育苗とは“農業のスタートをつくる仕事”

畑に出る前の短い期間に、作物の基盤をつくる極めて重要な工程です。長谷川さんは、その重みをこう表現します。
「育苗は、作物がどんな姿で育っていくのか、その“方向”を整える仕事なんです。初期生育がきちんと揃った苗は、迷いなく指数関数的に伸びていきます。しかし、成長が一時的に停滞するいわゆる“踊り場”が長くなると、苗が老化し、その後の生育スピードはどうしても鈍くなります。だからこそ、最初の環境づくりがとても大切。ストレスを与えず、植物本来の力が出せる状態にしておくことが何より重要なんです」

日々、葉の出る間隔を記録し、双葉・本葉の変化を観察しながら、成長のリズムが一定かどうかを確認する長谷川さん。その小さな積み重ねこそが、畑に出てからの収量・品質を左右する“スタート地点”になります。
“植物は心の写し鏡”。長谷川さんが辿った育苗への道

長谷川さんが育苗という専門性の高い仕事に行き着くまでには、多様な経験が重なっています。どのように農の世界へ入り、育苗へたどり着いたのか伺いました。
酪農で出会った“命と向き合う姿勢”
もともと技術職を志し、奈良県で設計事務所に就職した長谷川さんは、退職後の北海道の旅で自然の雄大さに惹かれ、「この土地で働いてみたい」と感じたと話します。
「そこで出会ったのが酪農の仕事でした。300頭規模の牛を相手に毎日が初めての連続。でも奥が深くて、命を扱う仕事の重さと面白さに気づきました」
酪農の現場では「牛は飼い主に似る」という言葉もよく耳にしたといいます。
心のあり方がそのまま相手に映る──この感覚は、現在の「植物は心の写し鏡」という長谷川さんの育苗観にもつながっています。
夏場には長野県で高原野菜の収穫アルバイトも経験。北海道で8年間酪農に携わった後、奥様の地元・長野へ移住しました。
育苗の“奥深さ”に気づいた瞬間

長野に移住した長谷川さんが次に選んだのは、葉物野菜を大規模に扱う農業法人での仕事でした。そこで2年目から育苗担当を任され、数万株規模の苗に日々向き合うようになります。
「先輩がつくる苗の揃いが本当に良くて、“育苗でこんなに差が出るんだ”と驚きました。そこから一気に育苗に興味が湧いてきたんです」
育苗は、単に苗を育てる仕事ではなく、畑での生育を決める“最初の技術”であること。その気づきが、長谷川さんの進む道を大きく変えていきます。
しかし当時、育苗以外の業務も多く、「もっと育苗に集中したい」という思いが強くなっていきました。この気持ちが独立への背中を押し、御代田町で「苗工房はせがわ」を立ち上げることにつながりました。
苗工房はせがわの強み:初期生育・連携・哲学

では実際に、苗工房はせがわの現場ではどのような環境づくり・技術・姿勢が日々の苗を支えているのでしょう。3つの視点から伺いました。
1.初期生育の“環境づくり”に徹底して向き合う
御代田町は本来冷涼で高原野菜の産地として知られる地域です。しかし近年の猛暑により、夏には35度を超える日も増え、育苗には厳しい環境へと変わりつつあります。それでも同社の苗が高く評価されるのは、徹底した環境管理があるからです。
「ハウスの温度は外気より上げないようにしています。35度を超えると葉物は光合成をしないので、遮光もしっかりします」

同社はハウスを7棟構え、代表を含め4名の体制で運営。レタス、リーフレタス、ロメインレタス、キャベツ、白菜、トマト、ししとう、わさび、タマネギなどの多様な苗を育て、地域の約15軒の生産者に苗を届けています。
さらに、葉の展開スピードの記録や、根が広がる“空間(根域)”設計にもこだわります。
「植物は、自分に与えられた“空間”を理解しているんです。春先は根域を広く、成長が早い夏は小さめに。その“部屋の大きさ”で成長スピードが変わります」
初期生育を整えることで、苗は迷いなく伸びていく──これが苗工房はせがわの品質の源です。
生産者からは「畑に入れてからの揃いがいい」「とにかく品質がぶれない」と高い評価を受けています。その理由は、“最初の環境”づくりに一切の妥協がないから。畑に出たあとも迷いなく育つ──その“基礎体力”こそが、苗工房はせがわの苗の違いです。
2.生産者と“収穫まで一本の線でつながる”関係性

「苗を畑に入れる頻度を見ると、その農家さんの向き合い方がよくわかるんです。こまめに良い苗を入れていく人は、やっぱり強い。ため込んで一気に植えると、土の“部屋”の限界を超えてしまうこともあります」
育苗・定植・生育・収穫を“別工程”ではなく“一本の線”として捉え、生産者と未来の作物を一緒につくるのが長谷川さんのスタイルです。
3.“湖面”のように穏やかな現場づくり
育苗の現場では、穏やかな空気が何より大切だと長谷川さんは話します。
「心配事があると苗の変化に気づけないんです。心が乱れていると、いい苗にならないこともあります」
静かで、湖面に波が立たないような環境。その空気こそが、苗の揃いと品質を支えています。
“任される”のではなく、“一連で学べる”現場の強み

「やる気のある人には、作業を細かく区切らず、一連の流れをそのままやってみてほしいんです」と長谷川さんは話します。
育苗の仕事は、灌水→観察→調整の繰り返し。大規模法人のように作業が細分化されていないからこそ、最初から最後まで“まるごと関われる”のが、苗工房はせがわの強みです。
同社の葉物野菜の育苗は、1月10日前後の播種から始まり、8月20日ごろまで続きます。その後は、わさびやタマネギの育苗に移り、12月はしっかり休みます。年間を通して安定した仕事と売上があるのも大きな特徴です。
勤務は朝6:00~8:00の間で1日8時間の勤務、収穫作業に追われることもなく、1日のリズムが大きく崩れません。農業の中でも珍しい “年間を通した働きやすさ” を実現している現場といえるでしょう。
未経験者でも育苗は可能です。
「昨日と今日の違いに気づける人は伸びます。うまく体を使って均一に水をまくとか、小さな変化に気づけるとか。そういう人は育苗に向いていると思います」
丁寧に、コツコツ。育苗はそうした姿勢を大切にできる人が向いている仕事と言えます。
ともに未来をつくる仲間を募集します

最後に、苗工房はせがわが描く未来像と、一緒に働いてほしい人物像を伺いました。
「御代田町にある育苗農家は4件ほど。決して多いわけではありません。数が少ないと、自分の仕事に満足してしまいがちで、成長のきっかけをつかみにくくなる。だからこそ、お互いを刺激し合える仲間の存在が大切なんです」
将来的には事業継承も視野に入れながら、技術を次へつないでいきたいと考えている長谷川さんは、新規就農者へのアドバイスも寄せてくださいました。
「新規就農は資金面で大変なこともあります。でも、何を作るか、どれだけ作るか、どう売るか。ビジョンが描ければ未来はあります。農業が大きく変わる転換期は必ず来ると思っています。そのとき、育苗の技術は必ず力になります」
苗工房はせがわは、“未来の農業をつくる苗づくり”を、一緒に担う仲間を求めています。スタートラインに立つあなたの一歩が、この地域の農業を、そして日本の食の未来を変えていきます。
その一歩を、ここから踏み出してみませんか。
詳細情報
■企業名
苗工房はせがわ
■事業内容
育苗・販売
■住所
〒389-0206
長野県北佐久郡御代田町御代田3986-1
■お問い合わせ先
メール:toiawase@topriver.jp
電話番号:0267‐32‐2511















