ワイングラスで堪能!ハイエンドなボトリングティー
「良質なお茶がマーケットに受け入れられていないことが一番の課題です」と話すのは、カネス製茶の小松元気(こまつ・げんき)さん。同社は1957年の創業から、お茶の製造や卸販売を事業としてきました。
「京都の玉露など、有名産地の高品質なお茶もあります。ただ国内においては安価なお茶へのニーズが大きい」。
抹茶の人気もあり、2024年の緑茶輸出額は過去最高の364億円 です。その一方で国内では縮小傾向 にあります。
「静岡は煎茶や緑茶が県産品ではありますが、抹茶の有名な地域ではありません。その中で、これまでと違った消費の仕方を追求するための一つの答えがボトリングティーです」
2022年、同社は「IBUKI bottled tea」というブランドで、ボトルに詰めたリキッドタイプの高級茶を販売。小松さんは事業責任者として携わってきました。
ワイングラスで香りや味わいを楽しめるIBUKI bottled tea。同社は「新しい日本茶体験』とうたいます。そしてIBUKI bottled teaは、2024年、初めてコラボレーション商品を生み出しました。
「だしのようなうまみ」帝国ホテルのバーテンダーがうなった味わい
IBUKI bottled teaとコラボレーションしたのは、「ANoTHER IMPERIAL HOTEL」 。株式会社帝国ホテルによる「日本各地の『良いもの、良いこと』を厳選 」したオンラインモールです。
ANoTHER IMPERIAL HOTELのアンバサダーであり、帝国ホテルのバーテンダーのオールドインペリアルバー副支配人、井戸真(いど・まこと) さんはIBUKI bottled teaを初めて飲んだ衝撃を次のように話しました。
「だしを飲んでいるかのような強烈なうまみ。お茶の概念が覆されましたね。『この味わいを、ぜひ多くの方に感じてほしい。味わってほしい』と思って、コラボレーションをスタートさせました」
コラボレーションにあたっては、味もボトルも全てオリジナルのものを開発しています。
「商品に対するこだわりや想いはもちろんのこと、お客様が安心・安全に楽しめる商品をお届けする、という考えにも共感しました。帝国ホテルでも一番大切にしていることです」と井戸さん。
小松さんも「お客様への誠実な対応と、安心・安全な技術力で安心と安全なものを提供することは、私の曽祖父が創業した頃から変わらず受け継がれています」と話します。
静岡の茶畑や製造工場なども訪問。共同開発のプロセスとは
IBUKI bottled teaでは、その安心・安全の証明として、FSSC 22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格) を取得。その上でさらに、南アルプスなどを源流とする大井川 の水を、製造工程で軟水化。「超軟水 」を使うことで日本茶の繊細さを引き出しているといいます。さらに茶葉は全て静岡県産。これを独自にブレンドしています。
「味作りから、ブレンド、香りづけも全部、自分たちのレシピでやっています」と熱を込める小松さん。
コラボ商品では、帝国ホテルの担当者と打ち合わせを重ねたそうです。
「ANoTHER IMPERIAL HOTELを利用するお客様が求めるもの、帝国ホテルが届けたいブランド、それらをどのように表現するかが重要でした。またお酒を飲めない人や、あえて飲まないソバーキュリアス を選ぶ人たちのニーズを満たすこともポイントだったと思います」(小松さん)
「小松さんから出していただいた試作品から、私たちが最初に感じた衝撃をお客様にも感じていただけるように追求しました。一方で価格の面でも、手に取っていただけるよう協力を重ねました」(井戸さん)
実際に茶畑などにも足を運んだ井戸さん。「とても美しい地域でした。特に印象的だったのは茶畑のあいだを年配のご夫婦がとことこと進みながら、笑顔で穏やかに作業をしていたことです。生産者がお茶の栽培を守っていることを実感しました」
味の変化を楽しめる「UTSUROI」
コラボ商品の名前は「UTSUROI」。
「だしのようなうまみから、温度や時間の変化とともに茶葉の甘い香りに変わっていく。味の“移ろい”を楽しんでもらいたい」と井戸さん。まずは常温で楽しみ、次にグラスを回して空気を含ませて飲み、更に最後は氷を一つ入れて味の切れを感じるという飲み方がお勧めだそうです。
ボトリングティーの認知はまだこれからだという小松さん。国内外に広めたいと話します。「ボトリングティーを入り口に、日本茶への関心度を上げたいですね」。
井戸さんも「帝国ホテルが販売することで、地域の活性化にも貢献したいです」と今後の展望を見据えています。ANoTHER IMPERIAL HOTELとしてもこのコラボ商品をきっかけに、カネス製茶、ひいては茶産業全体へ関心が寄せられることを期待しています。
<取材協力>
ANoTHER IMPERIAL HOTEL
カネス製茶