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【開催レポート】人々が世代を超えて集う「公共的な空間」~令和7年度 農村プロデューサー養成講座 入門コース「地域資源利活用分野」~

【開催レポート】人々が世代を超えて集う「公共的な空間」~令和7年度 農村プロデューサー養成講座 入門コース「地域資源利活用分野」~

地域への愛着と共感を持ち、地域住民の思いを汲み取りながら、地域の将来像やそこで暮らす人々の希望の実現に向けてサポートする人材である「農村プロデューサー」への成長を目指し、入門コースでは地域づくりに造詣の深い方々を講演者として招いて、農山漁村地域における創意工夫にあふれる地域づくりのプロセスの習得を目的とした講演を実施しています。
本レポートでは入門コース 第4回「地域資源利活用分野」の講演内容を抜粋し掲載いたします。

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【令和7年度】農村プロデューサー養成講座
入門コース 第4回 地域資源利活用分野
講師:東京科学大学 環境・社会理工学院 建築学系 教授
斎尾 直子 氏

第一章:公共施設から「公共的な空間」へ

農山漁村は地域資源の宝庫です。一方で、少子高齢化や災害により、その維持は危機に瀕しています。この状況で私たちが考えるべき一つの視点、人々が集う「居場所」のあり方について話していきます。

まず、「公共施設」と「公共的な空間」の違いを説明します。
「公共施設」は行政・自治体が所有・管轄・運営する施設を指します。一方で後者については、近年のトレンドとして、一つの機能に縛られず、カフェや子育て支援、高齢者福祉など、多様な機能が融合(複合化)した空間が増えてきており、これらは、整備主体が行政とは限らず、不特定多数の住民が主体的に運営・活用する場であり「公共 “的な空間”」ということができます。

利用者にとって大切なのは、所有者や運営者が誰かということ以上に、そこが「安心して気軽に利用でき、居心地が良いか」ということになります。

第二章:学校を軸とした地域拠点づくり

では、このような「公共的な空間」を、地域の中でどのように創出していけばよいのでしょうか。その重要な拠点の一つとなっているのが、地域の公立小中学校と、住民にとって身近な居場所との複合化整備です。1990年代から全国各地で始まった学校複合化は、老朽化した学校の建て替えを機に、公民館等の集会機能や福祉機能などを集約し、地域全体の住民の拠点として再構築する動きがあります。

このアプローチは、都市部と農山漁村では意味合いが大きく異なります。都市部では、学校の複合化は「一つの敷地・一つの建物」の建築・不動産活用という視点が大きくなります。一方で、農山漁村における学校の複合化は、「学区エリア全体の中での地域拠点形成」「地域再生の動きの中での地域貢献」という、より広域な地域づくりの視点となります。

北海道上川郡東川町では、住民主体の計画プロセスを経て、新築する小学校を子どもの学びの場とすることと併行し、廃校となった旧校舎を地域交流拠点「せんとぴゅあ」として再生しています。せんとぴゅあには、図書エリアやカフェ、ギャラリー、さらには町立の日本語学校が集積し、子どもを含む地域住民、留学生までもが世代や国籍を超えて交流しています。「新しい小学校をどう計画していくか」「廃校施設をどう活用していくか」は別のプロジェクトではなく、地域全体で機能分担しながら魅力的な拠点網を形成する。農山漁村ならではの魅力的な地域と空間づくりの可能性をみることができます。

第三章:学校統廃合の危機を「再生の好機」へ

これまで長年にわたり多くの農山漁村地域では学校の統廃合が深刻な課題となってきました。小規模化をきっかけに統廃合の検討が始まり、校舎への設備投資が抑制され、校舎の老朽化は進み、さらに子育て世代は町場へ流出するという「廃校悪循環サイクル」です。特に平成の市町村合併に伴い、学校も多くの統廃合が進み、地域の学校が姿を消し、地域の活気やアイデンティティが失われる「学校のない地域(元・学校区)」が増加してしまいました。

この流れに対し、学校を地域の大切な資源・拠点として再生していく戦略もあり得ます。宮崎県の五ヶ瀬町では、町内に点在する小規模小学校が地域に存続し続けており、それぞれの地域・学校区のアイデンティティを維持しつつも、スポーツや合唱など人数が必要な活動の際には4校の児童が集まって「集合学習」を行うG授業というプログラムを組むことで、多様な学びの機会を確保しています。これは、学校を集約して1自治体1校にするのではなく、対面・オンラインの効率的合理的なネットワーク化により、教育の質と地域の個性存続を両立させるモデルです。学校を単なる教育施設ではなく、地域の未来を左右する重要拠点として考えた施策であり、五ヶ瀬町における不変の教育スタンス「地域があって、子どもがいて、学校がある」は心に響きます。

他の農山漁村地域において、たとえ閉校が避けられない場合でも、閉校が決まった段階ですぐにその後の廃校地・廃校舎利活用を地域全体で考えるという考え方も重要となります。閉校という「終わり」を、地域の新たな「始まり」へとつなげるこのプロセスは、学校が育んできた地域の記憶や拠り所としての役割を未来へと引き継ぐポイントとなると考えられます。

第四章:未来を拓く新しい「農村コモンズ」

機能が混在し、融合する新しい「農村コモンズ(共有地)」が増えてきています。それは、子どもの遊び場、デイケアセンター、直売所、カフェ、集会所….、多様な機能が柔軟に結びついた空間を指します。さらに、自然災害が多発する近年、普段から地域住民が使い慣れたこのような場所が、災害時には安心できる避難所になるという視点も欠かせません。

その整備や運営は、行政の縦割りや官民の垣根を越え、地域の実情に合わせて多様な主体が担っていく必要があります。地域に点在する老朽化した様々な施設をどのように未来へのに向けて再生させていくか、そのまま失ってしまうのか。

かつて、新潟県小国町で実施した小さな役場づくりワークショップでは、地域づくりにかかわる(思いつく)全ての公共的な内容を、「最低限、自治体が責任を持ってやるべきこと」「住民主体で複数集落が連携してできること(旧町村域・複数集落)」「各集落ごとに住民主体で担っていけること(単独集落)」を仕分け、地域の運営方法を住民自らで考えていきました。このような住民主体の活動に伴走することも、農村プロデューサーに問われる役割なのかもしれません。私からは、人々が世代を超えて集う「公共的な空間」について、様々な視点を紹介しました。ありがとうございました。

本レポートは令和7年7月25日に行われた「農村プロデューサー養成講座」入門コース 第4回 地域資源利活用分野(講師:斎尾 直子 氏)の講義を元に、一部内容を抜粋して編集しました。

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