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アオムシの農薬を用いた駆除方法、無農薬での対策を農家が解説

鮫島 理央

ライター:

アオムシの農薬を用いた駆除方法、無農薬での対策を農家が解説

『はらぺこあおむし』という絵本があるように、食欲旺盛なアオムシは畑に現れると、短期間で大量の葉を食べてしまいます。アオムシが食べたあとは葉脈だけが残り、スカスカな状態になっているので、ひと目見てアオムシにやられた!とわかりやすいのも特徴です。本記事では野菜農家の天敵とも言えるアオムシの生態や特徴、防除のやり方からアオムシを寄せ付けない畑の作り方まで詳しく解説していきます。ぜひ本記事をアオムシ対策にお役立てください。

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アオムシの生態と特徴とは?

出典:PIXTA

アオムシはチョウ類の幼虫のうち、体毛がなく青色(緑色)の体色をしているものを指し、特にモンシロチョウやアゲハチョウの幼虫がよく知られています。アオムシは草地、花畑、農作物の葉などに見られ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどのアブラナ科の植物を好みます。

食性としては植物の葉を食べて成長し、非常に旺盛な食欲を持っていて、短期間で大量の葉を食べることがあります。葉脈を残して移動しながら葉を食べるので、アオムシに食べられた跡はスカスカになってしまいます。

アオムシとイモムシの違い

出典:PIXTA

アオムシは特にモンシロチョウやスジグロシロチョウの幼虫を指します。体長は約4cmで、長い毛に覆われておらず、緑色の体を持っています。

一方、イモムシはチョウやガの幼虫のうち、毛のないものの総称です。イモムシはアオムシに比べて定義が広く、さまざまな種類の幼虫が含まれます。特徴として、尾端に1本の角があり、体に斑紋があることが挙げられます。

アオムシの天敵はハチ

アオムシにはいくつかの天敵がおり、その中でも特にアオムシコマユバチとアシナガバチが知られています。

アオムシコマユバチはアオムシに寄生することで知られる寄生バチの一種です。このハチはアオムシに卵を産みつけ、ふ化した幼虫がアオムシの体内で成長します。幼虫はアオムシの内側から食い破り、最終的にアオムシを死に至らしめます。

一方、アシナガバチはアオムシを直接捕食します。アシナガバチにとってアオムシは重要な食料源なのです。

アオムシが発生しやすい場所や時期

アオムシは主にアブラナ科の植物に発生しやすく、この種の植物に含まれるカラシ油成分の香りを嗅ぎ分けてチョウがやってきます。アブラナ科の植物を見つけたモンシロチョウやスジグロシロチョウの成虫は、その葉の裏に卵を産みつけます。

アオムシの発生時期は特に4月~6月と、9月~11月にかけてです。特に5月~6月にかけては、アオムシの数が多くなる時期です。この時期は気温や湿度がアオムシの成長に適しているため、成虫が活発に活動し、産卵が盛んに行われます。

発生しやすい植物

出典:PIXTA

アオムシは特にカブ、カリフラワー、キャベツ、大根、白菜といったアブラナ科の植物に発生しやすいです。

アオムシを駆除する方法

アオムシを駆除する方法について、農薬を使った方法と直接手で処理する方法の2パターンを紹介します。
どちらが良いという話ではなく、どちらの方法も組み合わせて駆除するとより効果的です。

殺虫剤を使用する

畑など大規模な栽培を行っている場合は、農薬の使用が効果的です。農薬を使用することで広範囲にわたって効率的にアオムシを駆除することができます。

例えば、「オルトラン」は薬剤が葉裏まで浸透するため、アオムシの卵や幼虫を効果的に駆除できます。また、「マラソン乳剤」は即効性に優れており、迅速にアオムシの数を減らすことが可能です。

農薬を使用する際には、必ずその農薬が使用できる作物かどうかを確認することが重要です。作物に適合しない農薬を使用すると、作物に害を及ぼす可能性があるほか、法令違反となりますので、ラベルや使用説明書をしっかりと確認し、正しい方法で使用するよう心掛けてください。

軍手をはめ、手で処理する

アオムシを駆除する際、特に有機栽培や無農薬栽培を行っている場合には、手で処理する方法が最適です。ただし、素手でアオムシに触れると、激しいかゆみやかぶれを起こす可能性があるため、注意が必要です。このため、軍手の着用をおすすめします。
さらに、軍手の上から使い捨てのビニール手袋を併せて着用すると、アオムシの体液が手につくことをより効果的に予防できます。

ただし、アオムシが大量発生している場合には、手作業だけでは駆除が困難なことがあります。その場合は、殺虫剤の使用も検討することが必要です。

アオムシを無農薬で駆除・予防する方法

有機栽培や無農薬栽培など、こだわりを持って作物を栽培している場合は、次の方法でアオムシ防除を行ってみると良いでしょう。

  • 防虫ネットを使用する
  • ストチューを使用する
  • コンパニオンプランツを植える

それぞれ詳しく解説していきます。

防虫ネットを使用

アオムシの防除方法として、防虫ネットの使用が効果的です。防虫ネットを使用することで、アオムシの成虫であるチョウが外から飛来して作物に卵を産みつけるのを防ぐことができます。ネットは栽培初期から設置し、隙間(すきま)が開かないようにしっかり固定することが重要です。これにより、チョウが侵入する隙間をなくし、アオムシの発生を未然に防ぐことができます。

また、寒冷紗(かんれいしゃ)の使用もおすすめです。寒冷紗は防虫効果に加えて、日よけ、保温、霜よけの効果もあります。これにより、作物をアオムシから守るだけでなく、さまざまな環境要因からも保護することができます。

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ストチュウを使用

ストチュウとは、酢や焼酎、木酢液を合わせた自然由来の虫よけ剤で、虫が苦手なニオイを発するため、アオムシを寄せ付けない効果があります。この方法は有機栽培や無農薬栽培を行う場合に特に適しています。

ただし、ストチュウの効果は市販の薬剤と比べると高くないため、アオムシの数が多い場合や発生が激しい場合には補助的な手段として利用するのが良いでしょう。

コンパニオンプランツを植えて予防

コンパニオンプランツを近くに植えることも効果的です。コンパニオンプランツとは、病害虫対策になる植物を近くに植えることで、主作物を病害虫から守る方法です。アオムシは特にセリ科の春菊、レタス、キク科のニンジンが苦手です。これらの植物をアブラナ科の作物の近くに植えることで、アオムシの発生を抑えることができます。

特にレタスはアブラナ科の作物との相性が良く、互いに成長を助け合うため、レタスをアブラナ科の作物と一緒に植えることをおすすめします。

アオムシの駆除におすすめの農薬

農薬を使ってアオムシを駆除したいときにおすすめの薬剤を紹介します。
それぞれどのような農薬なのか、簡単に解説していきます。

GFオルトラン粒剤

GFオルトラン粒剤は、キャベツや白菜、ブロッコリー、大根、カブ、ジャガイモなどのアオムシ予防に効果のある薬剤です。
粒剤タイプなので、株元や植え穴にばらまくだけで、手を汚さずに散布ができます。
アオムシのほか、ヨトウムシやアブラムシにも高い防除効果があるので、持っていると便利な薬剤の一つです。

>>詳細はこちら

オルトラン水和剤

オルトラン水和剤は、水で薄めて噴霧器などで吹きかけるタイプの薬剤です。こちらもアブラナ科野菜をはじめとして、さまざまな作物のアオムシやヨトウムシ、アザミウマなど害虫対策に使用できます。浸透移行性に優れているので、散布液がかかりにくい場所に潜んでいる害虫にも効果があるのが特徴です。
噴霧器で一気に散布して使うので、栽培している作物の量が多いという人におすすめです。

>>詳細はこちら

ベニカ水溶剤

ベニカ水溶剤も、水で薄めて噴霧器などで吹きかけるタイプの薬剤です。キャベツやブロッコリーのアオムシ防除に使えるほか、さまざまな作物でアブラムシやアザミウマ、コナジラミやカメムシの防除に使うことができます。

従来の薬剤とは違った作用機序なので、これまでの薬剤に抵抗性がある害虫についても高い効果を発揮します。

>>詳細はこちら

アディオン乳剤

アディオン乳剤も、水で薄めて噴霧器などで吹きかけるタイプの薬剤です。
カブ、キャベツ、茎ブロッコリー、コマツナ、大根、ナバナ類、白菜などさまざまなアブラナ科作物でアオムシ防除に使うことができます。
優れた即効性と、残効性が特徴の薬剤です。

>>詳細はこちら

スミチオン乳剤

スミチオン乳剤も、水で薄めて噴霧器などで吹きかけるタイプの薬剤です。
花き類・観葉植物のアオムシ防除に使うことができます。
アオムシのほか、さまざまな害虫に対しても効果のある薬剤なので、花きや庭木の防除に使いやすい薬剤です。

>>詳細はこちら

アオムシ防除は日々の観察から

アオムシは絵本の題材になっているほど、身近で可愛らしい生き物というイメージですが、農業の世界では害虫です。

小さく緑色の体色をしたアオムシを見つけるためには、普段から作物をしっかり観察しなくてはなりません。

数ある害虫の中でも、比較的大きい方なので、発生数が少ないうちは捕殺でも十分対処ができます。ただ、栽培面積が広い場合や、発生数が多くなってしまったというときは、農薬を使って防除するという方法も選択肢の一つです。

本記事を参考にして、アオムシを寄せ付けず、しっかり対処できるスキルを身に着けていってくださいね!

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