刈取り以降の作業をすべて請け負う
たけやま独自の委託作業システム「青田買い」。収穫時の人手不足や機械の老朽化などで刈取りが間に合わない。米農家をやめたくないけれど、体力や設備が追い付かない。そんな方の助けになればと始めた試みだ。
同社が農家に配布している「青田買い」を告知するチラシには「収穫作業を私たちにお任せいただくことで、その後のすべての作業を請け負います」と記されている。その言葉通り、刈取り作業から乾燥、籾摺り、精米、袋詰め作業までたけやまが行う。
7月にほ場の査定と収量計算を行い、その圃場における予測収穫量相当のコメの代金が支払われる。受託条件として農地の所有者が刈取り前の草刈りや水管理を行う必要があるものの、播種前に仮契約に応じれば種もみを無償で提供してもらえる。提供される種子はコシヒカリ、ふさおとめ、ふさこがねの3品種。この3品種を主力にしている理由は後述する。
広域の作業に生育予測システムを活用
青田買いを始めた当初、受託作業する農地は自社が所在する山武市周辺であったが、年々口コミで広がり、現在は20キロほど離れた千葉県匝瑳市、40キロ以上離れたいすみ市にまで受託作業地がある。
ここまで受託地域が広がると、移動距離が長くなり効率が悪くなるのではないか。伊藤さんはこの問いに対して「弊社ではコンバイン1台で1日に2haの刈取りができる。仮に受託作業場所が20カ所あっても困らない」と答える。

それを可能にしているのは、有人宇宙システム(JAMSS)の生育予測システムを使って作付け時から収穫時期を予測し、どのように作業を行えば効率的かを計算しているからである。宇宙から地球表面の水田を捉えて、過去の気象データや品種特性のデータなどから田植え後の生育ステージや出穂時期を予測して刈取り時期を把握しているのだ。
導き出した出穂時期などは、どうしても1週間程度の誤差が生じることもあるが、誤差はカレンダーに手書きで書き込むなどのアナログな作業で対処する。こうした誤差を修正し、さらに効率よく収穫作業を行うため、2026年からは水管理システム「水田ファーモ」を導入することにしている。各地の水田にこれを設置し、気温や水温、水位を計測してそのデータを取り込めば、より精度の高い刈取り時期が予測できるとみている。現場に行かなくても水位がわかるため、水田の管理もしやすい。契約農家に肥料や除草剤などの散布適期などの情報を提供できるようにもなる。
自社ブランド米の海外輸出も視野に
伊藤さんは直播などの革新的な栽培方法にも関心が高い。直近では、海外で驚くような栽培方法に触れ、このことを通じて海外市場に目が向くきっかけにもなった。
伊藤さんは日本青年会議所の会員で、国際ビジネス推進会議に出席した際に、ベトナムの青年会議所のメンバーから「コメのブランド化」について相談を受けた。
そこで単身ベトナムに赴き、稲作の現場を視察したところ、ドローン播種でジャポニカ米を栽培している農家の中には10a当たり800キロもの収量を上げている例があることを知り衝撃を受けた。しかもそのジャポニカ米はキロ単価100円という安さ。生産現場だけでなく、籾摺りから精米工場まで見て回った伊藤さんは、商品化する工程でまだまだ改善する余地があると考え、ベトナム産ジャポニカ米のブランド化に協力することにした。
伊藤さんの構想は、ベトナムで日本米を生産してブランド化したものを海外の日本食レストランに売り込み、その中からより本物を求める高級日本食レストランに千葉県の自社で生産してブランド化した「房の黄金米」を提案するというもの。例えば、スポーツ用品ブランドのナイキはアメリカの企業が手がけるブランドだが、実際に製品を作っているのはベトナムや中国など。コメでもそうしたスキームが実現可能だと思っている。

ベトナムで生産された日本米
伊藤さんは「日本米の生産やブランド化のノウハウや食味の良さを世界中に売っていきたい」と抱負を語る。そこまで言えるのは自社で低温倉庫や精米工場を有し、さらには精米袋には自社のブランドだとわかるような独自デザイン袋の「房の黄金米」で販売しているからである。
収穫から精米までの工程も独特で、玄米サイロはコシヒカリ、ふさおとめ、ふさこがねの3品種を入れる3本のサイロが用意され、精米して商品化されたものは自社配送するため刈取りから精米商品納品まで21時間で行えるほどのスピード感がある。契約農家にこの3品種の種もみを無償で提供しているのはこれが理由だ。
2つの悩みのタネ
このように、最新の設備を導入して効率化を図りつつ、スピード感ある経営に取り組んでいる同社だが、近年は頭を悩ませていることもいくつかある。一つは農業機械の高騰。
同社は現在、6条刈り2台、7条刈り1台の計3台コンバインを所有しており、広域にまたがる計30haの農地の作業に当たっている。コンバインの値段は現在、2100万~2200万円ほど。伊藤さんは当初、5年でコンバインの買い替えを予定していたが、「これほどまで価格が上がると、5年ではペイできない。買い替え時期を延長するしかない」とこぼす。

もう一つが米価の高騰。特に令和7年産米の急騰は、金融機関からの資金調達が間に合わないほどの値上がりで、玄米の調達に苦労した。そうなった最たる原因は、コメ先物取引が試験上場中に納会で現物を買うことができたため。同社は自社の不足分を納会や合意早受渡しで調達していたが、それが出来なくなったのだ。
現在のコメ先物取引は指数取引であり現物の受け渡しが伴わないため、こうした手法はとれない。「やはり現物の受け渡しを伴う先物取引市場であれば、不足の可能性があるコメを買いヘッジでき、さらには手持ち在庫の差損発生を防ぐために売りヘッジも出来る。そうしたことが出来る市場を望んでいる」
「植える人」、「育てる人」、「収穫する人」の分業化で増産目指す
今後も「青田買い」方式で耕作面積を増やす方針の同社。コメを増産する方法について伊藤さんは明確な答えを持っている。それは「稲作の分業化」だ。1軒の農家が管理できる面積は田植えし、育てて収穫し、玄米にするまでを自らできる範囲だが、これらを分業化すればより多くの面積が管理可能になるとみている。
次年度の増産の目標を聞くと、伊藤さんは「今年より5㏊増やしたい」と話す。このほか、青田買いを依頼する人に圃場の定点観測の情報をフィードバックするなど、収穫作業の委託だけではなく、品質向上の一助にもなりたいと考えている。コメの販売では量販店以外にも外食産業からの引き合いも増えていることから、あらゆるニーズに応えるべく、多収で食味の良い品種の生産にも取り組む計画だ。
















