【プロフィール】
■渡辺翔月さん
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FAR夢わたなべ 代表 群馬県北群馬郡で水稲350アール、露地栽培250アールを栽培している。 |
■高橋史武さん
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HEART GREEN 代表 群馬県渋川市でハウスナスを20アール、露地野菜で200アールを栽培している。 |
使われなくなった田植え機、捨てるのはもったいない
今回話を聞いたのは、群馬県内でナスやブロッコリー、水稲などを栽培する「FAR夢わたなべ」の渡辺翔月さんと、同じく県内でナスととブロッコリーを栽培する「HEART GREEN」の高橋史武さん。
2人が共同で使っているのが、田植え機を中耕機に改造した“特製マシン”だ。
きっかけは、近所の農家から大きな田植え機に替えたいという話を聞いたことだった。
「せっかく動くのに、新品に買い替えて捨てるのはもったいない。何かに使えないかなって思ったんです」と高橋さん。
その時ふと思い出したのが、株式会社キュウホー の“S4カルチ ”という商品。トラクタ・乗用管理機・田植機など様々な機械に取り付けができ、株間の除草と中耕ができる商品だ。
「僕と渡辺さんのほ場を合わせると3ヘクタール程あって、従来の手押し管理機では繁忙期に作業がし切れず、効率化したいと思っていました。手持ちの田植え機にS4カルチを取り付けようかと思ったけれど、大き過ぎてほ場間の運搬が難点でした。」(高橋さん)
「僕たちはコンパクトな田植え機を探していて、知り合いの農家さんは大きいものに替えたかったので、ちょうど良かったんです。機械を“取り替えっこ”した感じですね」(渡辺さん)
こうして「田植え機を改造して中耕ができる管理機を作る」プロジェクトが始まった。

手持ちのものと交換して手に入れた田植え機
1日がかりの仕事が30分で完了!驚異のスピードアップ
「もともとのエンジンや走行部はそのままに、植え付け部分を管理作業用のアタッチメントに付け替えました。除草と土寄せが一度にできる仕様です。乗って操作できるから、作業スピードが10倍くらいになりましたね」(渡辺さん)
今までは一人が半日かけていた畝間の除草を、わずか30分ほどで終えられるようになったという。
「今までは手押しで“ガガガ…”って押して歩き続ける感じだったけど、今は座ってハンドルを切るだけ。体の負担もまるで違いますよ。軽トラにも積めるサイズだから、移動も簡単。小回りもきくし、うちのコンパクトな畑にはちょうどいいんです」(高橋さん)
田植え機の改造には、特別な機械加工が必要かと思いきや、意外にも手軽にできたという。
「田植え機用のアタッチメントが商品として存在してるんですよ。それをメーカーに注文して、いつも相談している群馬トラクター商事の藤井寿和(ふじい・としかず)さんに取り付けてもらいました」(高橋さん)
「改造費用は、中古の田植え機代とアタッチメントを合わせても50万円以下。新しい管理機を買うと、300万円とかします。でも田植え機を再利用すればその数十分の一。しかも中古市場には安い田植え機がゴロゴロある。これを使わない手はないですよね」(渡辺さん)

SNSで広がる「改造仲間」
この改造機をSNSに載せたところ、全国から問い合わせがあったという。
「群馬ではほとんど見かけない改造例だから、最初は“なにそれ?”って感じでしたね。でも投稿を見た人から直接電話が来て、『あの機械、どうなの?』って言われたんですよ」(高橋さん)
特にブロッコリーやキャベツなど畝間の管理作業が多い農家からの反応が大きかった。
「みんな田植え機は持っているからね。使ってないやつを畑用に再利用できるなら、すごく合理的だと思う。改造したって言っても、壊すわけじゃないから、また戻せば田植え機にもなるし」(渡辺さん)
“機械好き”と“情報力”が鍵
今回の改造成功の背景には、機械好きの高橋さんと、情報感度の高い渡辺さんの2人が揃っていたことが大きい。
「僕は車いじりが好きなんで、構造を見ればどこが外せるかわかる。『ここ外れれば付け替えできるよね』って感覚があるんです」(高橋さん)
「自分は逆に機械をいじるより、調べるのが得意。北海道の農家がどうやっているかを知ってたから、商品を探して『これだ!』って見つけられた。お互いの得意分野がうまく噛み合った結果ですね」(渡辺さん)

今後は改良・シェア・発信へ
2人はこの改造機をブロッコリーの管理だけでなく、今後はトウモロコシや他の畝間作業にも使えるよう改良していく予定だ。
「まずはこの秋の作業で様子を見て、他の作物でも応用できるようにしたい。除草だけじゃなく、マルチ剥ぎやうね立てもできたら面白いですよね」(高橋さん)
「情報を発信していけば、同じように困ってる農家の役にも立てると思う。農家の知恵って、やっぱり共有してなんぼだと思うんです。これからはシェアも面白いかなと思ってます。栽培面積が小さめの農家さんなら、一日借りて作業すれば十分。1日5000円とか1万円で貸してもいいと思っています。人を雇うよりずっと安いし、借りる側も助かると思います」(渡辺さん)
捨てられるはずの田植え機が、畑の“働き者”として再び命を吹き込まれる。
高価な機械を買わなくても、工夫次第で農業はもっと楽に、もっと面白くできる。
2人の農家が見せた「改造の知恵」は、これからの農業の新しいヒントになるかもしれない。


















