要経費に、法人は損金に算入できます。
さらに、農業経営改善計画などに従い、積み立てた準備金を取り崩したり、受領した交付金で、農用地、農業用の建物・機械等を取得したりした場合、圧縮記帳できます。適用を受けるためには一定の方法で記帳し、青色申告により確定申告(初年は税務署に事前に届出)をする等の条件があるので注意してください。

農協等向け新規就農者税制

農協等が機械設備や農業用ハウスなどの償却資産を取得して人・農地プランの中心経営体に位置付けられた認定新規就農者に利用させる場合、その固定資産税が軽減される制度です。
農業協同組合のほか、中小企業等協同組合(事業協同小組合、企業組合を除く。)、農業協同組合連合会、農事組合法人が対象となります。認定新規就農者への直接の支援ではありませんが、この制度があることによって認定新規就農者は初期投資にかかる負担が軽減されます。また、農業協同組合や市町村において地域ぐるみで新規就農者の受入体制づくりが進むことも期待されています。

認定新規就農者を目指そう

これまで見てきたように、認定新規就農者にはさまざまな支援や制度を利用できるメリットがあります。申請手続きのハードルが少し高く感じられるかもしれませんが、青年等就農計画の策定により綿密な営農プランを立てられ、経営の早期安定にもつながります。
新たに農業を始めたいと考えている人、就農したばかりの人は、ぜひ認定新規就農者を目指してみてください。

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