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コーヒーの木の育て方をコーヒーマイスターが解説。剪定のコツや増やし方、植え替えのポイントは

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コーヒーの木の育て方をコーヒーマイスターが解説。剪定のコツや増やし方、植え替えのポイントは

アフリカ原産でありながらアジアや南アメリカなどさまざまなところで育てられているコーヒーの木。実は、日本でも観葉植物として人気です。緑の葉は美しく、オフィスや家庭に置かれていることもあります。コーヒーの木は寒さに弱く、沖縄や鹿児島など一部を除けば露地での栽培は困難。それでも、冬場の寒さに気を付ければ、鉢植えで育てることは可能です。今回はコーヒーマイスターの資格を持つ筆者が、コーヒーの木の育て方について詳しく解説。日本の気候でも美しく育てるためのポイントについてもお伝えしていきます。

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コーヒーの木の特徴と基本情報

まずは、コーヒーの木について簡単に説明します。コーヒーの木はアフリカのエチオピア南西部が原産と言われています。エチオピア南西部は暑くも寒くもなく人間にとって暮らしやすい場所で、雨もたくさん降ります。コーヒーの木はそんな場所で生まれたので、極端な暑さや寒さ、また旱魃にも弱いです。ちなみに、コーヒーの種だけでなく葉にもカフェインが含まれているのですが、そのわりに虫害を受けることも多くて生産者にとっては悩みの種です。

コーヒーの木は幹が細いわりに樹高が高くなる植物で、野生のコーヒーの木なら8mくらいあります。ただし、基本は栽培種であり、収穫作業を楽にするためにおおよそ2mくらいになるよう剪定されていることがほとんどです。エチオピアの場合は人が登れるくらいの太さの木もありましたが、エチオピア以外で人が登って収穫作業をしているのは見たことがありません。登ったら折れる程度の細さなので、鉢に入れて観葉植物として育てるにはちょうどよいサイズ感かもしれません。

コーヒー生産国では、シェードツリーと呼ばれる大きな樹木の陰で育てられることが多いです。これは、コーヒーの木は直射日光が苦手なためです。観葉植物として育てるときも葉焼けの原因になるため半日蔭の環境を作ってあげることが大切です。

観葉植物として人気のワケ

オフィスや自宅でコーヒーの木を育てている方をよく見かけます。日が当たる時間は透明感のある緑色でありながら、夜には重厚感のある深い緑色を見せてくれます。また、室温に気を付ければ比較的育てやすいのも人気の秘訣かもしれません。

コーヒーを飲みながらコーヒーの木を眺めるというシチュエーションも素敵ですよね。残念ながら、観葉植物として育てたコーヒーの木に実が付くことは稀です。ただ、せっかくなら自分で育てたコーヒーを飲みたい方もいると思うので、次章以降では実が成るコツも簡単に説明します。

コーヒーの木の育て方

観葉植物としてコーヒーの木を育てる方法について説明します。

最適な栽培環境

コーヒーの木は、人間にとって心地よい気温を好むので、夏は30度以下に保つことが望ましいです。これは、26度を超えるあたりで光合成率が大幅に下がりはじめるためです。日本では30度を超えることが一般的なので、夏場はなるべく涼しい場所に置きましょう。また、直射日光、特に西日が当たる場所は避けます。

暑さ対策としては遮光も有効です。ただし遮光率は抑えめにしてください。現地では遮光率50%程度が好まれる場合もあるのですが、赤道との距離が遠い地域が多い日本で50%はやりすぎかもしれません。寒冷紗を使う場合は30%程度のカットに抑えます。

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コーヒーは熱帯性の作物なので、寒さ対策はもっと重要です。冬場は室内で育てるようにし、基本的には10度を下回らないよう、室温に気を配りましょう。窓の断熱性能にもよりますが、窓際で育てることは避けた方が無難です。また、短時間であっても室温が氷点下を下回ることは避けてください。

もしコーヒーの実を付けたいと考えるなら、温度管理はもう少し厳格に行います。夏場は25度以下、冬場は15度以上を保ちましょう。現地であれば30度近くあってもある程度の収量は確保できるのですが、鉢植えの場合には現地よりも過酷な環境なので25度辺りが境界線かもしれません。冬場は夜間であっても、なるべく温度が下がらないよう工夫が求められます。

室内栽培の適切な置き場所と日当たり管理

コーヒーの木は日当たりを好むため、室内で育てる場合には窓際など日が良く当たる場所で育てます。直射日光はNGですが、多くの窓にはUVカット機能があるため、室内であれば葉焼けが問題になる可能性は低いです。それよりも日光不足の方が心配なので、室内なら窓際がおすすめです。

肥料と栄養管理のコツ

肥料は、肥料焼けに注意しながら与えます。現地のように堆肥などの有機肥料を与えるとハエが寄ってきてしまうので化成肥料がおすすめです。

窒素・リン・カリウムがバランス良く配合されている肥料を使います。ただしバランス良くと言っても、窒素が多めという意見もある一方で、1:1:1が理想だという話も聞きます。どれかが著しく欠乏することのないようにすれば良いと思われます。

施肥は春と秋に行います。生育環境次第ですが、夏と冬は暑すぎたり寒すぎたりして成長が鈍るのが通常ですので、ほとんどのご家庭で施肥は不要と言えるでしょう。

葉のケア方法

コーヒーの木を育てる上で葉水は必須ではありませんが、与えても良いです。与える場合は霧吹きを使い、1枚ずつ濡らしていくと良いでしょう。その際は虫が付いていないかも合わせて確認してください。なお、冬は水が気化して熱を奪われる可能性があるので、葉水は控えた方が無難です。

コーヒーの葉は本来ハリがあり、深い緑色をしているものです。萎れていたり、黄色や赤みがかっている場合はコーヒーの木に問題が出ていることの現れです。水やりの頻度を変える、肥料の量・頻度を調整するなどの対策が必要です。

季節ごとの注意点

日本でコーヒーを育てるなら、管理が一番難しいのは冬です。冬は温度管理を重点的に行いましょう。そもそも日本で育てるのに適した植物ではないので、エチオピアの気候を再現するような意識で管理します。ちなみにエチオピアのコーヒー名産地イェルガチェフェの場合、1年を通して平均気温は20度前後、最低気温は10度くらいです。

元気に育てるために必要な道具

ピンセット

虫が付いた時に取り除くために、ピンセットは用意しておいた方が良いです。1日に1回程度は様子を見て、虫が付いていたらピンセットで除去しましょう。

鉢は、なるべく深いものを選びます。これは、コーヒーの木は直根で地下にまっすぐ伸びていくからです。ただし水はけとの兼ね合いもあるので、大きな鉢を用意できたら用土は水はけを重視して選ぶようにしましょう。

実を付けたい場合には鉢の深さと大きさは特に重要で、1mくらいの深さが理想ですね。また、現地ではコーヒーの木同士の距離(樹間)は1m~2m程度を確保します。これは、養分の70%くらいが水平根から吸収されるためです。鉢のサイズでいえば30号くらいで育てるイメージですが、鉢植えでそのサイズは現実的ではありません。それでも、なるべく大きな鉢で育てた方がコーヒーの成長には良いと思われます。

よく見られる病害虫と発生原因

コーヒー生産国では様々な病気が見られ、葉が枯れてしまったりコーヒー豆の品質が落ちてしまったりします。主な病虫害の原因となるウイルスや媒体となる虫は生産国と日本では異なるので、ここでは日本で育てる上での注意点をお話しします。

カイガラムシ

カイガラムシは観葉植物、庭木などでよく発生する害虫です。体長は大きいもので1cmほどで、コーヒーの木の汁を吸って成長します。予防は難しく、見つけたらピンセットなどで取り除きましょう。

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アブラムシ

アブラムシは体長数ミリ程度の害虫。1匹だと見つけづらい大きさですが、葉っぱや茎にたくさん湧くので嫌でも目につきます。放置すると葉が萎んで枯れてしまうので、見つけたら面倒ですが除去しましょう。テープで取り除く、ピンセットで駆除する、歯ブラシで磨くなどの方法があります。コーヒーの葉は比較的強いので、歯ブラシやテープを使っても問題は起こりづらいでしょう。アブラムシは風通しが悪いと発生しやすいので、他の植物に近づけすぎないことが予防策です。

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ハダニ

ハダニは1mmにも満たないクモの仲間です。主に葉の裏側に潜んでいて、群れることが多いです。気づいた時には結構な数になっているはずなので、すぐに駆除しましょう。1匹なら影響は少ないですが、数が増えると光合成が阻害されて葉の色が悪くなります。ハダニは糸を出して移動するので、ハダニが発生した株は他の植物から遠く離れた位置に置くようにします。

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コーヒーの木の剪定のコツ

コーヒーの木の剪定についてお話しします。生産国のような地植えは難しいので、鉢植えで育てる場合の剪定について説明します。

剪定はなぜ必要なのか

コーヒーの木は剪定することによって強く育ちます(カットバックといいます)。生産国では大胆なカットバックによって収量を伸ばします。古くなった枝の根元から切り落とすことが多いですが、地面から数十センチのところで幹を切断する大胆な手法が取られることも。ただ、剪定を全くしない生産者も多く、それでも育っているのでカットバックは必須というわけではありませんが、カットバックによって木の生命力が増すことは事実です。

一方、観葉植物として育てる場合には古くなった枝先を切るくらいだと思いますが、カットバックと同じ要領で、切った箇所からは新しい芽が出てきて生命力のある枝が伸びてきます。葉の色が悪くなってきた枝があればチャレンジしてみてください。

剪定のやり方

現地で観察していると、剪定を行う時期は収穫後が多いです。ただ、そもそも実の収穫が前提ではない場合にはコーヒーの木の剪定は成長を促したり見た目を整えたりするのが目的なので、生育が見込まれる春か秋に行うのが望ましいと思われます。連日30度近くなる環境ではコーヒーは成長できないので、夏場は避けた方が無難です。

枝を切る場合は、枝の長さが3分の1から4分の1ほどになるよう切り落とします。枝の根元から切ってしまっても問題ありません。使用するハサミやノコギリは十分に消毒してから行います。

植え付け、植え替えのポイント

続いてここからは、コーヒーの植え付けについて解説します。

植え付けのステップ

まずは、土を用意します。観葉植物用の土で良いですが、ご自身で配合する場合は根腐れを起こさないよう水はけを重視して配合してください。

その後は、鉢底にネットを敷いて土を入れ、植え付けます。鉢の大きさにもよりますが、鉢底石を用意するのも良いと思います。

鉢選びのポイント

小さく育てたい場合は同じサイズの鉢を、大きく育てたい場合は1回り大きな鉢を選びます。実が付くように育てたい場合は、直根の成長を妨げないように深めの鉢を用意するのが良いと思われます。ただし、鉢の直径が大きすぎると根腐れのリスクも高まりますのでご注意ください。

コーヒーの木の増やし方

種をまく

コーヒーの木は種から育てられます。焙煎する前のコーヒー生豆からでも育てられると聞いたことはありますが、実生用のコーヒーの種がホームセンターで販売されているので、そちらを買ってきて育てましょう。大きくなるまでに数年間はかかりますが、自分で1から育てる楽しみを味わえます。

実を付けたい場合には、直根が曲がらないよう意識して育てます。幼苗をポットで育てるのはコーヒー生産国でも行っているやり方で、ある程度の大きさになるまではポットで育てておき、そこから地植えに切り替えることが一般的です。日本の場合は地植えでは育ちづらいので大きめの鉢に移し替えることになりますが、現地と同じ要領でやれば実が成る可能性は高まるかもしれません。

株分け

一つの鉢に複数の苗が植わっている場合、株分けすれば別々に育てられます。方法はシンプルで、密集している苗を土から取り出し、優しくほぐしてあげたあとに別々のポットに植え替えます。

挿し木

コーヒーの木は挿し木でも増やせます。たとえば剪定した枝などがあれば、それを土に挿すことで根が自然に出てきて育ちます。ちなみに、他のコーヒーの木に接ぎ木することも可能で、接ぎ木は生産国でもよく見る手法です。挿し木を行う場合は夏や冬は避けて、現地の気温に近い春や秋の時期に行うのが良いでしょう。発根促進剤を使えば根張りを促すことができるのでおすすめです。

よくあるトラブルと対応策

よくあるトラブルと、その対応策についてまとめました。

葉に元気がない

気温が合っていない、日光が多すぎるor少なすぎる、根腐れしているなどの可能性が考えられます。コーヒーの生育に適した環境になっているか確認しましょう。合わせて、葉の裏側を見て虫が付いていないかも観察してください。

根腐れ・根詰まりしている

葉の色が薄くなり、それが複数の葉で起こっているなら、根に異常がある可能性があります。根腐れであれば給水を止める、根詰まりであれば大きめの鉢に植え替えるなどの対策をしてください。

実が成らない

前提として、花が咲かないと実がなりません。花が咲いたら、きちんと受粉させることが実を成らせるコツです。

日本で育てられているコーヒーの大半はアラビカ種で、自家受粉で増えます(ロブスタ種は他家受粉なので別株が必要です)。ただ、花が咲いている期間は数日間と大変短いので、その間に受粉させる必要があります。花が咲いたら綿棒などでおしべをこすり、それを柱頭に付けるなど、人為的なサポートをすれば受粉の確率は上がります。

まとめ

コーヒーの木は本来は強い植物なのですが、日本の気候にはあっていないため観葉植物として育てるためには工夫が必要です。それでも、主に温度にさえ気を付ければ栽培難易度は決して高くはないはず。うまく育てば深い緑の強い葉をつけます。また、もしかしたら実が成るかもと期待して育てるのも楽しいですよね。ポイントを抑えて、美しいコーヒーの木を育ててください。

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