ヨトウムシとは何をする虫?
ヨトウムシ(ヨトウガ)は、チョウ目ヤガ科ヨトウ亜科に属する昆虫です。この虫はイネ科以外のほとんどの植物を食害するため、農業において厄介な害虫とされています。
成虫の体長は約15~20mmで、翅(はね)の開張は約45mmに達します。体色は灰褐色から黒褐色で、不鮮明な白色の斑紋が特徴です。一般的に、ヨトウガは年に2回発生します。
ヨトウムシは蛹(さなぎ)の状態で冬を越し、4月下旬から羽化します。羽化した成虫はすぐに交尾を行い、産卵に入ります。卵は夜間に数十から数百個の塊で葉の裏に産み付けます。特に、高温で降雨が少ない場合には産卵が活発になります。
幼虫が大きくなると成虫になり卵を産み付ける
秋になるとヨトウムシの成虫(蛾)が現れます。この蛾は夜行性なので、昼間には見つけにくいです。成虫は葉の裏に卵を産み付けますが、その卵の数は一度に数百個になることもあります。これらの卵から孵化した幼虫は、さまざまな植物を食べるため、農作物に大きな影響を与える可能性があります。
ヨトウムシの種類は大きく3つ
ヨトウムシの種類は大きく分けて3つに分けられます。
・ハスモンヨトウ ・シロイチモジヨトウ ・アワヨトウ |
この中でも、ハスモンヨトウが最も一般的で、広範囲の植物を食べるため農作物に大きな被害を与えることがあります。
ヨトウムシの天敵は案外たくさんいる
ヨトウムシには多くの天敵がいます。まず、鳥類が挙げられます。鳥はヨトウムシを見つけると食べてしまいます。また、カエルもヨトウムシの天敵です。ムカデもヨトウムシを捕食することで知られています。
ヨトウムシが発生し被害に遭う原因とは?
ヨトウムシは発見が遅れ、被害が大きくなってしまうことも少なくありません。
次の3つのポイントをしっかり押さえて、発生数を減らしましょう。
・ヨトウムシは土の中で越冬する ・葉裏に卵を産み付ける ・夜間に活動する |
それぞれ分かりやすく解説していきます。
土の中で越冬する
ヨトウムシは冬の間、蛹(さなぎ)の状態で土の中で過ごします。土の中にいるため、普段の生活では見つけるのが難しく、土を耕さない限りそのまま春を迎えて孵化することが多いです。つまり、ヨトウムシは土の中で安全に冬を越し、春になると再び活動を始めるのです。
葉裏に卵を産み付ける
ヨトウムシの成虫は、葉の裏に卵を産み付けるので、1枚1枚の葉を目視で確認しなければなりません。そのため、卵の存在を見落としてしまい幼虫が孵化してしまうことがよくあります。
夜間に活動するため駆除が難しい
ヨトウムシは、その名前の漢字「夜盗虫」が示す通り、夜行性の昆虫です。夜になると活動を始め、植物を食害します。昼間は土の中に潜んでいるため、見つけるのが難しいです。これにより、日中に被害を確認することが難しく、夜間の観察や対策が重要になります。
ヨトウムシを見つけたらどうやって駆除する?
ヨトウムシは早めに駆除をすることが何より大切です。
ヨトウムシを駆除するときは、具体的に以下の3つのポイントに留意して行いましょう。
卵を見つけ次第すぐに取り除く
卵は葉の裏に産み付けることが多いので、注意深く観察しましょう。卵を取り除く際には、素手で触るのは避け、軍手やビニール手袋を使ってください。これで安全に卵をこそぎ落とすことができます。また、卵を水で洗い流す方法も効果的です。
幼虫は手で駆除するか葉っぱごと取り除く
幼虫を見つけたら手で取り除くか、葉っぱごと取り除くことが効果的です。しかし、幼虫を直接素手で触るのは避け、軍手やビニール手袋を使って安全に取り除くようにします。
もし幼虫の発生数が多かったり、葉の被害が大きい場合は、被害を受けた葉ごと取り除くのが良いです。この際、取り除いた葉は圃場(ほじょう)の外で処分することが重要です。
成虫は殺虫剤の効果が薄くなるので早めに駆除する
ヨトウムシの成虫は殺虫剤の効果が薄くなるため、早めに駆除することが重要です。成虫には農薬が効きづらいので、卵や幼虫のうちに駆除することが最も効果的です。また、外から成虫が寄ってこないような環境づくりも大切です。
ヨトウムシの駆除に効果的な農薬
ここでは、ヨトウムシの駆除に効果的な農薬を4つ紹介します。
それぞれどのような薬剤なのか、分かりやすく説明します。
サンケイデナポン5%ベイト
粒剤タイプの農薬なので、畑にまくだけでハスモンヨトウやダンゴムシ、ネキリムシ類を誘引し、駆除することができます。散粒容器入りで、手を汚さずに使用することができます。
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ピュアベニカ
お酢で作られた薬剤で、葉に散布することでヨトウムシやアブラムシ、ハダニなどを寄せ付けない効果が期待できます。食品成分100%の薬剤であるため、お子さまやペットがいる環境でも安心して使うことができます。駆除剤ではないため、ヨトウムシなどを予防する目的で使うようにしましょう。
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ベニカXネクストスプレー
スプレータイプの薬剤で、買ってそのまま使うことができます。
庭木や花、野菜など幅広い作物で使えるため、家庭菜園などにぴったりです。
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アファーム乳剤
自然物由来の有効成分を使っているため、環境負荷が低い薬剤です。
ハスモンヨトウのほか、コナガ、アザミウマ類、ダニ類、ハモグリバエ類などさまざまな害虫に使うことができます。
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農薬や殺虫剤を使わずにヨトウムシの発生を予防するには?
薬剤を使った駆除以外にも、ヨトウムシの発生自体を予防することも大切です。
ここでは、薬剤を使わずにできる予防方法について解説していきます。
土を耕すタイミングで見つける
まず、ヨトウムシは冬の間は土の中で過ごし、春になると幼虫になって地上に上がってきます。このため、予防のためには土を耕すタイミングが重要です。作物を植え付ける前に土壌づくりを行う際、土をよく観察することが大切です。
具体的には、土を耕すときにヨトウムシの蛹(さなぎ)を見つけることができます。土をしっかり耕しながらチェックすることで、ヨトウムシの発生を未然に防ぐことができます。これにより、春に幼虫が地上に上がってくるのを防ぎ、作物への被害を減らすことができます。
防虫ネットや寒冷紗を使う
防虫ネットや寒冷紗を使う方法もオススメです。防虫ネットや寒冷紗を作物に掛けることで、物理的にヨトウムシが近寄れなくなります。こうすることで、成虫が卵を産み付けるのを防ぎ、幼虫が作物に被害を与えるのを防止できます。
草木灰を散布する
ヨトウムシの予防には、草木などを燃やした草木灰(そうもくばい)を使用する方法があります。
ヨトウムシの予防効果があるほか、草木灰は酸性に偏った土壌にアルカリ性の成分を与える効果があり、土壌のバランスを整えてくれます。さらに、カリウムやリン酸などの栄養分を補給する追肥効果もあります。
ただし、草木灰は化成肥料と同時に使わないように注意しましょう。化成肥料に含まれるアンモニアと草木灰が混ざると、化学反応を起こして有害なガスが発生する可能性があり危険です。
米ぬかトラップを仕掛ける
ヨトウムシの予防方法として、米ぬかトラップを作るのがお薦めです。ヨトウムシは米ぬかを好むため、このトラップを使って効果的に捕まえることができます。
まず、米ぬかを用意し、それをプラスチック容器に入れます。次に、被害を受けている作物の株元に、米ぬかを入れた容器を埋めます。このとき、米ぬかが地表に露出するように設置します。翌朝になると、米ぬかにヨトウムシが潜っているのを確認できると思います。
ヨトウムシは幼虫のうちに駆除しよう
ヨトウムシは成虫になると農薬が効きづらくなってしまいます。そのため、物理的にこそぎ落としやすく、農薬も効きやすい卵や幼虫の間に駆除するのが大切です。
また、防虫ネットや寒冷紗を使ったり、草木灰や米ぬかを使って防除するのも効果的です。
ぜひ本記事を参考にして、ヨトウムシの駆除に挑戦してみてください。