取材協力いただいた花き農家/三浦 雄也さん
・年齢:32歳
・就農年数:6年目(2019年就農)
・出身地:岩手県二戸市
・地域:岩手県北地域・二戸市
・規模:花き(カラー・トルコギキョウ・ラナンキュラス等)800坪(約26a)
・活用資金・事業:新規就農スタートアップ支援事業((公社)岩手県農業公社)、農業次世代人材投資資金【準備型・経営開始型】(農林水産省)
・営農形態:4人(本人・パート従業員3人)
・暮らし:妻と子ども2人の4人暮らし
※2024年10月現在
他県での研修を経て生まれ故郷で新規就農
――二戸市で就農したきっかけを教えてください。
私は二戸市の出身で、高校と大学で農業を専門に学びました。岩手県は八幡平市を中心にりんどうの栽培が盛んで、私の両親も手掛けています。自分も将来はりんどうの生産者になろうと考えていて、大学卒業後は経験を積むために東京都内の市場へ就職。そこで働いていたとき、長野県で大規模な花農家を営む会社を紹介してもらったんです。栽培や経営の技術や知識がないまま就農するのは不安でしたし、その会社では研修生を受け入れていたため、2年間勉強させてもらうことにしました。
――研修先では、どんな花の栽培に携わりましたか?
夏はトルコギキョウ、冬はラナンキュラスをメインに栽培しました。研修を始めて2年目にカラーの栽培が始まり、高品質な花の作り方や技術、経営に関することなど全て教えてもらいました。岩手県でもトルコギキョウを栽培している農家が多く、気候的に問題はありません。また、カラーは植えてから収穫するまでの期間が短いので、効率の良い栽培サイクルを組むことができます。せっかく時間をかけて学んだ知識なので、これらの品種で就農することを決意。現在はカラーとトルコギキョウ、ラナンキュラスなどを栽培しています。
課題は雇用の確保や販路拡大に伴う流通方法
――就農するまでに準備したことや、就農後に大変だったことはありますか?
就農時に活用したのは、(公社)岩手県農業公社の新規就農スタートアップ支援事業や、国の農業次世代人材投資資金【準備型・経営開始型】です。やはり最初は設備を整えるための資金が必要になるので、こうしたサポートがあって本当に助かりました。また、就農した頃に大変だったのは作業量の多さです。当時は全ての作業をほぼ一人で行っていて、忙しい時期は徹夜で仕事をする日が続いていました。そのため、今はパートさんに手伝ってもらっていますが、この地域は人が少なく、雇用を確保するのが大変です。あとは、出荷先に配送してもらう運送業者を見つけることにも苦労しました。全て東京都の市場に出荷しているのですが、そこまで配送してくれる業者をなかなか見つけることができなくて…。以前は午前2時に起きて、盛岡市内の運送業者まで自分で運んでいた時期もあります。今年になってようやく業者を見つけることができたので安心しています。
品質維持のため日々の管理を徹底
――現在の生産規模や、花を育てる上で大切にしていることを教えてください。
就農時は3棟のハウスからスタートして、現在は11棟、約800坪のハウス面積で栽培しています。2日に一度のペースで収穫して、そのうち半日は出荷に向けた箱詰め作業。ほかにも水やりやハウスの温度調節など、栽培管理を行います。日々の作業の中で大切にしていることは、品質へのこだわりです。常に発色と日持ちの良さを意識していて、選別する際もその点を重視しています。
――出荷した花は、どのような場面で使われることが多いのでしょうか?
カラーは主にブライダルで人気ですし、トルコギキョウは冠婚葬祭などで幅広く利用されています。以前、大学時代の友人の結婚式に出席した際、自分が出荷している品種と同じカラーが飾ってありました。私が作ったものと断定はできませんが、市場にも確認して『おそらくうちの花だろう』ということがあり、とてもうれしくなりました。花農家は消費者の声を直接聞く機会がないので印象深かったです。
理想の花を作るため試行錯誤は続く
――花農家として、今後の目標はありますか?
品質を上げるために改善を重ねているものの、まだ自分が納得するレベルに至っていません。研修先で見た花や全国の生産者が作っているものを見ると、別格だと感じることが多々あります。これからも技術を磨いて、自分が理想とする花を作っていきたいです。上質な花の生産が安定的にできるようになれば、自分だけでなく二戸市の知名度も上がります。県内でカラーを生産している農家は珍しいのですが、将来的には、岩手はりんどうだけではなく、いろんな可能性があることを知ってほしいと思っています。
街の自慢は何と言ってもきれいな水!
――休日の過ごし方や、二戸市の魅力について教えてください。
就農した当初は休みもなく朝から晩まで働いていましたが、子どもが生まれてからは土日のどちらかを休むようにしています。休日は子どもと過ごすことが多いですね。また、二戸市の良いところは水がきれいなことです。実家では今でも山の湧き水を飲んでいますし、その地域にあるハウスでは花の栽培に同じ水を使用しています。なかなか全てのハウスで同じことをするのは難しいのですが、いつかは二戸市のきれいな水だけで育ててみたいです。
周りの力を借りて、ぜひ農業に挑戦を
――最後に、新規就農に興味を持っている人に向けてメッセージをお願いします。
農業を始めるときには、ハウスを建てたり設備を整えたりと、どうしてもお金がかかります。金額が大きくなるほど二の足を踏んでしまう人が多いと思いますが、国や行政、農協などでいろんなサポートをしています。そういった関係機関に相談することはもちろん、就農後も困ったときには周りの力を借りることが大切です。遠慮せず周囲を頼りながら、ぜひ農業の世界にチャレンジしてほしいです。
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二戸農業改良普及センター
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