横浜市場センター株式会社
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神奈川県横浜市に本社を構える横浜丸中グループ。横浜市中央卸売市場の指定卸売会社である横浜丸中青果株式会社が産地で集荷した青果物を販売することを目的として2000年に設立。市場から仕入れた青果物を、首都圏を中心とした全国の量販店・コンビニ・外食・中食・総菜工場などに販売する他、近年は、産地と直接契約し、出荷全量を販売に結び付ける「畑丸ごと買い」にも力を入れる。 |
目まぐるしく変化する近年の飲食業界
-飲食関係はコロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言などもあり、近年は目まぐるしい変化が起きた業界かと思います。消費者のニーズはどのように変化してきたのでしょうか。
皆さんも知っての通り、コロナの影響もあり外で食べることが出来なくなりほとんど出荷がなくなりました。それでも、緊急事態宣言が明けてからはランチ営業をしている店舗の他、学校給食への出荷も行っていたため、それまでの約3割ほどの売上を推移していたと記憶しています。
そこから2023年の5月に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行したことで徐々にお客さんが戻ってきました。それでも、現在はコロナ前に比べて100%かといわれるとそこまでは戻ってきておらず、9割から8割ほど。
実際に現場の声を聞いていると、1次会はやるけど2次会や3次会はやらないから21時以降がお客さんの入りが少ないと言います。席の回転数もコロナ前に比べて7割ほどになるそうです。ニュースなどでも報道がされていますが、少し前だと飲みニケーションと呼ばれていたような外でみんなでご飯を食べる機会も少なくなりましたよね。
また、それに伴い、UberEatsの台頭も影響して店舗も生き残るためにデリバリー専門を行うゴーストレストランとよばれる業態に変更をしたところも見られます。
-最近では、インバウンドの影響で外食産業が盛り上がっているニュースも見受けられるようになりましたね。
ここ最近でいうと、都心の店舗で上手く海外の人へリーチできている店舗はインバウンドの影響が大きいといいます。特に、○○横丁とよばれるような1カ所に複数の店舗が集まった場所が人気みたいです。
ただ、懸念もあるようで、仕入れの単価も人件費も全部が上がっているので商品の値上げのタイミングを伺っているが、お金を持っている海外の人は良いが日本人のお客さんが来れなくなってしまうのではないかと値上げを躊躇(ちゅうちょ)しているといった声も耳にします。実際、インバウンド向けだけでは客入りが難しいようです。
その分、消費者が青果物の値上げに敏感なことと同じで、飲食関係者からしても青果業界は値上げに対して後回しにされる傾向にあり、値上げを中々受け入れてもらえないことも少なくありません。

横浜南部市場
飲食業界で扱われる青果物について
-次に業界で扱われる青果物について話を聞いてみたいのですが、現在の取り扱い品目上位や変わった品目はどのようなものがあるのでしょうか。
うちでいうと、関東近辺で展開する飲食チェーンへの出荷がメインになるのですが、その中で多いのがトマト、キャベツ、レタス、玉ねぎ、長ネギです。変わった品目で言うと数量は多くないですが約20種類のハーブや西洋野菜のトレビスといったところも高価格帯の飲食店によっては需要があるので取り扱っています。
ただし、むき玉ねぎや長ネギはどうしても円安と言われる今でも、国産よりも外国産の方が安いので輸入品を扱うことが多いです。
2025年1月後半の相場でいうと、輸入に比べて国産の人参が倍で長ネギが1.5倍。玉ねぎの場合も、皮がむけてある状態だとしても、国産の方が1.5倍ほど高値になってしまうのが理由です。どれも中国からの輸入品になります。

近年需要が増えているトレビス
-他の業界に比べて多くの品目を取り扱う機会が多いかと思いますが、どのように青果物を仕入れているのでしょうか。
当社の強みとして、グループ会社に本卸とよばれる横浜丸中青果株式会社があるので定番とよばれる品目では市場から仕入れることが多いです。ただ、近年は販売方法の多様化や気候変動の影響から青果物自体が市場に無いことも少なくないので、生産者と直接契約して買うことも増えています。
それ以外のハーブのような品目は、市場にそこまで出回ることも多くない為、生産者から仕入れたり、特定の変わった品目に強い業者が世の中にはあるので、そこから仕入れることが多いです。

横浜市場センター株式会社で扱われる人参
飲食業界で求められる青果物について
-生産者から直接仕入れることもあるとお伺いしましたが、業界で青果物に求める特徴などはどんなものがあるのでしょうか。
他の業界に比べて、飲食関係は店に届いたらすぐに使われます。例えば、トマトだったらスーパーや加工関係では在庫置き場も広いですし、すぐに消費者に買われる訳ではないので、ある程度棚持ちも必要になり、若干青い状態で出荷することを求められることもあります。それに比べて、飲食店では一回に大量に出荷して在庫にするわけにはいかないので、1回のロットが少量な分、届いてすぐ調理できるような食べごろの状態が求められます。トマト以外にも果物関係も同様です。
その他には、お店で出される皿によって味が変わってはいけないので安定した品質の青果物が求められます。また、価格もスーパーのように今日と明日で価格を変えることは簡単にできないので、一定の価格といった点も求められるかと思います。
-店舗によって狙っている消費者の層も変わってくると思いますが、業態によってどのようなニーズがあるのでしょうか。
最近は飲食チェーンを運営する企業の中でも低価格帯の店舗と高価格帯の店舗を別ブランドで両方行っているケースが多いです。なので、1つの企業でも店舗によって求められるニーズも変わってくるのですが、どうしても低価格帯だと価格重視、中価格帯だと品質重視、高価格帯だと変わり野菜や味重視が求められてきます。
だからこそ、そういった多様なニーズに対応できるよう市場や生産者、輸入商社などいろんなところから仕入れることで幅広いラインナップを実現しています。
-生産者の売りたい層や価格帯によって販売先だったり、仕入れる数量だったりが決まって来るかと思いますが、直近だとこんな野菜が足りていないといった話はあるのでしょうか。
特に外食関係で取り扱い数量が上位のトマトが挙げられます。冬から春に掛けて熊本産ものが出回り、その後福島産のものが出てくるのですが、どうしても8~10月に掛けて出回る数量は少なくなってしまいます。この期間の収穫は収量が安定しないため、産地からも契約栽培を敬遠されがちです。。
飲食業界に限った話ではありませんが、昨今は夏場に安定して青果物を集めるのが難しくなっていると感じます。

横浜市場センター株式会社で扱われるトマト
私たちも飲食店側も、普段の業務の傍ら、産地を訪問して新規の品目や出荷先を探そうにも、なかなか難しい実情があります。ただ、言い方を変えると、業界関係者は産地を巡る機会が限定的であることから、生産者側からの「こういった野菜あります」「うちの品目にはこういった特徴があります」というアプローチに、新たな販路獲得や拡大につながる余地が大いにあるのではないかと考えています。そうした申し出を基に、私どもが飲食店側に提案することができますし、生産者側から逆営業されることは決して迷惑なことではなく、ありがたい話だと思います。
生産者から寄せられた質問をぶつけてみた
-ここからは、あらかじめ生産者から募った質問に回答いただきたいと思います。まずは、飲食関係に出荷する場合の最低出荷量について教えてください。
例えば、ハーブとかだと週間200パックとか、加工野菜のようにレタス何千ケースみたいに動くことはありません。大した数量ではないんですけど、多品種少量な分幅広く取り扱えることができます。
定番品目でたくさん出荷できるならいろいろな法人に提案できますし、これぐらいしかありませんと営業してくだされば店舗ごとの提案も可能です。そこまで量での提案を考えなくても大丈夫なところが業界としてはあるのではないでしょうか。
-外食関係では、どのように販売単価が決まっていくのでしょうか。
店舗によっても変わって来るかと思いますが、イメージでいうと、外食は月ごとに単価を決めていきます。例えば、5月のメニューとなったら4月上旬が多いです。
加工関係が年間とか半年での契約単価が多くて、量販関係だと週ごとで単価が決まることが多いです。外食はその間ってイメージですね。
-これまで取引に至った生産者と至らなかった生産者。取引してみたけど続かなかった生産者が居るかと思います。その原因について教えてください。
飲食関係だと、一度メニューが決まってしまうと簡単にありませんとは言えないので、一定での出荷が必要になります。ただ、その中で、昨今だと天候事情など仕方なくどうしても出せないことも少なくないかと思います。
そうした中で、畑の事情だったり、原因ってのを説明してもらえずに、ただただ無いんですと連絡をしてくる生産者は取引を辞めるようにしています。
正直に畑の写真など添えながら根拠を持って教えてくだされば、こちらからも販売先に事情を説明することが出来るのでどうにかなる場合もあります。その上で、今後や来季に向けての対策も一緒に考えることが出来るのですが、理由が分からないままだと相手方も理解してもらうことができないですし、どうせまた同じこと起きるよねと購入先を検討されてしまいます。
そういった時に限って、無いっていってたけど○○に置いてあったよといった話になることも少なくないんですよね、、(笑)
-生産者に求めるスキルや知識はありますか。
実際に青果物を作っているのでその知識があるのは当たり前だと思うのですが、取引先を連れて行ったりした時に快く受け入れてくれたり、話をしてくださったりすると凄くありがたいなと思います。
もちろん、職人肌の人もたくさん居るかと思いますが、先ほどの事情を説明してもらえるとも重なる部分でもありますがコミュニケーションを取るのは大事ですね。

取材時の安齊さん
今後の飲食業界は
-最後に今後予想される業界の動きについて教えてください。
ひと昔前と違っていて挑戦的なメニューが少なっているかと思います。世の中と同じですが、業界としても安定志向になってロスができない傾向になるのではないでしょうか。
また、飲食店で値上げを躊躇しているといった話をしましたが、客足が元に戻らない上に何もかもの値段が上がっている中で、会社を存続させるためは潰れる前に値上げをしていかなくてはいけません。飲食チェーンが値上げといったニュースが流れていますが、今後、業界全体として値上げはされていくと思います。
ただ、農業界も同様で、生産者も資材費も上がり、いよいよ今のままでは成り立たなくなってしまいます。生産者が潰れて仕入れられなくなってしまっては飲食店にとっても元も子も無い話です。気軽に値上げという言葉を使うべきではないのかもしれませんが、再生産可能な価格を業界として追求していく年になっていくのではないでしょうか。
取材協力
横浜丸中グループ
横浜市場センター株式会社
横浜市場センター株式会社