マイナビ農業TOP > セミナー > 【開催レポート】令和7年度 農村プロデューサー養成講座 入門コース「地域づくり総論」

タイアップ

【開催レポート】令和7年度 農村プロデューサー養成講座 入門コース「地域づくり総論」

【開催レポート】令和7年度 農村プロデューサー養成講座 入門コース「地域づくり総論」

地域への愛着と共感を持ち、地域住民の思いを汲み取りながら、地域の将来像やそこで暮らす人々の希望の実現に向けてサポートする人材である「農村プロデューサー」への成長を目指し、入門コースでは地域づくりに造詣の深い方々を講演者として招いて、農山漁村地域における創意工夫にあふれる地域づくりのプロセスの習得を目的とした講演を実施しています。
本レポートでは入門コース 第1回「地域づくり総論」の講演内容を抜粋し掲載いたします。

twitter twitter twitter twitter
URLをコピー
【令和7年度】農村プロデューサー養成講座
入門コース 第1回 地域づくり総論
講師:明治大学 農学部 教授 小田切 徳美 氏

農村プロデューサーとは?期待される機能

農村プロデューサーとは、地域の希望実現をサポートする人材です。期待される機能としては、地域に消えない火をともす「着火型」、地域に寄り添う「伴走型」、解決策を探る「解放探求型」、ネットワークを活かす「ハブ型」があり、この4つを兼ね備えた方を農村プロデューサーと呼んでいます。

現代の農村は、人の空洞化・土地(利用)の空洞化・ムラの空洞化という「3つの空洞化」が覆っていますが、その根底にはより深刻な「誇りの空洞化」が存在します。これは、住民が地域に住み続ける意味や意義を見失い、“あきらめ”の感情が地域で起こってしまっていることです。農村問題には、住民の意識が関係してその理解と対応が農村プロデュースには重要です。人々の心に再び火を灯し、誇りを再構築する「着火型」のアプローチが、これからの地域づくりにおいて重要となっています。

そもそも地域づくりとは?地域づくりの3つの本質

私たちが向き合う「地域づくり」とは、一体何なのでしょうか。それは、人口が減少するという現実を前提とした「持続的低密度居住地域の創造」に他なりません。人口が減るから消滅するというのではなく、人口密度が低くても、次の世代が豊かに暮らし続けられる新しい社会の仕組みを、そこに住む人々が主体となって創り出すこと。その原則として、「内発性」「多様性」「革新性」が重要であることが、各地の取り組みから明らかになっています。

これをより具体的に体系化したものが「人材」「コミュニティ」「仕事」の三本柱です。人材を育て、コミュニティを育み、仕事をつくる。この3つが好循環を生み出しながら一体的に進められていくことこそが、地域づくりの本質です。

地域づくりの実践的ポイント

約30年にわたる地域づくりの実践と研究から、その成功には5つの重要なポイントがあることが分かってきました。それは①新しい内発的発展、②関係人口、③地域内経済循環、④多業型経済、そして⑤プロセス重視です。中でも特に重要なのが「新しい内発的発展」「関係人口」「プロセス重視」の3つです。

新しい内発的発展と「関係人口」

まず「新しい内発的発展」とは、地域が内に閉じるのではなく、外部との積極的な交流をエネルギーに変えていく考え方です。外から来る人々が、地域住民が見過ごしていた資源の価値を”鏡”のように映し出す「交流の鏡効果」によって、内側から新たな活力が生まれます。

この重要な外部の力となるのが「関係人口」です。彼らは移住者でも観光客でもない、都市などに住みながら地域と継続的に関わる人々を指します。その背景には、SNSの発展や若者のライフスタイルの多様化や、地域との関係性自体に価値を見出す「関わり価値」という新しい価値観の登場があります。

しかし、関係人口を単に呼び込むだけでは「お客様」のままで、地域に深く溶け込むことはありません。彼らが真の協力者となるためには、地域住民と関係人口が共に汗を流せる「ごちゃまぜの場」が不可欠です。さまざまな方と連携して、一体感を育むことが、その力を最大限に引き出す鍵となります。

「プロセス重視」と当事者意識の醸成

もう一つの重要な要素が「プロセス重視」です。地域づくりでは、補助金獲得などをゴールと捉え、すぐに成果を求める傾向がありますが、それでは本質的な変化は生まれません。重要なのは、変化に至るまでの過程、すなわち「プロセス」そのものをデザインし、時間をかけて取り組むことです。

例としてあがるのが、新潟中越地震の復興過程です。拙速なV字回復を目指した地域よりも、住民との対話を重ね、小さなお祭りを復活させるなど、地道な「足し算の支援」で地域の土台を時間をかけて固めた地域こそが、その後の飛躍的な「掛け算の支援(事業導入など)」を成功させました。この時間のかかるプロセスこそが、地域づくりで最も大切な「当事者意識」を醸成します。

最終的な目的は、単なる課題解決ではなく、住民一人ひとりが「他人ごと」を「自分ごと(I)」として捉え、さらに「地域ごと(We)」へと意識を昇華させる「主体形成」にあります。そのための対話や試行錯誤の時間はコストではなく、未来への最も重要な「投資」なのです。

私たちが目指す地域像「にぎやかな過疎」とは

こうした地域づくりの実践が進む一方で、新たな課題も生まれています。それは、前向きな変化を遂げる地域と、停滞から抜け出せない地域の間に生まれる「むら・むら格差」です。面白い人や活動がある地域には移住者や関係人口が集まり、好循環が生まれる一方、そうでない地域との差は開いていく。これは、従来の都市と農村という地理的な格差とは質の異なる、根深い問題です。この格差の正の極に生まれるのが、私たちが目指すべき地域像「にぎやかな過疎」です。その本質は、多様な主体の“交錯(ごちゃまぜ)”にあります。
地域住民、移住者、関係人口、企業、NPO、大学といった様々な人々が入り乱れ、“わいわい・がやがや”している状態。人口は減っていても、人が人を呼び、仕事が仕事を生む好循環がそこにはあります。

この活気を生み出す「地域の縁側」のような場を創り出し、運営していくことこそ、農村プロデューサーの重要な機能です。多様な人々を巻き込み、未来への希望を仕掛けていってほしいと願います。

本レポートは令和7年7月4日に行われた「農村プロデューサー養成講座」入門コース 第1回 地域づくり総論(講師:小田切 徳美 氏)の講義を元に、一部内容を抜粋して編集しました。


農村プロデューサー養成講座 実践コースの参加者募集中!

入門コースを経て、さらなる現場力を身に付けるための実践的な研修コースです。地域の中での対話が求められる昨今、経験豊富な地域づくりのスペシャリストから、それらのノウハウも学ぶことができます。

セミナー名 農村プロデューサー養成講座 実践コース
オンライン講義 開催日 1日目:令和7年9月10日(水)9:00~12:00
2日目:令和7年9月17日(水)9:00~12:00
※両日の参加必須
対面講義 開催日 岡山会場:令和7年10月01日(水)~ 03日(金)
金沢会場:令和7年10月15日(水)~ 17日(金)
仙台会場:令和7年10月27日(月)~ 29日(水)
東京会場:令和7年11月10日(月)~ 12日(水)
※いずれか一つの会場に参加必須

お申し込み方法   \お申込みは、8月17日(日)まで!/
★詳細は特設ページをご覧ください★
タイアップ

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE
  • Hatena
  • URLをコピー

関連記事

新着記事

タイアップ企画