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8筆の圃場を1枚に集約。作業の効率化を突き詰め、直播で反収10俵を収穫する稲作農家

kumano_takafumi

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8筆の圃場を1枚に集約。作業の効率化を突き詰め、直播で反収10俵を収穫する稲作農家

今年10月中旬。一風変わった水稲栽培方式で高収量を上げている生産者がいるとの情報を得て、千葉県成田市にある水田を訪れた。そこは幅54メートル、長さ325メートルの細長い圃場。水田の手前と奥では3メートルほど高さが違う傾斜状になっているものの、畔は一つも見当たらない。この圃場を耕作している小泉ファーム代表の小泉輝夫(こいずみ・てるお)さんは、作業効率を上げるため、元々8筆あった水田の畔をすべて取り除き1枚にしたという。傾斜がある水田ながら水管理に工夫を凝らし、直播で反収10俵以上を収穫する。取材当時、圃場にはまだ穂のついた稲が一面に広がっていたが、これは2番穂とのこと。一回目の収穫作業は9月はじめに終えており、2番穂の収穫作業は11月中旬に行う予定だ。

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作業効率を最大限に上げることを命題に

小泉ファームの所在地である成田市地久住地区では古くからコメ作りが行われており、小泉さんは16代目にあたる。戦前は地主の家系だったこともあり、この地区への思い入れは人一倍強い。中学生のころにはすでに農業を継ぐという覚悟があったという。その頃は成田空港開業や成田山周辺の賑わいもあり、近隣では農業を辞めて一般企業に就職するケースが多かった。農地を貸し出す人が増えたことで、それを借り受けて規模拡大していき、農業で生計が立てられる時代が来ると確信したという。

27歳の時、自らの名義で借金をしてトラクターを購入。作業場も建設して本格的にコメ作りに取り組み始めた。

小泉輝夫さん

小泉さんの経営方針は、まず作業現場を見た上で「これだけの作業を1日で終わらせるにはどうすれば良いのか」を考えてから作業に入ること。普通のコメ農家の3倍近い作業をこなすこともあるという。
それを可能にしているのが、世界的に知られる農業機械メーカージョンディアのトラクターを2台所有していることで、その作業能力は日本製のトラクターに比べて2~3倍違う。それでいて壊れにくく、導入から25年経つ今でも現役で活躍している。

それだけでなく、トラクターにはジョンディア社やトプコン社の自動操舵システムを後付けして労働時間の短縮を図っている。冒頭に記した8筆ある圃場を一枚にしたのも、農業機械の作業効率をどれだけ上げられるのかを試行錯誤した結果だ。

もちろん、農業機械を揃えただけでは作業効率を上げて収量を得る栽培方法を実践できるわけではない。大きなきっかけは、農業雑誌で「土を考える会」という存在を知ったこと。ここで乾田直播の栽培を研究する大学の先生やそれを実践して成果を上げている農業者たちと知り合ったことで、収量性への意識が高まったという。

1筆の長さが352メートルある水田

コメの増産の最重要テーマであるリスクヘッジ

小泉さんによると、コメの増産にはいくつかのテーマがあるという。まずは農地の問題。条件の良い土地を連続して集めた上で集約しなくてはならず、かつ広い農道と用排水路が整備されていることが必要だと話す。その上で大事なこととして、いかにリスクヘッジするかを説く。

例えば水稲60%、大豆20%、トウモロコシ20%の割合で作付けした場合、大豆、トウモロコシは補助金が支給されるため、言い換えれば水田利活用対策でコメを作らない代わりに一定の所得が保障されていることになる。同じように補助金が支給される加工用米や輸出用米も同様だ。

現在のように、主食用米が異常とも思えるほど高騰してしまうと、その後は必ず暴落する。増産してまで暴落の危険性をはらむものは危なくて作ることはできないし、ある程度価格の見通しが立たないと怖くて機械などの投資が出来ないだろう。そこで考えるべきは、価格の底が抜けて暴落した時の経営をどのようにしてヘッジするかだ。言い換えれば、今後コメを国民に行き渡らせるようにするには、生産者のリスクがヘッジされている状態で生産できるようにしなくてはいけない。

どうしたら良いのかというと、先物取引と同様、価格設定を先にすることだと小泉さんは言う。収量の条件については「穫れる年、穫れない年はあると思うが、それは契約条項で調整すれば良い」。
問題は、水田利活用対策で戦略作物を作るなど、毎年コロコロ変わるような政策では、米の作り手がいなくなってしまうことだという。「そもそも農家で食っていけるのなら、これほど辞める農家はいなかった。コメの値段をある程度、再生産可能な値段で維持できるシステムを入れないとだめだろう」

農水大臣に直談判。「夢を持てる政策を」

 
小泉さんは今年7月、農水省を訪れ、小泉進次郎農林水産大臣(当時)と面談。「中長期の農業政策で夢を持てる方向性にしてほしい。消費者対策の備蓄米だけでなく、農業者向けの方向性も力強く打ち出して欲しい」と要請。価格対策と土地改良の2点を訴えた。
小泉前大臣からは価格対策について収入保険の活用を勧められたが、小泉さんは「保険はあくまでも保険であって、保険金をもらうことを前提とした経営は危険」とし、生産者と消費者双方にメリットのある価格対策を望む。「備蓄米の活用は消費者向けの対策だったわけだが、生産者の価格対策としては先物を活用した政策が絶対に必要」と強調した。

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主食用米1万円値下がりを予測した耕作計画

今冬に向けては、農業土木や整地作業も請け負い、レベラーやドローンを稼働させることになるが、自社の来年の耕作計画については「悩んでいるというのが正直なところ」とこぼす。
来年の主食用米は「現在より1万円は確実に値下がりすると予想している」ためだ。先行きの価格がどうなるのかを知るためにも、先物市場の価格を注視している。

また、令和7年産米の備蓄米の買い入れがあるのかどうかも大きな関心事。これらの動きによって、どのような作物をどの程度作付けするのかも変わってくると話す。ただ、来年も耕作依頼される農地が拡大するのは確実で、これらをいかにして効率よく耕作するかを念頭に、耕作計画を立てていくつもりだ。

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