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ミニマム・アクセス米(MA米)とは? 日本の食卓に与える影響は

ミニマム・アクセス米(MA米)とは? 日本の食卓に与える影響は

国際的な貿易協定に基づき、日本が最低限輸入する外国産米のことを「ミニマム・アクセス米」と呼んでいます。価格高騰や流通不足により米への関心が高まっている現在、ミニマム・アクセス米や輸入米も注目されつつあります。この記事では、ミニマム・アクセス米の基礎知識、歴史的背景や現状、市場への影響をはじめ、課題や今後の見通しについても解説しています。

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ミニマム・アクセス米の基礎知識


日本政府は米の自給率確保や農家の保護のために米に関税をかけて輸入を制限してきました。一方で、貿易の自由化や多角的貿易を促進したい国家間の交渉により、ミニマム・アクセス米が生まれました。ミニマム・アクセス米を理解するには、まず前提となるミニマム・アクセスそのものの概念について知る必要があります。

ミニマム・アクセスの定義と背景

ミニマム・アクセスとは、日本語では最低輸入量を意味する言葉です。
GATT(関税及び貿易に関する一般協定)の8回目の貿易交渉であるウルグアイ・ラウンドにおいて決まった国際的なルールに基づくものです。

貿易の自由化や多角的貿易の促進を目的とするGATTの貿易交渉の歴史は古く、1947年に23ヶ国・地域の参加で始まります。8回目となるウルグアイ・ラウンドでは123もの国・地域が参加し、1986年から1994年までの長期にわたって交渉が続けられました。

WTOウルグアイ・ラウンドで決まった国際ルール

GATTの貿易交渉は繊維や自動車などの工業製品も対象であるものの、ウルグアイ・ラウンドでは主に農業の分野に重点が置かれました。
ウルグアイ・ラウンドの結果、GATTは改組されWTO(世界貿易機関)が設置されました。また、高い関税が事実上の輸入制限となっている問題を解消するため、農産物の最低輸入機会(ミニマム・アクセス)の設定が定められました。
WTOは現在166の国と地域が参加しており、文字通り世界的な枠組みとなりました。ミニマム・アクセスは、各国との貿易を行う上で避けては通れないものになっています。

日本でのミニマム・アクセス米導入の経緯

こうして進められた最低輸入量の設定は米においても例外ではなく、関税をかけずに輸入するミニマム・アクセス米が導入されました。農林水産省の報告書では「ミニマム・アクセス米(MA米)の輸入は、食料政策・農業政策の観点からは必要ない」としながらも、「ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の中で、我が国全体としての経済的利益等を考慮」したものであると述べられています。いわば国際貿易の自由化を促進しつつ、国産米を保護するための妥協策として設定されたものです。

当初行われた特例措置(関税化の代わりにミニマム・アクセス数量を上乗せする)を経て、1999年度からは「コメの関税化」として、関税を払えば誰でも輸入することができるようになりました。

輸入される米の種類とその流通経路

1995年度に玄米ベースで約43万トンから始まったミニマム・アクセス米の輸入は、2000年度以降は年間約77万トンの水準で継続されています。国内消費量のおよそ7.2%に該当し、主な輸入先はアメリカ、タイ、中国などです。

国産米に極力悪影響を与えないよう民間貿易ではなく国家貿易方式とし、入札で決定した輸入業者を通じた買い入れを行っています。

2025年度は7月現在で2度の入札が行われています。2025年7月の入札では、アメリカ産・オーストラリア産・中国産のうるち精米中粒種、タイ産のうるち精米長粒種、もち精米長粒種の合計282,760トンが応札されました。

ミニマム・アクセス米の市場への影響


ミニマム・アクセス米は政府による輸入政策というだけでなく、日本国内の米農家の生活や一般消費者が購入する米の価格や流通量にも関わり、市場への影響力を持つものです。

ミニマム・アクセス米が米価に与える影響

ミニマム・アクセス米は国内産の米よりも安い価格になることが多いため、一般に流通すると国産米の価格を下げさせる圧力になる可能性があります。そのため、政府によって用途制限などの管理が行われます。バイオエタノールなどに利用される工業用のほか、海外への援助用としても活用されます。また、世界的にトウモロコシなどの価格も高騰しているため、ミニマム・アクセス米を飼料として利用するニーズも高まっていくと考えられます。

国産米の需要構造変化と対応策

高齢化と少子化、食生活の西洋化などにより、米の需要量は減少が続いています。一方で、ブランド米や有機JAS米を好む消費者や、安価な米の安定的な供給を求める外食産業など、米をめぐるニーズは多様化しています。

また2023年には日本海側などの地域で異常な暑さや少雨により米が不作となりました。高温耐性品種への切り替えを検討する声も上がりました。米の生産をめぐっては、国内の需要構造や気象の変化に対応していく必要があります。

安価な輸入米と国産米の競争関係

ミニマム・アクセス米は主に飼料用や加工用に使われている一方で、一部では外食産業や中食産業でも利用されています。国産米の価格が高騰する中で、コスト面のメリットからミニマム・アクセス米へ関心を持つ事業者もいます。

ミニマム・アクセス米を巡る課題


ミニマム・アクセス米を巡っては、さまざまな課題があります。保管や管理にコストがかかる、売買差損があるといった財政負担のほかにも、多くの課題が指摘されています。

消費者の認知度と選択肢の課題

米への関心が高まる中で、ミニマム・アクセス米の認知度はそれほど高くないかもしれません。また一方で、消費者が輸入米と国産米の違いを知り、国内の米生産や農業がもつ多面的機能や持続可能性、国産農産物の価値について理解する必要があります。国産米・輸入米をふくめたさまざまな選択肢の設定がなされることが期待されます。

持続可能な農業と国際ルールの緩衝

貿易上の国際ルールにおいてミニマム・アクセスは欠かせないものであるため、ミニマム・アクセス米が直ちにゼロになる可能性は低いと考えられます。
一方で、輸入米との価格競争により国内の米生産者が圧迫され、小規模な米農家を中心に廃業や転作などが起きる懸念があります。国内農業の持続可能性や耕作放棄地の増加、食料自給率の低下にも影響するため、食料安全保障の観点からも、国内生産の維持や強化は重要なものです。緊急時を想定した備蓄や供給体制の整備などとともに、食料安全保障への投資が課題のひとつと言えるでしょう。

市場監視体制のあり方

ミニマム・アクセス米は、食品衛生法上の基準値を超える残留農薬、カビや水濡れなどにより、一定の割合で事故米穀が発生します。2008年には農林水産省が工業用として払い下げた事故米穀(中国産もち米、ベトナム産うるち米)を、購入した企業が食用として転売していた事実が発覚しました。「事故米不正転売事件」「三笠フーズ事件」などと呼ばれ、ミニマム・アクセス米の安全性と政府の管理体制について疑問の声が上がりました。事故米を含むミニマム・アクセス米が正しく保管、処理される体制が今後も求められます。

ミニマム・アクセス米の未来と日本社会への影響


日本国内における主食用米の需要量は長期にわたって減少傾向にあり、農林水産省のデータでは2010年から2020年までの10年間で14%減少しています。とはいえ2024年から続く米の流通不足や価格高騰は消費者の大きな関心事となり、社会問題となりました。米は今なお日本人の食生活において欠かせないものであり、米の安定供給は政府にとって重要な課題です。

食料安全保障の観点から見た輸入米

2025年6月には小泉農林水産大臣の記者会見において、備蓄米の放出を受けてミニマム・アクセス米の在庫を積み増すこと、通常8月から実施する買入入札を2025年度は6月末からに前倒しすること、国産の主食用米の品質に近い中粒種の輸入量を増加させることが発表されました。このように食料安全保障の観点から、ミニマム・アクセス米の活用が見直されています。

消費者ができる選択と意識改革

2024年から米の流通不足や価格高騰が社会問題になり、2025年の備蓄米放出は大きなニュースとなりました。消費者は安さだけを求めるのではなく、輸入米や備蓄米、従来からの国産米などそれぞれの違いを理解した上で、適正価格を考える必要があるかもしれません。用途によって米を使い分けるのも選択肢のひとつです。

ミニマム・アクセス米の意義と展望

ウルグアイ・ラウンドから始まったミニマム・アクセス米の制度は、2000年代以降のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)や日米貿易協定などを経ても続いてきました。現在でも、ミニマム・アクセス米は国際貿易において重要なものとして位置づけられています。

また、2025年には米の価格高騰を受けて備蓄米が放出され、大きく減ってしまった在庫を回復させるために、ミニマム・アクセス米の輸入が前倒しで行われました。国内生産とのバランスを取りながら、備蓄米としてミニマム・アクセス米が活用されることには大きな意義があります。
国家の戦略として、今後も持続可能な米の輸入・生産・消費の体制を構築していくことが求められます。

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