地域おこし協力隊が主体の観光農園を開設
栃木県の南東部、茨城県との県境に位置する茂木町。町の中心部から車で15分程の、のどかな里山の風景が広がる深沢地区に、観光イチゴ園「美土里農園」があります。
6.2haもの広大な敷地の中には30棟以上ものハウスが立ち並び、イチゴをメインに、アスパラガス、イチジクを、露地ではエゴマやソバなどを栽培しています。駐車場の一角に建つ平屋の施設は、直売所や研修室が併設されており、農業に関する研修や実習の他、都市と農村を結ぶ交流イベントや地元の人たちの料理教室、子どもたちのふるさと学習の場としても活用されています。

美土里農園の「ころたん®」を栽培しているハウス
同園は、平成28年6月、町主体の第三セクターが運営する「道の駅もてぎ」が主に出資して立ち上げた農業法人です。農業が好きな地域おこし協力隊らが中心となり、「町に人の集まる場所をつくろう」「農業をもっとおもしろくしよう」という思いで、観光農園の開設を目指しました。
中山間地域総合整備事業で圃場整備されていた深沢地区の畑を借り上げ、イチゴとアスパラガスの施設園芸とソバの栽培からスタート。平成30年1月に観光イチゴ園をオープンして、今年で7年目になります。「とちおとめ」と「とちあいか」の食べ比べができる、町で唯一の観光イチゴ園として、11月下旬~翌5月までのシーズン中は、県内外から多くの観光客が訪れる人気スポットになっています。

併設するイチゴ直売所
「ころたん®」が夏場の貴重な収入源に
美土里農園は、もともと3つの大きな目的を掲げて設立されました。一つ目は、新規就農希望者が農業を実践で学べる場にすること。二つ目は、道の駅などへ農産物を安定供給すること。そして三つ目が、観光農園を軸に、都市と農村との交流を推進することです。
イチゴの摘み取りができる観光農園として着々と知名度を上げていた同園ですが、イチゴのオフシーズンにも人を呼べる、魅力のある作物を見つけることが課題となっていました。
「アスパラガス狩りは、一度やってみましたが、うまくいかなかった経緯があります。イチジクのハウス栽培は、アリの被害がひどくて思うように出荷できていません。そんな中、役場の方から提案していただいたのが『ころたん®』でした」

手のひらサイズのネットメロン「ころたん®」
地域おこし協力隊(公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構)を経て、同園の開設2年目に入社した永嶋浩司さんは、「ころたん®」の栽培を始めたきっかけをこう話します。
「メロン栽培は未経験でしたが、『ころたん®』の栽培を任され、2024年度に、イチジクのハウス1棟の半分の面積を使い、まずは14株の『ころたん®』の栽培に挑戦しました」
「栽培に関しては、1番果の摘果後は放任栽培になると聞いて、一般的なメロンよりはつくりやすいのかなぁというイメージを持ちました。周りで『ころたん®』をつくっている農家さんがいなかったので、途中、種苗会社の方にアドバイスしていただきながら、基本的な管理は栽培マニュアルどおりに丁寧に行いました」
株数が少なかったこともあり、交配のためのハチは入れず、農園スタッフに手伝ってもらいながら人工授粉をしたそうです。結果、ほんの一時期、着果しなかったこともありましたが、8月の終わりごろまで収穫できて、最終的には、14株で計350果もの良質の果実がとれたとのことです。

出荷目前の「ころたん®」
「一株から20~30果を目標にしていたので、うまくいき過ぎたくらいです。皮が薄くて、際のぎりぎりのところまで食べられるし、すっきりとした甘さがスタッフや、スタッフの子どもたちにもとても評判がよかったです。もっと認知されてもいいおいしさだと思いました」

皮の際ギリギリまで甘くておいしい=可食部が多い「ころたん®」
道の駅や地域の直売所での売り上げも好調で、「夏は収入源になる作物がアスパラガスしかなかったので、『ころたん®』はありがたいって思いました」と、永嶋さんは満足げな顔を見せます。
2年目の今年は、ハウスのもう半分で栽培していたイチジクも「ころたん®」に転換し、丸々1棟使って40株の「ころたん®」を栽培することに決めました。

ハウス外観
地元産の完熟堆肥を使用 灌水と肥料はしっかりと
同園のある深沢地区は、朝晩の寒暖差が激しく、春はかなり冷え込むことがあるそうです。
「そのせいか、初年度は定植後に苗がしおれて、やばいぞってことがありました。『ころたん®』は低温にあうと、活着が悪くなる。そのことを踏まえて地温の管理に気を使ったので、今年は大丈夫でした。交配は、さすがに株数が増えたので、イチゴで使用しているミツバチを少しもらって授粉させました」
初年度を振り返りつつ、2作目に望んだという永嶋さんが育てた自慢の「ころたん®」を試食させていただくと、肉厚の果肉がやわらかくジューシーで、メロン栽培が2年目とは思えない腕前を感じました。
栽培する過程で、何か特別な工夫をしているのかお尋ねすると、「特にないですよ。ただ、灌水と肥料の管理はしっかりやっています」と、永嶋さん。
聞けば、イチゴの管理と似ているところがあるそうで、「灌水は一回どのくらいと決めるんじゃなく、果実の味や土の乾き具合、天気を見て、タイミングと灌水量を判断しています。これまでずっとイチゴをやってきたので、そういう感覚は培われてきているのかな。イチゴのハウスは環境制御システムを入れているので、今年は1台借りて、室温や湿度、土壌水分のデータが携帯に飛んでくるようにして、まめにチェックしました」とお話しくださいました。
肝心の土づくりは、イチゴと同様、町内産の美土里堆肥と竹粉をメインに使っているとのこと。美土里堆肥というのは、町の有機物リサイクルセンター「美土里館」で作られている、町内から出た落ち葉、牛ふん、生ゴミ、もみ殻、間伐材(おが粉)をブレンドして発酵させた完熟堆肥です。これと、乳酸菌が豊富に含まれる竹粉を一緒に圃場に入れて耕うんしています。
同園の「ころたん®」の見事な着果数とリッチな食味は、循環型の地元産完熟堆肥を使って土づくりをしていることも、きっと大いに関係していることでしょう。
来季はハウス2棟で栽培「ころたん狩り」の実施も
今後は「ころたん®」のもぎとり体験も視野に入れており、来年度は、もう1棟あるイチジクのハウスを「ころたん®」に転換する予定です。
そのためには、販路も開拓していかなくてなりません。今は、国土交通省が選んだ「全国モデル『道の駅』」の1駅である地元の「道の駅もてぎ」や、農園から車で5分程の逆川地区にあるミニ道の駅「いい里さかがわ館」に出荷し、販売しています。また、ふるさと納税の返礼品の提供、通販サイトへの出店にも乗り出しました。

「そら飛ぶメロンころたん」のキャッチコピーでアピール
SNSも活用し、空に浮かぶように育つ「ころたん®」の様子を、「天空つるし栽培」と称してインスタグラムで発信。茂木町長の古口達也氏も、町のホームページに日々アップしている自身の日記に、たわわに実る「ころたん®」の画像とそのおいしさを積極的に投稿してPRしてくれています。
何はともあれ、まずは「ころたん®」のことを地域の人たちに知ってもらおうと、この夏は、地元の小学校で行われるお祭りに出店。キューブ状にカットした冷凍の「ころたん®」にアイスを乗せて特別価格で販売するそうです。
また、「いい里さかがわ館」では、昨年から、半分にカットした「ころたん®」にソフトクリームをのせた「ころたんメロンソフト」を期間・数量限定で販売しています。
「これがほんとにおいしいんです。“ころたんメロンソフト”を、もっと広めたいですね。それと、今後は『ころたん®』の加工品にも力を入れていきたい。カフェみたいなものもできたらいいなぁ」 と、構想は膨らみます。
もともと、人の集まる場所をつくるため、地域を、農業を盛り上げるために開設した農園です。人と人、人と町をつなぎ、地域の活性化を進める上で、「ころたん®」が一助となるなら、こんなにうれしいことはありません。自治体と地域住民、地域おこし協力隊などが一体となり、町づくりに取り組む茂木町が、これからどんな町へと発展していくのか、目が離せません。

ハウスの中で1kgを超えるサイズに育つ「ころたん®」
文/おおいまちこ 写真/サカタのタネ
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