マイナビ農業TOP > 生産技術 > キアゲハとナミアゲハの幼虫に注意! 特徴から防除方法まで、農家が詳しく解説

キアゲハとナミアゲハの幼虫に注意! 特徴から防除方法まで、農家が詳しく解説

鮫島 理央

ライター:

キアゲハとナミアゲハの幼虫に注意! 特徴から防除方法まで、農家が詳しく解説

菜園や花壇で見かける大型のアゲハチョウ。中でもキアゲハとナミアゲハは、見た目がよく似ていますが、幼虫の食害傾向や好む植物が異なります。キアゲハの幼虫はパセリやニンジン、ミツバなどのセリ科植物を好み、葉を食害。一方、ナミアゲハはミカン科の植物を好み、柑橘類やサンショウに被害を与えます。どちらの幼虫も旺盛な食欲で成長が早く、発見が遅れると収穫や観賞に大きな影響が出ることがあります。本記事では、キアゲハを中心に両種の特徴や発生時期、見分け方、効果的な防除方法や農薬の使い方まで詳しく解説します。

twitter twitter twitter twitter
URLをコピー

キアゲハとナミアゲハとは?

キアゲハ(学名:Papilio machaon)は、鮮やかな黄色の地色に黒い模様を持つ大型のチョウで、日本全国に広く分布しています。特に高原や平地の草地、畑などでよく見られ、春から秋にかけて3〜4回発生します。成虫は花の蜜を吸い、鮮やかな色彩と優雅な飛び方が特徴ですが、幼虫は旺盛な食欲を持ち、セリ科植物を中心に葉を食べます。

キアゲハ

キアゲハは鮮やかな黄色の地色に黒い模様があるのが特徴

ナミアゲハ(学名:Papilio xuthus)は、キアゲハと同様に黄色と黒の模様を持つ大型のチョウですが、やや淡い色合いで、翅(はね)の模様も異なります。都市部から山地まで幅広く生息し、ミカン科植物を好む点が特徴です。どちらも日本の身近な昆虫ですが、家庭菜園や果樹栽培では幼虫による食害が問題になります。

ナミアゲハ

ナミアゲハはキアゲハよりもやや淡い黄色で翅の模様も異なる

地域ごとの発生シーズン

キアゲハ・ナミアゲハはいずれも春から秋にかけて複数回発生します。温暖地では4月頃から成虫が活動を始め、初夏にかけて最初の幼虫が見られます。夏季には世代交代を繰り返し、秋口まで発生が続きます。寒冷地では活動期間が短く、主に5〜8月が発生のピークとなります。暖かい地域ほど発生回数が多く、年間4〜5世代を繰り返すこともあります。

発生しやすい栽培環境

キアゲハはセリ科植物、ナミアゲハはミカン科植物を好むため、これらの植物を栽培している場合は発生リスクが高まります。
また、風通しが悪く日当たりの良い場所は成虫の活動が盛んで、卵を産み付けられやすい傾向があります。多年草や連作により同じ食草が長期間植えられている環境では、世代を重ねて発生数が増えることもあります。

被害が発生するとどうなる?

キアゲハ・ナミアゲハの幼虫は旺盛な食欲を持ち、短期間で葉を大量に食害します。被害が進むと株全体の葉が失われ、光合成が阻害されて生育が著しく悪化します。特に苗や若い株では枯死する場合もあり、家庭菜園や果樹栽培では収穫量の減少や品質低下の原因となります。

キアゲハとナミアゲハの見分け方

見た目がよく似ているキアゲハとナミアゲハの幼虫。ここでは、それぞれどのような見た目をしているのか、また、見分け方のポイントを紹介します。

キアゲハの幼虫

キアゲハの幼虫は成長段階によって姿が大きく変化します。若齢期(1〜3齢)では黒地に白い斑点模様を持ち、鳥のふんに似た保護色で天敵から身を守ります。4〜5齢になると体色は鮮やかな黄緑色に変わり、太い黒帯とその中に並ぶオレンジ色の斑点が特徴的です。体長は50ミリ前後と大型で、パセリやニンジンなどセリ科植物の葉を食害します。危険を感じると頭部からだいだい色の臭角(しゅうかく)を突き出し、特有の匂いで捕食者を遠ざけます。

キアゲハ幼虫

キアゲハの幼虫

ナミアゲハの幼虫

ナミアゲハの幼虫も成長とともに姿を変えます。若齢期は黒地に白い斑点を持ち、同じく鳥のふんに擬態します。終齢になると体色は明るい緑色になり、体側には目玉模様のような斜帯が入り、キアゲハにはない模様が見られます。体長は40〜45ミリほどで、ミカン科植物の葉、特にユズやレモンを好みます。こちらも危険時には黄色〜だいだい色の臭角を出して防御します。

ナミアゲハ幼虫

ナミアゲハの幼虫

見分け方のポイント

両種とも幼虫の成長過程で姿が大きく変わりますが、終齢幼虫の模様と食草で見分けが可能です。キアゲハは黄緑色の体に黒帯とオレンジ斑点、ナミアゲハは緑色の体に目玉模様があり黒帯やオレンジ斑点はありません。また、食草もキアゲハはセリ科、ナミアゲハはミカン科と好みが異なります。

キアゲハ・ナミアゲハ幼虫の食害を防ぐためには?

幼虫による被害を抑えるためには、何よりアゲハチョウを寄り付かせないこと、予防することが大切です。ここでは3つの予防方法を紹介します。

ネットや不織布での物理的防除

成虫の飛来と産卵を防ぐため、防虫ネットや不織布で株全体を覆います。苗の段階から設置することで初期被害を防ぎやすく、特に発生が多い時期には有効です。ネットの目合いが小さいものにし、隙間を作らないことが重要です。

コンパニオンプランツの利用

ミントやローズマリーなど、香りが強く虫よけ効果が期待できる植物を周囲に植えます。これにより成虫の飛来や産卵を抑えられます。複数種を組み合わせることで効果を高めることも可能です。

ミント

ミントなどのコンパニオンプランツを利用するのも良い

天敵の活用

カマキリ、クモ、寄生バチなどの天敵を守り、自然に発生させる環境を作ります。化学農薬の過剰使用を控えることや、天敵のすみかとなる草地などをある程度残すことが、天敵の定着と活躍につながります。

被害が出たときの対策方法

被害を見つけたら、まずは幼虫を直接捕まえて駆除します。朝や夕方の涼しい時間帯は幼虫の動きがゆっくりなので捕まえやすいですが、苦手な場合は手袋やピンセットを使うと安心です。捕獲した幼虫は密閉袋に入れて処分します。食べられた葉は早めに摘み取り、畑や庭の外で捨てることで卵や幼虫の残りを防げます。発生初期は食痕やフンを見つけた時点で株全体を確認し、被害が広がる前に対応することで、収穫や株の健康への影響を抑えることができます。

キアゲハ・ナミアゲハの防除に使える農薬

キアゲハやナミアゲハの幼虫被害が広がってしまった場合、農薬を用いた防除が有効です。ここでは、家庭菜園から本格的な栽培まで幅広く使われている代表的な農薬を紹介します。なお、使用にあたっては必ずラベルの指示を守り、適切な濃度や散布回数を守ることが重要です。

アースガーデン 葉を食べる虫退治 1000ml

ナミアゲハ防除に使うことができます。スプレータイプで使いやすく、葉の裏や茎に直接噴霧して幼虫を駆除します。即効性があり、発生初期に効果を発揮します。家庭菜園におすすめです。

ベニカ水溶剤

ナミアゲハ防除に使うことができます。幅広い害虫に対応できる水溶剤タイプです。葉全体に均一に薬液が行き渡るように散布することで、高い効果を発揮します。

モスピラン顆粒水溶剤

キアゲハ・ナミアゲハの両方に使うことができます。植物体内に成分が行き渡る浸透移行性を持つ薬剤で、食害中の幼虫にも効果があり、持続性があるため予防にも有効です。

まとめ

キアゲハやナミアゲハの幼虫は、家庭菜園や畑で見かけることの多い害虫です。キアゲハはセリ科、ナミアゲハはミカン科の植物を好み、発見時にはすでに葉が大きく食べられていることもあります。幼虫の特徴や発生時期、生息環境を知っておくことで、早期発見と被害軽減につながります。

予防には、防虫ネットや不織布、コンパニオンプランツや天敵の活用が有効です。発生時は幼虫を早めに取り除き、被害葉を処理しましょう。必要に応じて農薬も適切に使い、被害を最小限に抑えることが大切です。ぜひ本記事を参考にして防除に挑戦してみてください。

読者の声を投稿する

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE
  • Hatena
  • URLをコピー

関連記事

新着記事

タイアップ企画