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「日本の米は世界一」を歌う打首獄門同好会 音楽で応援と感謝の声を届ける

相馬はじめ

ライター:

「日本の米は世界一」を歌う打首獄門同好会 音楽で応援と感謝の声を届ける

日本の米は世界一。国内のみならず海外からも支持が厚いインディーズロックバンド「打首獄門同好会」をご存じでしょうか。打首獄門同好会は、骨太なロックサウンドとは裏腹に日常をテーマにしたユーモアあふれる歌詞により、多くの人を惹きつけるバンドです。2015年にリリースした「日本の米は世界一」を皮切りに大ブレイク。テレビ出演や日本武道館ワンマンライブ、47都道府県ツアーライブを果たすなど、今では日本の音楽シーン最前線での活躍を見せています。そんな打首獄門同好会のリーダー・大澤敦史(おおさわ・あつし)さんに、「日本の米は世界一」が生まれた経緯や農業に関する他の楽曲にまつわる話を聞きました。

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打首獄門同好会 大澤敦史さん アイコン

大澤敦史さん

打首獄門同好会ギター&ヴォーカル兼リーダー。 ​作詞作曲、バンド運営を担当し、​レコーディングやミックス以外にも多岐にわたる役割を担う。​同好会の長であることから愛称は「会長」。 同バンドは​元農林水産省大臣の吉川貴盛氏より「FANバサダーロック」に任命され、安倍元首相へ表敬訪問したことも話題となった。

「日本の米は世界一」の誕生秘話。きっかけは鮎の塩焼き定食

──今では世間からも多くの認知を得ている打首獄門同好会の代表曲「日本の米は世界一」。この曲は農業界を活気づけることを狙って作られたのでしょうか。

実はそのような意図をもって作ったわけではないんです。この曲が生まれたのは、鮎の塩焼き定食についてきた白米を食べたことがきっかけでした。
自分たちはYouTubeで「10獄放送局」というインターネット番組をかれこれ10年以上やっていまして、その番組の中で「原付バイクで東日本縦断」という企画に挑戦していたときのことです。東京からスタートし、埼玉、群馬を走り抜け、新潟県魚沼市に入ったあたりでお昼時を迎えたんですね。
付近の店を調べてみると、鮎の塩焼きが食べられる「堀之内やな場」という定食屋を見つけました。「鮎の塩焼きを食べたい!」ということで、ここで昼食をとることにしたんです。
バイクを走らせ定食屋へ到着し、目当てである鮎の塩焼きに白米や味噌汁がセットになった定食を注文しました。食べてみると、鮎の塩焼きは当然ながらうまい、ただ主役の鮎がかすむほど、ついてきた白米がおいしかったんです。スタッフも「米がうまい!うますぎる!」と大騒ぎするほどでした。
「この感動は歌にしなければ」という使命のもと、「日本の米は世界一」が誕生したんです。リリース後には想像だにしないほど多くの反響をいただきました。しかし、まさか自分たちの代表曲になるとは思ってもいませんでしたね。

──鮎の塩焼きがかすむほどおいしかった白米との出会いによって生まれた曲だったんですね。新潟県魚沼市という日本屈指の米どころであったことも大きいように思います。発表後の反響についても聞かせてください。

「日本の米は世界一」リリースをきっかけに、六日町(現:南魚沼市)協力のもと、自分たちで米を作るプロジェクトが始動したんです。六日町観光協会の方と地元の農家さんに手伝ってもらいながら、手による田植えから稲の刈り取り、稲架掛け(はさがけ)までしました。
自分は小学生のころ栃木県宇都宮市に住んでいました。登下校の道は田んぼが一面に広がるところで、田んぼにはなじみ深い思い出がたくさんあるんです。それでもともと米作りには親近感があったので作業への抵抗はなく、むしろ楽しかったですね。
収穫した「打首獄門同好”米”」はライブで振る舞ったほか、「獄ひかり」と名づけて販売も行いました。

新潟県六日町での米作りプロジェクトの様子

まだまだある。農業を盛り上げる打首ソング一覧

打首獄門同好会 「日本の米は世界一」 ライブ写真

──米に関連した楽曲では「日本の米は世界一」の他にも、「パ」や「KOMEKOMEN」といったナンバーもありますよね。

自分たちの楽曲はコミカルな歌詞に定評があります。「パ」はあえて歌詞を「パ」と「パールライス」だけに絞ることで、曲そのものの魅力で勝負したいという意図があったんです。
「パ」という単語を選んだのは、トランペットなどの管楽器が発する音と近いニュアンスを感じたからなんです。そして曲作りするなか「パ」という単語を繰り返し口にしていたら「パールライス」に行き着きました(笑)

──パールライスのCMを知っている方なら、懐かしさを感じる曲になるかと思います。ベトナム料理ではおなじみの米粉麺、フォーのことを歌っている「KOMEKOMEN」もユーモアに富んでいますよね。

フォーには前々から好意的だったんです。中華麺やうどん、そばでは味わえないフォーならではのおいしさがあるじゃないですか。「KOMEKOMEN」を制作する中で、フォーの原材料として使われている米のほとんどがタイ米であることを知りました。日本の米は水分や粘性が異なるため、加工しづらいとのこと。
少し話はそれますが、タイ米といえば1993年に起きたタイ米騒動がありましたよね。普段食べ慣れないタイ米に批判が寄せられた出来事だと認識しています。
この騒動に対して自分は、その土地で生まれた食材はその土地の調理方法を踏襲する、リスペクトすることが大切だと思うんですね。これまでの食卓にただただタイ米を並べようものなら、マッチしないのは当然で。日本がタイ米に適した調理法ごと取り入れていたのなら、魅力に気づくきっかけになっていたかもしれないなと思います。

──確かに、食材を取り入れるなら調理法ごと取り入れるのが道理ですよね。最近ではタイ米を利用したビリヤニもブームになり、コンビニでも購入できるほど身近になっています。もっと早く受け入れられていたのなら、いまよりも豊かな食文化が広まっていたかもしれませんね。

「牛乳推奨月間」冷蔵庫には常に4本をストック

──タイ米騒動に続き、2020年にはコロナの影響も相まって牛乳の消費量が激減するといった、農業界に大きな打撃となることがありましたよね。そんな状況下にリリースされたミニアルバム「2020」には、「牛乳推奨月間」という牛乳の消費を後押しするナンバーが収録されています。こちらを作られた背景もお聞きしたいです。

「牛乳への愛は伊達じゃないぞ」、という気持ちで歌っている曲です。牛乳は自分にとってなくてはならない飲み物で、自宅の冷蔵庫には常に4本ストックしているほどです。子どものころから大好きで、親に「牛乳は一日一本(1リットル)まで!」と制限されるほどの少年でした。
「牛乳推奨月間」では、自分のありのままの生活を歌にしています。コーヒーを飲むときは必ず牛乳で割ってアイスカフェラテにしますし、筋トレ後に作るプロテインドリンクは水でなく牛乳で作ります。ちなみに、好んで飲む銘柄は「明治おいしい牛乳」です。

この曲の根底にあるのは、いわゆるコロナ禍の最中に学校給食に使うはずの牛乳が余り、廃棄されるという事実を耳にしたことです。牛乳好きとしては聞き捨てならない状況が続いていたんですね。
そこで自分ができる方法で酪農業を応援したいという気持ちのもと、「牛乳推奨月間」が誕生しました。そして親交のあった農林水産省のYouTube担当者から「ミュージックビデオを作りたい」と提案があり、まさかのコラボに至りました。

農林水産省が作製した牛乳推奨月間プロモーションビデオ

──牛乳に深い愛を持っているからこそ、注目を集めたのではないかと思います。実際、このプロモーションビデオは、YouTubeで11万回以上視聴されています。ノリのいいナンバーなので、この曲を聞きながら牛乳を飲むのもまた一興かもしれません。

農家とバンドマン。業種は違えど同じクリエイター

打首獄門同好会アー写2

──2025年を迎えた日本。昨今の米の値上がりに関する話題についてはどう思われていますか。

米の価格上昇とともに農家さんの利益も向上するなら、個人的には大いに「アリ」だと思っています。ただニュースやSNSを見ている限りでは、そう簡単に上手くまとまる話ではなさそうだなと、素人ながら感じています。要因はそれこそ多岐に渡ると思いますが、中でも少し前に話題になった米の買い占め・高額転売問題なんかは、本当に腹の立つ話ですよね。
米のみならず、日本で作られる農産物の品質は世界的にみても高いとたびたび耳にしますし、実際食べていると本当にそうなんだろうなと思います。たまにライブの差し入れで国産の名高い銘柄のフルーツをいただくことがあるんですが、あまりのおいしさにスタッフ全員で奪いあうように食べています(笑)。
こうした日本の誇るべき農産物と、それを作る農家さんがしっかり守られる仕組みであってほしいですね。

──同感です。私たち消費者が、価格だけでなく、その裏にある価値やストーリーにも目を向けることが、状況を変える大きな一歩になるのかもしれません。このように混乱や不安が多い状況だからこそ、「日本の米は世界一」のように気持ちを前向きにしてくれる曲は、農業界を含め社会に必要不可欠だと思います。

自分は単においしいと感じたものを素直においしいと歌にしているに過ぎないのですが、そこにはおのずと感謝の気持ちも込められています。それが結果的に応援歌のような効力を持つこともあると思います。
歌を通して多くの人たちと気持ちを共有し、共感を得られるのが音楽の力です。これからも感謝と応援の気持ちを音楽に込め、歌い続けていきます。

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