加工向け野菜を大規模栽培
広大な十勝平野が広がり、帯広市を中心とする道内随一の農業地帯として知られる十勝地域。ダイヤモンド十勝株式会社はこの河西郡芽室町で農業生産を行っています。
栽培品目はジャガイモや西洋わさび、ニンジン、カボチャ、玉ねぎ、キャベツ、ブロッコリー、スイートコーン、ニンニクと多岐に渡り、総栽培面積は100ヘクタール以上。主に、加工用向けとして出荷しています。その他、150戸を超える地域の生産者に約400ヘクタールを委託契約栽培している分もあり、自社生産分と合わせて耕地面積は約500ヘクタールにも上ります。
特にジャガイモとニンジン、西洋わさびの生産量が多く、ジャガイモが140ヘクタール、ニンジンが約130ヘクタール、その中でも西洋わさびは約100ヘクタールと日本一の栽培面積を誇ります。
地域の農家を守る存在として設立
現在、ダイヤモンド十勝の代表取締役社長を務める大野和則(おおの・かずのり)さんは、元々、十勝21世紀株式会社の社長として農業生産をしていました。ダイヤモンド十勝の株主である横浜冷凍株式会社(ヨコレイ)とは20年以上の取引関係があったと言います。
そんな中、ヨコレイでも農産事業部があり、何か新しい形の農業ができないかと大野さんに相談したことが同社設立のきっかけとなりました。ヨコレイとしては、十勝という一大生産地で農業に携わることにビジネスチャンスを感じ、大野さんとしても、ヨコレイのネットワークを生かしこれまで以上の大規模な農業へ取り組めるのではないかといった期待があったと言います。
そして、これから農業をしていく上で何が必要かと話を進めていく中で、「共存共栄」を企業理念とし、持続可能な農業を掲げ「生産・加工・販売」を垂直統合した新しいタイプの農業生産法人を作ろうと互いの思いが一致。2014年にダイヤモンド十勝株式会社を設立する運びとなりました。その時の設立手続きに関わったのが星野さん。その後、ヨコレイより正式に出向という形で同社の取締役副社長を務めています。
現在、十勝21世紀株式会社に関しては大野さんの息子さんが後を継いでいると言います。
「生産・加工・販売」を垂直統合した新しいタイプの農業生産法人として事業展開
「生産・加工・販売」を垂直統合した新しいタイプの農業生産法人として設立されたダイヤモンド十勝。事業内容は農業生産、契約栽培を中心に多岐に渡ります。
1つ目は、これまで十勝で生産量の少なかった農産物の生産。十勝では、ジャガイモ、てん菜、小麦、豆類の4品が代表的な作物として多く作られてました。そんな中、広大な土地を生かし、加工向けの野菜品目を開始。地域の生産者にとっても新たな生産品目、販路構築に繋がったと言います。
2つ目は、農作業の受託。契約での栽培品目は十勝でこれまで作られてきた品目でないため、契約農家で収穫機を持っていないことも少なくありません。そこで、保有しているヨーロッパ式の大型機械を機械と人材を派遣し、収穫作業を請け負っています。
生産者側としても繁忙期に人を雇入れたり、数千万する機械へ投資したりする必要がないので、その分だけ規模を広げられるなど生産に集中することが可能です。大型機械では、ジャガイモにおいては、5ヘクタールの畑が2日ほどで収穫できてしまうと言います。
3つ目は、選果・加工・パッキング。同社では選果処理能力を持つ施設を4カ所持っており、施設によって取り扱う品目が変わってきます。1カ所当たり、1日で最大40トンの選果処理が可能だと言います。一次加工も行っており、取引先の要望によってニンジンのヘタの部分をカットするなどの対応が可能となっています。
4つ目が販路の確保。企業にとっては1軒の生産者と契約を結ぶとなると、時期によって出荷量に波があったり、長い目で見て農産物を出し続けられるかなどさまざまなリスクが出てきてしまいます。
その一方、ダイヤモンド十勝では委託でも農産物を生産している分、生産規模が大きく、地域から物を集めることが可能です。また、ヨコレイといった大きな企業が株主になっていることで、信頼という部分でも強みがあります。
その他、ヨコレイが運営する近隣の冷蔵倉庫や自社冷蔵庫を利用することで商品の品質を保持することが可能と言います。商品の輸送形態においても、トレーラー、JRコンテナ、冷蔵車等を運送業者と調整することでお客さまの要望に応えることが可能となっています。
こういった部分が企業にとっても安心した取引に繋がります。また、地域の生産者にとっても、自分で新たな品目を作り、自分で販路を見つけることは簡単ではないので、同社を通して新たな販路となっているのではないでしょうか。
稼げる農業を実現し、連携農家と一緒に稼げるように
「地域の生産者が存続していく手助けとなるような上記のようなサービスを続けて行くためにも、会社として利益を上げていくことが必要事項になります。だからこそ、栽培技術の確立はもちろん、利益率を求めて行かなくてはいけません。定番品目はもちろん、新規品目にも挑戦をしてきましたし、これからもしていく予定です」(星野さん)
既存の取り扱い先と一緒になって実験的にいろいろな栽培品目にしているダイヤモンド十勝。近年の温暖化によって北海道で生産が可能になったと話題のサツマイモにも挑戦をしていると言います。
自ら生産者であり、地域の販路でもあり、農業サービスの提供といったさまざまな顔を持ち、地域に根付いているダイヤモンド十勝。その反面、大企業のネットワークを生かしながら全国に販売経路など関係を持っています。同社の取り組みは、企業の農業参入は失敗が多いといわれる中で、成功事例といえるのではないでしょうか。