旬とは?
その野菜の味が最も良い食べごろの時期を旬と言い、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなり、手頃な価格でおいしく栄養価の高い野菜を手に入れることができます。
旬には三つの段階があります。その野菜が出始める「走り」、収穫・出荷のピークを迎える「盛り」、時期が終わりにさしかかる「名残」です。「走り」の野菜はみずみずしくフレッシュ。可能であれば生のまま、あるいは水分を生かした調理方法が適しています。「盛り」は食べごろのベストタイミング。栄養価が高く価格も安くなるので、いろいろな調理法でたっぷり楽しんで。「名残」は水分量が少なくなり味が凝縮されるので加熱調理がおすすめです。
6月が「走り」の野菜
6月になると、夏野菜が次々に出回り始めます。煮ても焼いてもおいしいシシトウガラシやサヤインゲン、塩茹でで甘みを引き立てるトウモロコシやエダマメなど、走りの時期ならではのフレッシュな味わいをひと足早く楽しんでみませんか。
シシトウガラシ(シシトウ)
ナス科トウガラシ属の野菜で、原産地は中南米です。トウガラシには辛み種と甘み種がありますが、シシトウは甘み種で辛くないのが特徴。先端が獅子の口に似ていることがその名の由来です。和名で甘トウガラシと呼ばれるものの一種で、ヨーロッパで改良されたピーマンの仲間にあたります。主な産地は高知県で通年出荷されていますが、6月ごろからは千葉県や茨城県など関東産のものが出回り始め、夏に旬のピークを迎えます。
栄養
カロテン、ビタミンC、カリウムが豊富。種に含まれる香り成分のピラジンには、血行を促進する働きがあるとされています。
食べ方
種とワタも食べられますが、まれに辛みが強いものもあるので、気になる場合は取り除きます。丸ごと加熱調理する際は破裂を防ぐために、竹串で穴を開けるか切り込みを入れるのがポイント。カロテンは油と一緒に摂ると吸収率が高まります。
選び方
ヘタを含めて全体が鮮やかな緑色で、張りとツヤのあるものが新鮮です。
保存方法
ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存し、1週間程度で使い切りましょう。
調理例
シシトウとじゃこの炒め物、シシトウの焼きびたし、ししとうと新タマネギのかき揚げ
トウモロコシ
イネ科トウモロコシ属の植物で、米、麦と並ぶ世界三大穀物の一つ。原産地はアメリカ大陸で、コロンブスによりヨーロッパに伝わり、日本では明治時代の北海道開拓を機に本格的な栽培が始まりました。用途に応じてさまざまな品種がありますが、日本では甘み種のスイートコーンが主に野菜として食されています。粒の色によってイエロー種、ホワイト種、黄白が混ざったバイカラー種などがあり、若採りしたベビーコーン(ヤングコーン)は5〜6月に出回ります。主な産地は、茨城県、千葉県、山梨県などです。
栄養
主成分は炭水化物。食物繊維が豊富で、粒の根元の胚芽部分には亜鉛、鉄、ビタミンE・B1・B2などの栄養が含まれています。
食べ方
芯ごと茹でる・蒸す・焼くなどしてそのまま食べるのが一般的。外皮は食べる直前にむきます。実を外してサラダ、スープ、炒め物、かき揚げなどの具材としても重宝します。ホワイト種は皮が薄く柔らかいので生食もできます。ベビーコーンは加熱調理または生のまま、芯ごと食べることができます。
選び方
実が先端まで詰まり、ふっくらとツヤがあるものが新鮮です。皮は濃い緑色のものを選びましょう。ひげが褐色のものが良く熟しています。
保存方法
鮮度が落ちやすいので、購入した当日中に食べるのが理想です。保存する場合は、かために茹でラップで包んで冷蔵庫へ。2~3日以内に食べ切りましょう。冷凍する場合は、茹でたものを輪切りにして冷凍用保存袋に入れると便利です。
調理例
生トウモロコシのサラダ、トウモロコシの冷製スープ、ヤングコーンの皮ごとグリル
サヤインゲン
マメ科インゲンマメ属の野菜で、インゲンマメを未熟なうちに若採りし、さやごと食します。原産地は中央アメリカからメキシコで、江戸時代に中国の隠元禅師が日本へ伝えたとされ、その名の由来となっています。丸さやタイプのほか、モロッコインゲンのような平さや品種もあります。6~9月ごろが旬で、走りの時期はみずみずしく柔らかな食感が魅力。千葉県、茨城県、鹿児島県などが主な産地です。
栄養
たんぱく質、カロテン、ビタミンCの他、ビタミンB群、カリウム、カルシウムなどが豊富。さやには、疲労回復に役立つアスパラギン酸や、必須アミノ酸のリジンも含まれています。
食べ方
茹でてから和え物やお浸しにするのが定番。煮物や炒め物にも活躍しますが、下茹ですることで青臭さが和らぎます。茹でる前に塩をまぶして板ずりするとうぶ毛が取れて、色鮮やかに仕上がります。
選び方
細めでまっすぐ、緑色が鮮やかで張りがあるものを選びましょう。さやの先までピンとしているものが新鮮です。
保存方法
向きをそろえてラップで包み、冷蔵庫の野菜室で保存します。
調理例
サヤインゲンの白和え、サヤインゲンとチーズの生ハム巻き、サヤインゲンと新ジャガの塩バター炒め
エダマメ
マメ科ダイズ属の一年生植物で、ダイズ(大豆)の若ざやを未熟なうちに枝ごと収穫したものです。青豆(白毛豆)、茶豆、黒豆の3種類に大別され、エダマメ専用の品種も多数あります。関東産が5月末ごろから出回り始め、北関東、東北、新潟で収穫が始まる7~8月に旬のピークを迎えます。
栄養
たんぱく質、ビタミンB1、カルシウム、葉酸などが豊富で、ダイズにはないビタミンCも含まれています。
食べ方
さやごと塩茹でして実を食べるのが一般的。茹でる前にさやの両端をハサミでカットすると塩味が染み込みやすくなります。茹でた実は薄皮をむいて、混ぜご飯や炒め物、かき揚げ、サラダ、すり潰してずんだにするなどアレンジも自在です。
選び方
枝付きのものが新鮮です。実がふっくらと詰まっていて、さやの緑色が鮮やかなものを選びましょう。
保存方法
枝から外すとすぐに味が落ちるので、購入後はすぐに茹るのが基本。保存する場合はかために茹でて冷凍します。
調理例
エダマメとじゃこの混ぜご飯、エダマメとナスの揚げびたし、エダマメとクリームチーズのポテトサラダ
6月が「盛り」の野菜
季節の変わり目を感じさせる香味野菜や伝統野菜が「盛り」を迎えます。薬味や漬物に欠かせないシソやラッキョウ、みずみずしいシロウリ、独特の食感が楽しいキクラゲなど、この時期ならではの風味豊かな食材を楽しんでみませんか。
シソ (紫蘇)
シソ科シソ属の香味野菜で、もともとは赤ジソのことを指します。青ジソはその変種で大葉(オオバ)として広く親しまれています。原産地は中国と見られており、日本では縄文時代の遺跡から種子が見つかっています。。赤ジソは夏が旬で梅干し作りに欠かせない食材で6月に出荷のピークを迎えます。青ジソは通年で出回っていますが、旬は7~10月ごろ。全国で栽培されており、赤ジソは特に愛知県や群馬県で特に生産が盛んです。
栄養
カロテン、ビタミンCが豊富で、カルシウムやカリウムなどのミネラルも多く含んでいます。香り成分であるペリルアルデヒドには防腐作用があります。
食べ方
葉と実を食用とし、青ジソは薬味や天ぷら、赤ジソは梅干しやしば漬け、ジュースに用いられます。実の部分(穂ジソ)は、刺身のつまやしょうゆ漬けにします。
選び方
赤ジソは枝付きの束で売られていることが多いですが、葉に張りとツヤがあり、みずみずしいものを選びましょう。青ジソは葉の緑色が濃いものが新鮮です。
保存方法
枝付きの赤ジソはバケツなどで切り口を水に浸して室内で保管できます。枝から外した葉はビニール袋に入れて野菜室で保管します。塩漬けにすれば冷蔵で1年ほど保存できます。
調理例
赤ジソとナス・キュウリの浅漬け、赤ジソジュース、梅干し用赤ジソの塩漬け
ラッキョウ
ヒガンバナ科ネギ属の多年草で、中国が原産。平安時代に薬用植物として日本へ伝わり、江戸時代に入ってから野菜として広まりました。地中にできる肥大した鱗茎(りんけい)を食用とし、独特の風味とシャキッとした歯応えが特徴です。旬は5~6月と短く、鳥取県、鹿児島県、茨城県などが主な産地。特に鳥取県の福部(ふくべ)で栽培される「砂丘ラッキョウ」は、GI(地理的表示)にも登録されたブランド品です。 軟白栽培して若採りしたものは「エシャレット」として生食されますが、西洋野菜の「エシャロット(シャロット)」とは種類が異なります。
栄養
食物繊維が豊富。辛み成分の硫化アリルがビタミンB1の吸収を助けます。
食べ方
甘酢漬け、塩漬け、しょうゆ漬けなどの漬物としての利用が一般的。薄切りにして生食したり、炒め物にも使えます。
選び方
土付きで、粒がそろってふっくらとし、切り口から芽先が伸びていないものを選びましょう。大粒で傷がないものが良質です。
保存方法
土付きのものは新聞紙で包んで、冷蔵庫の野菜室で2日保存できます。できれば購入した日のうちに調理するのが理想です。
調理例
ラッキョウと豚肉のショウガ炒め、ラッキョウとキュウリの和風マリネ、ラッキョウ入りタルタルソース
シロウリ (白瓜・越瓜)
ウリ科キュウリ属の果菜類で、「アサウリ」「ツケウリ」「カタウリ」などとも呼ばれます。平安時代に中国大陸南部より渡来したとされ、日本各地に地方品種が存在します。京都の「桂うり」、東京の「東京大越うり」、愛知の「かりもり」、大阪の「玉造黒門越瓜」などは、伝統野菜として親しまれています。外皮は白、緑、縞模様があり、長さは20~40cmと細長く、果肉は淡泊で食感は締まったものから柔らかいものまでさまざまです。5月ごろから出回り、6月に旬の盛りを迎える夏野菜です。
栄養
水分が多く低カロリー。カリウムのほか、ビタミンCもわずかに含まれています。
食べ方
奈良漬け(粕漬け)、みそ漬、浅漬けなどの漬物のほか、酢の物、炒め物、煮物など幅広く利用できる万能野菜です。種とワタを取って調理します。皮はむかずに食べることもできます。
選び方
皮に張りとツヤがあり、ずっしりと重みのあるものを選びましょう。
保存方法
乾燥しないように新聞紙で包んでビニール袋に入れ、冷暗所または冷蔵庫の野菜室で保存します。早めに使い切るのが理想です。
調理例
シロウリとカニ缶の酢の物、シロウリと油揚げの煮びたし、シロウリと鶏ひき肉の中華風炒め
キクラゲ (木耳)
キクラゲ科キクラゲ属のキノコで、独特のコリコリとした食感が特徴で、木に生える耳のように見えることが名前の由来です。中国料理には欠かせない食材で、乾燥品が多く出回っていますが、近年は国産の生キクラゲとして主にアラゲキクラゲが流通しています。生育環境として高温多湿を好むため、梅雨から夏にかけてが旬の盛りです。鳥取県、山口県、大分県、茨城県、熊本県が主な産地です。
栄養
低カロリーで食物繊維が多く、整腸作用が期待できます。乾燥品にはビタミンDが豊富に含まれています。
食べ方
加熱調理して、炒め物や汁物などの具材として使用します。酢の物やサラダに用いる場合も、必ず湯通しをします。
選び方
生キクラゲは肉厚で弾力があり、光沢の良いものを選びましょう。
保存方法
ラップに包んで冷蔵庫の野菜室で1週間程度保存できます。
調理例
生キクラゲの天ぷら、生キクラゲと卵の中華炒め、生キクラゲとキュウリの和え物
6月が「名残」の野菜
6月は、春から親しまれてきたソラマメやグリーンピースなどの豆類が名残の時期を迎えます。香りや甘みがより濃くなるこの時期に、さやごと焼いたり、炊き込みご飯やポタージュなどで味わえば、春の余韻とともに初夏の訪れが感じられます。これらの豆が終わるころ、サヤインゲンやエダマメなど夏の豆類が出番を迎え、豆好きには嬉しい端境期ならではのラインナップが楽しめます。
ソラマメ (空豆・蚕豆)
マメ科ソラマメ属の一年草で、古くから栽培されてきた歴史を持ち、原産地については諸説あります。さやが空に向かって伸びることから「空豆」または、形が蚕のまゆに似ていることから「蚕豆」とも書きます。完熟したものは豆類としてさまざまな食品に加工され、野菜としてのソラマメは未熟な豆を塩茹でなどで食します。旬のピークは春ですが、名残の時期には、春から出荷している茨城県や千葉県の他、宮城県、新潟県、秋田県などの夏出荷産地からは「終わりの初物」が出回ります。
栄養
たんぱく質が多く、ビタミンB1・B2・C、葉酸、カリウムなどをバランス良く含んでいます。
食べ方
さやから外して塩茹でにするのが定番ですが、さやごとグリルで焼くと香ばしさも味わえます。煮物、炒め物、スープの具などに利用でき、好みで薄皮も食べられます。
選び方
外から見て豆の形がふっくらとそろい、さやの緑色が濃く、張りとツヤのあるものを選びましょう。
保存方法
豆が空気に触れると鮮度が落ちやすいので、なるべく早めに調理しましょう。保存する場合はかために茹でて冷蔵で1~2日、冷凍で1カ月ほどが目安です。
調理例
ソラマメのさやごとグリル焼き、ソラマメとベーコンの炒め物、ソラマメとエビの塩ガーリック炒め
グリーンピース
マメ科エンドウ属の野菜で、青エンドウの未成熟な種子を食用とします。サヤエンドウやスナップエンドウとは異なり、さやは食べず、中の実だけを利用します。原産地は中央アジアから中近東地域とされ、古代ギリシャ時代にはすでに栽培されていた歴史ある作物です。日本では明治時代に野菜として普及しました。缶詰や冷凍品も流通していますが、生で楽しめるのは春から初夏の旬のみ。名残ならではの甘みと香り、ほくほくとした食感が魅力です。和歌山県が全国1位の産地ですが、この時期は福島県、千葉県、茨城県など東日本の産地から多く出荷されます。
栄養
たんぱく質、炭水化物、カリウム、亜鉛、ビタミンB群、食物繊維などをバランス良く含んでいます。
食べ方
さやから外した種子(実)を塩茹でにしてそのまま食べる他、スープや煮物、炒め物、炊き込みご飯など幅広い料理に活用できます。
選び方
さや全体が鮮やかな緑色で、ふっくらとした張りのあるものを選びましょう。
保存方法
生で保存する場合はさや付きのままビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。1~2日以内で使い切りましょう。冷凍の場合は茹でてから保存します。
調理例
グリーンピースご飯、グリーンピースのポタージュ、グリーンピースの卵とじ煮
春の名残と夏の走りで季節の移ろいを味わう
6月は春野菜が名残となり、夏野菜が走りから盛りへと移ろう季節。みずみずしいトウモロコシやサヤインゲン、香り高いシソやラッキョウ、風味を増したソラマメやグリーンピースなど、多彩な野菜がそろいます。季節の変わり目にふさわしく、この時期だけの短い旬の味覚もあります。
この時期ならではの食感や香りを生かして、食卓に初夏の彩りと涼やかさを取り入れてみてはいかがでしょう。季節のうつろいを感じる旬の野菜が、日々の食事に豊かさを添えてくれます。
参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|高橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 花図鑑 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)
新食品成分表FOODS2023(新食品成分表編集委員会編|東京法令出版発行)
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