農業者による農業者のためのイベント
気候変動や離農者の拡大に伴って、日本のコメ作りは大きな岐路に立っています。「超農祭2025」での熱気は、まさにその関心の大きさを表すものだったと言ってもいいでしょう。
入場費1万円ながらも全国から600人超の農業者・農業関係者が参加 。具体的な農業技術や、変革に向けた手法について耳を傾けていました。
オープニングは主催者である株式会社NEWGREENの中條大希(なかじょう・だいき)さんの挨拶に始まり、鈴木憲和農林水産大臣によるスピーチというサプライズもありました。

注目される節水型栽培の現時点
節水型栽培の本質的な情報の提供
昨年の同イベントでも注目されたのが「節水型乾田直播栽培」です。
2025年も記録的な高温や少雨 によって、悩まされた地域は多いでしょう。そこで水量を抑えながら作物を育てる節水型栽培は、水管理の省力化などの点で効率化が図れると考えられます。
これについて「昨年時点では、まだ節水型栽培の情報は少なく、取り組む農家も少なかったと思います。けれども今年はかなり増えました。かつ企業でも節水型栽培に合わせたサービス提供が始まりました」と主催の中條さんは言います。超農祭2025のプログラムは、この流れに合わせ、「小手先の技術」ではなく、栽培や経営の「本質的な情報提供」を重視したといいます。
午前中に行われた、土壌コンサルタントの須藤貴之(すどう・たかゆき)さんによる「科学的根拠に基づいた土づくり」のプレゼンテーションや、須藤さんの知見に基づく土壌改善AIサービス「Humus」(ヒューマス)の紹介は、“土壌改善”という、農家にとってまさに本質的なテーマが語られた時間でした。
企業による節水型栽培の革新的サービス「収量成果保証」とは
イベントの中でも、BASFジャパン株式会社による「収量成果保証」は関心の高いテーマだったことでしょう。
収量成果保証とは、デジタル農業プラットフォーム「xarvio® HEALTHY FIELDS」に「Humus」を組み合わせた収量保証型サービス「xarvio® HEALTHY FIELDS for RiTA」のこと。具体的には節水型乾田直播栽培を行うコメ農家に対して、土壌改善の実践や雑草管理などを支援することで、1反あたりの収量が8.5俵を下回ると一部を返金、6.5俵を下回ると全額が返金される仕組みです。
Humusを提供するRevivix 代表の野田信介さんは、BASFジャパンの出身でもあり、Revivixの代理店となるNEWGREENとの連携もあったことから実現しました。

BASFジャパン株式会社の関根真樹さん
BASFジャパンでは、すでに雑草管理に対する成果保証のサービスを2025年作のコメから始めていましたが、より踏み込んだ形のサービスになります。これについて、今年の振り返りも含め、BASFジャパンの関根真樹(せきね・まさき)さんは次のように話しました。
「客観的には、今年の成果はわるくはなかったと思います。私たちの調査では平均収量3.5俵というケースや、雑草の繁茂や生育不良で0俵というケースもありました。比べれば、一定の成果はあったと思います。ただ私たちのサービスを導入いただいた、多くの人が成功しなければ、節水型栽培の社会実装が進まない。例えば、今年初めて節水型に取り組んで、雑草以外の理由でつまずくケースもありました。多くの人の成功のために、雑草管理の成果保証から、さらに収量保証という次のステージに踏み出しました」
節水型栽培を一部の成功者だけに留めるのではなく、より広く農業者に取り入れてもらうためのブースターであり、農業者にとっては経営上の安心感につながるサービスだと言えるでしょう。
先進的農家によるトークセッション
トークセッションでは、トゥリーアンドノーフ株式会社の代表取締役、徳本修一(とくもと・しゅういち)さん、株式会社ヤマザキライスの代表取締役、山﨑能央(やまざき・よしお)さんが登壇。2社それぞれ100ヘクタール超の農地でコメを作っています。
冒頭「好む好まざるを問わず、もう節水型栽培をやるしかない」と言い切った徳本さん。自身の経験をつまびらかにし「節水型乾田直播での失敗は、まず雑草管理。私たちも経験があります。今年は半信半疑でxarvio® HEALTHY FIELDSを使いました。もう非常に効果的でしたね」と話しました。
一方の山﨑さんは節水型栽培2年目の実感を話しました。「節水型栽培は新しい技術。この会場にいるみなさんは地域では“変わり者”かもしれません。けれど日本の最先端をいくイノベーター。新しい技術にはワクワクしますよね」。とはいえ技術を用いればいいのではなく、あくまで基礎技術が必要だと強調。「いろいろなことをやるほど、当たり前なのですが、土づくりの重要性に気づかされました。また、私たち農業者が新しい技術である節水型栽培を、失敗するからダメだと言ったら、そこで未来はなくなる。つぶしてはいけない技術だと思いますし、それぞれが地域で成功させて、地域へと波及させてもらいたいです」。

株式会社ヤマザキライスの山﨑能央さん
トークセッションの最後に徳本さんは話しました。「日本の人口が減り、世界の人口は増える中で、日本のコメ作りの変革によって、世界のコメ産業さえも引っ張っていく可能性があります。農業者それぞれが10年先、20年先を見て、当事者となって一歩を踏み出してほしい。この超農祭は、まさに日本のコメ作りの夜明けとなるという思いです。みんなでワンチームとなって挑戦していきましょう」。

株式会社NEWGREENの中條大希さん(写真左)、トゥリーアンドノーフ株式会社の徳本修一さん(写真中央)
挑戦する農業者たち
イベントではさらに第一回となる「節水栽培米グランプリ」の表彰式を実施。「節水型栽培で作ったコメは美味しくないのでは」という声があまりに多いことから誤解を払拭するためにも開催されたグランプリ。全国30の生産者からの応募があり食味/生産性/環境性の3点から評価。「節水栽培米も美味しい」という事実が示される結果となりました。初代グランプリは、岩手県・平泉町の「下長根農場」 佐々木正樹(ささき・まさき)さん。「節水型栽培は1年目ですが、まさか賞をいただけると思わず、感激しています。これからの米づくりへの大きな励みですし、これからも頑張りたいと思います」とコメントしました。

「2025年農業センサス」(農林水産省)によれば、農業従事者は5年前よりも25%減り ました。離農時代にいかに持続的な農業を行っていくかは喫緊の課題でしょう。
主催者の中條さんは話しました。
「農業者が減っている中で、みなさんギリギリでオペレーションを回しています。この現実を理解した上での情報提供が大事だと考えています。今回は去年よりも『待ったなし』と感じている参加者が多かったという印象です。去年よりも熱気を帯びていました」
未来に向け、挑戦する農業者たちの熱気に、ますますの期待がかかります。
(編集協力:三坂輝プロダクション)















