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2025年の農業の総括~不確実性の時代~

2025年の農業の総括~不確実性の時代~

2025年はコメをはじめとして、多くの農産物・水産物が価格高騰や気候変動、政策に振り回された1年であった。ここでは、2025年の農業・水産業の動向を振り返って整理すると共に、今後の農業経営において、どのように対応していくべきか考えたい。

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暑い夏と価格高騰

日本の夏は、毎年暑くなっている。特に2025年は北・東・西日本では夏(6〜8月)として歴代最高気温を記録(平均気温は+2.36℃)し、観測史上最高に達するなど、「暑さ」が際立った1年であった。図表1は、気象庁による日本の年平均の気温偏差であり、1991年~2020年の平均気温からの差を時系列で示したものである。このグラフは2024年までの実績ではあるが、長期的に見ても日本の気温は上昇を続けていることが分かる。

気温の上昇は、農業にも大きく影響した。特に今年の夏の高温と梅雨が短かったことによる渇水は、米や野菜の主要産地での生育の遅れなど、大きな影響をもたらした。その結果、多くの野菜等の価格高騰が発生した。図表2は、品目別の小売店頭価格(1kgあたり)の推移をグラフ化したものであるが、葉物野菜、果菜、根菜のいずれの品目も、この10年で最も高い平均価格になっていることが分かる。ここには、もちろん物価高騰による価格上昇も含まれているが、卸売市場流通が主流の野菜類であることを考えれば、主な価格高騰の要因は、気候変動による需給バランスの崩れであると言えるだろう。

図表1 日本の年平均気温の偏差

細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差 太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向 基準値は1991〜2020年の30年平均値 出所:気象庁https://www.jma.go.jp/jma/index.html

 

図表2 品目別の小売店頭価格の推移

出所:ALIC ベジ探 主要な野菜の小売価格(総務省「小売物価統計調査報告」、excelファイル)|ベジ探|独立行政法人 農畜産業振興機構 野菜情報総合把握システム

また、園芸品目だけではなく畜産においても2025年は厳しい年であった。夏の高温で豚の成育や繁殖が進まず、豚肉の価格高騰も発生し、鶏卵についても夏の暑さで鶏が卵を産まなかったり、鳥インフルエンザの発生による供給不足が発生したりした。なお、畜産業における疫病リスクは非常に高く、2025年11月からはアフリカ豚熱の発生により、スペイン産豚肉(+加工品等)の輸入が禁止された。世界的に見ても農業における気候変動や疫病は重大な経営リスクとなっている。
2025年の農業は、気候変動などの環境要因に影響を受け、生産量が変動したり、価格が高騰したりする、あるいは大臣や政権が変わることで政策の方向性が変化する、など「リスク」に振り回されがちであったと言えるだろう。

リスクに対応した農業経営の必要性

リスクは、一般的に「危険性」や「予想通りにいかない不確実性」を指す。本来の言葉の意味では「不確実性」であり、良い結果(利益)と悪い結果(損失)の両方の不確かさを含むものの、日本では特に「悪いことが起こる可能性」としてネガティブに使われることが多い。
農業や漁業といった産業は、そもそも自然を活用する段階で天候などの不確実性が高い産業である。工場という閉鎖された環境で生産される工業製品は、雨だろうが、風だろうが、災害級でもない限り安定的に生産できるが、農業の場合は雨の日は収穫できない、漁業の場合は時化れば出航できない、といったことが発生する。
裏を返せば、事業に関係するリスクに対応することができれば、農業経営・漁業経営は安定する、と言える。様々なリスクがより顕在化した2025年を踏まえ、ここでは、どのように農業経営のリスクに対応していくべきか、その方向性を考えたい。
リスク対応に必要なことは、まずはリスクの洗い出しと分類である。農業経営では、概ねリスクは5つに分類できる。
ひとつは生産リスクである。「作れない・減る・品質が落ちる」リスクであり、ここに高温などの気候変動のリスク、病害虫などのリスクも含まれる。2つ目は、市場・価格リスクであり、「売れない・安い・不利な条件で売らされる」リスクである。海外産の参入により、マーケット価格が安くなってしまうなどのリスクはここに含まれる。3つ目は財務リスクであり、「お金が回らない・資金繰りが詰まる」リスクである。売上はあがっているものの、顧客からの入金が遅く、運転資金が回らなくなってしまう、といったリスクはここに含まれる。4つ目は、 制度・政策リスクであり、「政策の変化や、生産・販売のルールが変わる・対応できない」リスクであり、政府の補助金制度の変化や、特定の認証を取得していないと取引できなくなってしまう、といったリスクが含まれる。5つ目は 経営・人的リスクであり、「人・組織・判断」に起因するものである。特定の社員が辞めてしまうことで、技術が伝承されない、などのリスクはここに含まれる。

これからの農業経営においては、それぞれのリスク分類のなかで、自社にはどのようなリスクがあるのかを洗い出し、対応について検討し、対策を打っておく必要がある。
例として、2025年、生産リスクとして大きく顕在化した高温リスクについての対応を考える場合は、以下のようなアプローチがあるだろう。
・高温耐性品種の導入
・生産技術で高温でも品質や収量を維持する(灌漑や水管理、肥料等による対応など)
・播種時期などの変更で気候リスクを減らす
・品目や品種のポートフォリオを組み替える(気候に合った品目へのシフト)

このような対応方法の中から、自社の農業経営のスタイルに合わせた対応を考え、実行していくことが重要である。
天候や病害虫といった生産リスクが中心となるが、海外産の参入(市場・価格リスク)、働き方改革(経営・人的リスク)といった要素も農業経営に影響する。時代の変化の速度が上がっている今、農業経営におけるリスク管理の重要性がますます増していくだろう。
しかし、ピンチはチャンスでもある。前述したアフリカ豚熱によるスペイン産豚肉の輸入禁止(生ハムも含む)も、アフリカ豚熱という疫病リスクでありつつ、国産豚肉、国産生ハムの販売拡大の視点に立てばチャンスであると言える。リスク管理と共に、そこにあるビジネスチャンスも見つけていきたい。

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