コガネムシとは?
コガネムシはコガネムシ科に属する甲虫の総称で、日本にもさまざまな種類が生息しています。その名は、金属のように輝く体色を「黄金(こがね)」に例えたことに由来します。体長はおよそ10〜20ミリで、緑や茶、銅色などの金属光沢を持つ種が多く、光沢の美しさから観賞対象となることもあります。一方で、農業ではもっぱら害虫として扱われることが多く、アオドウガネ・ドウガネブイブイ・マメコガネ・ヒメコガネなどがよく見られます。
成虫は主に葉や花弁を食害し、葉脈を残して網目状にする「レース状食害」が特徴です。一方、幼虫は白くてC字形に丸まった姿をしており、土中で植物の根を食べ、生育不良や枯死を招きます。特に芝生や根菜類では被害が顕著で、地中に潜むため発見が遅れやすいのが難点です。

コガネムシのレース状食害。まるでレースのようになっている
コガネムシの生態と発生時期
コガネムシは多くの種で年1回の発生サイクルを持ち、春から夏にかけて成虫が出現します。一般的には5〜8月頃に活動が盛んになり、日中の晴れた日に樹木や草花の葉に集まります。マメコガネのように5〜10月と活動期間が長い種も存在します。寒冷地では成虫になるまでに2年かかる場合もあります。
幼虫は夏から秋にかけて成長し、秋〜冬には地中深く潜って越冬します。翌春に再び活動を始め、十分に成長すると蛹化(ようか)し、初夏に成虫として羽化(うか)します。このため、成虫・幼虫ともに植物に被害を与える時期があり、一年を通して注意が必要です。
コガネムシの生息場所と好む環境
コガネムシは庭木や果樹、野菜畑、花壇、芝生など植物のある場所に幅広く生息します。成虫は特に日当たりが良く、風通しのある場所を好み、葉や花を食べに集まります。幼虫は有機質の多い柔らかな土壌を好み、そこで根を食害します。堆肥(たいひ)や腐葉土を多く含む肥沃(ひよく)な土や、水はけの良い場所で発生が目立つことも多く、都市部から農村部まで広く見られます。
コガネムシによる主な被害
コガネムシの被害は成虫と幼虫で現れ方が異なります。
成虫は日中に活動して葉や花を食べますが、葉脈を残して薄い膜だけを食べ進むため、葉が網目状(レース状)になります。果樹ではブドウ・カキ・ナシ・クリの葉がよく狙われ、発生が多いと新梢(しんしょう)だけが残るほど丸坊主になることもあります。野菜でもトウモロコシやエダマメなどで食害が目立ち、光合成量の低下と品質の劣化につながります。
幼虫はいわゆる「コガネムシの白い幼虫」で、土中で根をかじります。根が細ることで水分・養分の吸収が落ち、株がしだいにしおれ、成長が止まり、やがて枯死に至る場合があります。被害のサインとして、株元がぐらつく、日中しおれて夕方に回復しない、軽く引くと抜ける、などが挙げられます。芝生では根が食べられて「はげ」や浮き上がりが生じ、手でめくれるようになるのが典型的です。
被害の出やすい作物は幅広く、果樹(ブドウ・カキ・ナシ・クリ)、野菜(エダマメ、トウモロコシなど)、畑作物(ダイズ、サツマイモ)に加え、イチゴの苗床・仮植床でも幼虫の根食害が問題になります。イチゴでは特に夏以降に被害が増え、苗がしおれて枯れる例が多く報告されています。施設栽培では露地より発生時期がやや早まる傾向があるため、早期からの点検が有効です。

コガネムシの幼虫は根を食害する
コガネムシの発生原因と見つけ方
コガネムシの発生原因には、成虫が好む植物や花の存在、幼虫の生育に適した土壌環境が整っていることが挙げられます。有機質に富み、水はけが良く柔らかい土壌は幼虫の発生を助長します。放置された芝生や管理が不十分な花壇・畑も繁殖の温床となります。また、周囲に果樹や雑草が多い場合、成虫が飛来して産卵しやすくなります。
見つけ方としては、成虫は日中に葉や花を食害している様子を直接確認できます。被害葉は葉脈だけが残り、レース状になっているのが特徴です。幼虫は地中に潜んでいるため、株元周辺の土を掘り起こすと白いC字形の幼虫が見つかります。芝生では、変色やはげ、めくれる部分を探し、その下を確認すると幼虫が潜んでいることが多いです。
コガネムシ被害を予防するには?
コガネムシの発生を防ぎ、被害を抑えるためには栽培前・栽培中の予防が大切です。
いくつか予防方法を紹介します。
土壌管理と水はけ改善
土壌の質を高めることで、作物の草勢を高めましょう。高畝や暗渠排水(※)で排水性を高め、過湿を避けます。堆肥(たいひ)の過剰投入は控え、有機質のバランスを保ちましょう。
※ 地下に埋設した水路(暗渠)を利用して、土地の水はけを改善する排水方法。
周辺の除草や雑草抑制管理
コガネムシ成虫の飛来防止のため周囲の雑草をこまめに除去しましょう。また、防草シートやマルチシートを使うことで、雑草にコガネムシが隠れることや、産卵を防ぐことができます。
コンパニオンプランツを使う
マリーゴールドなどのコンパニオンプランツを使うことで、コガネムシの発生数を抑えることができるといわれています。

コガネムシの予防にはマリーゴールドなどのコンパニオンプランツも有効
コガネムシ被害が出たときの対策方法
被害が確認されたら、まず発生初期に成虫を見つけて捕殺します。特に早朝や夕方など活動が鈍い時間帯に手で捕獲し、石鹸水に落として駆除すると効果的です。
幼虫は耕耘(こううん)や植え替え時に土を掘り返して取り除きましょう。プランター栽培や花壇の場合、丸ごと土を入れ替えてしまうのも良いでしょう。
薬剤を使う場合は、地中の幼虫には粒剤や浸透移行性剤を、成虫には接触型・食毒型の薬剤を、発生初期や産卵期を狙って適切に散布しましょう。
コガネムシ防除に使うことのできる農薬
コガネムシの被害を効果的に抑えるためには、発生状況や成虫・幼虫のどちらが被害を与えているかを見極め、それぞれに適した農薬を選ぶことが重要です。ここでは、土壌中の幼虫対策や成虫の駆除に実績のある「ダイアジノン粒剤5」「マラソン乳剤」「ベニカ水溶剤」の3種類を紹介します。
ダイアジノン粒剤5
有効成分ダイアジノンを含む粒剤で、土壌中の幼虫に効果を発揮します。植え付け前や発生初期に土壌混和することで、長期間効果を持続できます。野菜や花き類、芝生など幅広く使用可能です。
マラソン乳剤
有効成分マラソン(マラチオン)を含み、成虫の接触や摂食により効果を発揮します。葉面散布で速効性があり、野菜や果樹に適しています。豆類のコガネムシ防除に使うことができます。
ベニカ水溶剤
成虫の殺虫と幼虫の発生抑制に有効です。浸透移行性を持ち、散布後に葉裏や新芽にも効果が届きます。ブドウ・ネクタリン・リンゴ・バラなどの果樹や花のコガネムシ防除に使うことができます。
まとめ
コガネムシは、成虫・幼虫のどちらも植物に大きな被害を与える害虫です。成虫は葉や花びらを食い荒らし、幼虫は地中で根をかじって株を弱らせます。野菜や果樹、花壇、芝生など被害の対象は幅広く、放置すると枯死に至ることも少なくありません。予防には、雑草や花がらをこまめに取り除く、排水性を高める、防草シートやマルチで産卵を防ぐといった日常的な管理が有効です。被害が出た場合は、成虫を見つけ次第捕殺し、幼虫は土を掘り返して除去、さらに適切なタイミングで薬剤を散布して被害拡大を防ぎましょう。本記事を参考に、早めの対策で大切な植物を守ってください。


















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