■プロフィール
■古賀大貴さん
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Oishii Farm 共同創業者 兼 CEO 1986年、東京生まれ。大学卒業後、コンサルティングファームに入社。さまざまな業界のプロジェクトに参画する一方で、 農業にも興味を持ち、夜間の農業学校に通う。その後、UCバークレーでMBAを取得。2016年12月に「Oishii Farm」を設立し、2017年からアメリカ・ニューヨーク近郊に植物工場を構える。 |
■横山拓哉
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株式会社マイナビ 農業活性事業部 事業部長 北海道出身。国内外大手300社以上への採用支援、地域創生事業部門などで企画・サービスの立ち上げを経験。2023年4月より同事業部長就任。「農家をもっと豊かに」をテーマに、全国の農家の声に耳を傾け、奔走中。 |
世界の食糧危機、日本が抱える脆弱性
横山:令和の米騒動に始まり、日本では食糧不安を覚えるようなニュースが続いています。気候変動や病害虫など要因はさまざまありますが、一連の日本のニュースについて、どう見ていますか。
古賀:アメリカでは、10年以上前から農作物の収量減や価格高騰が深刻化していて、危機感はむしろ日本より先行しています。価格高騰も、もの凄いペースでどんどん上がっていて、とても深刻な状況です。
日本も米騒動をきっかけに危機感を持ち始めて議論も進み始めましたが、相当遅い印象です。
また、アメリカの場合は食糧が不足した際にカナダやメキシコから輸入することが出来ますが、日本は島国で輸入するのも大変ですし、経済力の面でも相当リスクは高いかなと思います。
横山:以前対談させて頂いた際、古賀さんが「今後はカロリーベースでの食糧にも手を入れていかないといけない」と仰っていましたよね。
古賀:その考えは今も変わりません。

開かれた研究所を目指す
横山:オープンイノベーションセンターを日本に設立されることは発表されていましたが、ついに場所が決まったそうですね。
古賀:都心から1時間圏内にある『CREDO羽村』です。広いスペースを生かし、研究から量産スケールの設計まで一気通貫で進めます。
横山:イチゴを量産化するための施設ではなく、あくまでも研究所なんですよね。
古賀:はい。農業と工業を融合させた次世代型植物工場の研究開発拠点です。特徴は“開かれた研究所”であること。産学官や異業種と連携し、成果をスピーディーに社会実装していきます。
横山:具体的には、どんな研究を進めるのでしょうか。
古賀:研究の柱は大きく3つあります。
一つめは、植物工場“専用品種”の育種。
植物工場に最適化した品種を、ゼロベースの選抜から開発します。まずはOishii Farmの強みであるイチゴの領域で世界初のアプローチを加速していきます。
二つめは、生態理解に基づいた生産システム。
作物の生理・生態データを深く解釈し、環境制御の解像度を高めることで生産性を着実に引き上げます。研究段階での“最適レシピ”を、商業生産へ移植できる形に整えます。
三つめは、イチゴ以外の作物への展開です。
また、製造業の視点で工程を分解し、自動化やバリューエンジニアリングも進めます。量
産化とコストダウンの両立を狙い、各地へターンキーソリューションとして輸出可能な形
に設計していきます。

横山:まさに農業と工業の融合ですね。
古賀:私たちが見据える市場はイチゴだけでも世界で約5兆円規模です。上位1%を取るだけでも500億円相当のポテンシャルがあると試算し、当面は高級イチゴに集中して勝ち筋を固める。併行して、次の市場を狙って段階的に展開する計画です。まずは一つのカテゴリーでトップラインをつくって、参入市場ごとに新商品を“バトンリレー”のように出していけたらと思っています。
横山:まずはイチゴに集中して、徐々に横展開、という感じですね。小麦やコメも見据えていますか。
古賀:本当に最後の段階だと思いますが、小麦やコメも考えています。
2050年には、日本の農家が2020年と比べて8割減るという推計(※)もあります。そうなった時、米の価格は想像以上のスピードで高騰しているはずです。その未来においては、「植物工場で作ったコメの方が結果的に安定的で、コスト的にも優位になる可能性がある」と見ています。必ずそうなるというよりは、そうした選択肢が必要になる時代が来るのではないか、という問題意識を持っています。

※:「MRI マンスリーレヴュー 2022年12月号」(三菱総合研究所)
植物工場のイメージを変える
横山:植物工場での成功事例って、世界で見ても非常に少ないと思うのですが、ここ数年で変わったことはありますか?
古賀:周りの植物工場があまりに上手くいかなくて、植物工場業界全体への不信感が高まってしまいましたね。
横山:植物工場を手がける会社が減ってしまっているので、人材採用や人材教育も大変そうですね。
古賀:そうなんです。同じことをやっている会社が世界中を見てもいないので、他業界のように、競合他社から転職してくるということもありません。教育にも時間がかかるので、一刻も早く我々の研究開発を一緒に進めてくれる人材を採りたいですね。

横山:センターの公開はいつ頃ですか?
古賀:研究開発がある程度進んでいるところをお見せできるタイミングを考えているので、来年春から夏ごろを予定しています。国内外のパートナーと一緒に、研究・開発を同時並行で進めます。
横山:短期的な目標はありますか?
古賀:あまり目標を宣言したくないのですが(笑)。まずはセンターをしっかり稼働させること。商業生産を目指すという話ではないのですが、日本(のオープンイノベーションセンター)でつくったOishii Farmのイチゴを日本の方に食べてもらって、「植物工場のイメージが変わった」と感じてもらいたい。その積み重ねで少しずつファンを増やしていきたいですね。
世界に求められる「日本品質」の可能性
横山:最後に、日本の農家に向けてメッセージをお願いします。
古賀:日本の農業は、まだまだ大きな可能性を秘めた希望ある産業です。海外で事業を進めれば進めるほど、日本の農作物の強みや魅力を改めて実感します。日本には世界に誇れる強い産業があり、そのおいしさや品質をもっと広く伝えていきたい。Oishii Farmとしての挑戦はその一端にすぎません。農業界全体で日本の農作物の価値を世界に広め、共に盛り上げていきたいと考えています。
Oishii Farmの挑戦は、単なる植物工場の開発にとどまらない。
世界の食糧問題の解決に取り組み、日本農業の価値を世界に広げる壮大なビジョン。その
第一歩が、今、日本で始まっている。

Oishii Farmの植物工場
















