【前編】頼もしい!スゴすぎる隣人たち
技術力は信頼の証。地域の救世主Sさん

山道でバイクが故障し、立ち往生していた郵便配達員。そこへ偶然通りかかったのが、地域でも一、二を争う機械上手のSさんでした。状況を見たSさんはすぐさま自宅に戻り、愛用の工具一式を持参。道端であっという間にバイクの応急処置をしてくれました。
JAFを呼ぶと数時間待たなくてはならない田舎の山道での故障だったので、配達員も大助かり。Sさんはそれ以降、郵便局では顔がきくようになったとか。他にもSさんには「風呂が沸かない」「スズメバチが巣を作った」「裏山が崩れた」など、いろいろな要件で村人から電話がかかってきます。家にはお礼のビール箱が山積みだそう。都会であれば専門業者を呼ぶ場面ですが、田舎では、こうした近所のすごい人が支えてくれることが少なくありません。技術や経験がそのまま地域での信用につながるという典型例でした。
ネズミも何のその!畑の守護神・Tおばあちゃん

筆者の中で、ひときわ強烈な印象を残すのが近所のTおばあちゃんです。80代で足が悪く、普段はゆっくりとした歩調で生活しています。ところが、畑にネズミが出たとたん一変!信じられないスピードで足を踏み出し、ネズミを瞬殺してしまうのです
筆者はと言うと、ネズミが出たことに驚いて「きゃー!」と声を上げるだけでした。ネズミが農業にとって害獣であるという認識をしっかり持っていれば、確かに仕留めるのが正しい選択です。「まだまだ私は青二歳なのだな」と己の甘さを実感しました。
実は、Tおばあちゃんは若い時に夫婦で山をまさに鍬一本で開墾した凄腕の農家であり実業家です。栽培だけでなく経営感覚、時代を読むセンスなど、話すと学びになることがたくさん。田舎には、日々の生活の中で培われる生きるためのスキルが驚異的に高い人が存在します。
【中編】田舎という荒波に翻弄される善人
過疎地で疲弊。断れずに負担が集中するMさん
高齢化と人口減少が進む地域では、町内会の役員数は変わらないのに担い手だけが減少するという問題が起こります。そしてそのしわ寄せは「断れない人」「人の良い人」に集中します。人の良さゆえに村の役割を一手に背負ってしまったのが、隣人のMさんです。Mさんは本業をこなしながら、会議や行事の準備、地域運営の雑務などに奔走し、気づけば「いつでも公民館にいる」と言われるほどでした。
しかし、本業の時間がどんどん減っていったり、家族にしわ寄せがいくなどして周囲から見ても年々疲弊していく様子。地域社会を支えているのは、こうした善意を体現する人であることを忘れてはいけません。そして、Mさんのような良い人が犠牲になってしまわないように、慣習の見直しや役員数の改定、業務の改善などを常に地域全体で考えていくべきだと思うのです。善意に甘え、いずれ共同体が崩壊してしまっては元も子もありません。
【後編】軋轢、炎上、恐怖-。農村を脅かすトンデモ隣人
新規就農者Nさんの挫折と炎上

脱サラで農業を志し、意気込んで地域に入ってきたNさん。就農当初は朝から夕方まで畑に立ち、地元の人々からも「頑張り屋さんだね」と期待されていました。しかし、夏の暑さが増す頃から姿を見かけることが減り、畑は次第に雑草で覆われていきました。
畑にいないので声もかけられないし、かといってこちらから家まで行って話をするほど仲良くもない関係性です。引っ越してきたばかりで深い関係性を築けるほど、Nさん自身にも地域の人たちにも余裕がなかったとも思います。
借りていた土地は荒れるばかりで、ついには「次の年は貸せない」と地主さんに言われることに。畑は荒れてしまうと農地として認められず、税率も変わってくるので致し方ありません。ところが、ここからがトンデモストーリーの始まりでした。
Nさんはあろうことか、「せっかく整備した土地を奪われた」「農村の悪しき慣習、よそ者つぶし!」とSNSに投稿。その地域が名指しで批判され炎上する事態にまで発展しました。村人たちは「こんなことになるなら新規就農者を受け入れるんじゃなかった…」と言うようになり、後々まで引きずる事件となってしまいました。
恐怖の情報通!ゴシップ大好きYさん

最後に登場するのは、村の情報通として有名なYさん。老夫婦の馴れ初めの話から最新の村内ニュースまで、Yさんに聞けばなんでもわかる田舎のウィキペディアです。移住当初、軽く話した身の上話が、翌日には全村民に知れ渡るところとなったのは今思い出しても衝撃的でした。
それでも、慣れれば大したダメージはありません。そもそも拡散されたくないことは、Yさんに限らず村内の誰にも話さない方が賢明なのです。それにしてもYさんの記憶力には本当に感心してしまいます。AさんとBさんの不仲の話から、Cさんの娘が家出した話、Dさんの飼い犬の話など出るわ出るわの大売り出しです。他人にそれほど興味がない人からすれば、どうしてそんなに覚えているのか不思議でならないでしょう。
Yさんを「ただのゴシップ好きな人」と言ってしまえばそれまでですが、実は村の共同体意識ゆえの役割も含んでいる点は申し添えておきましょう。地域の安全のためには共同体内での情報共有が非常に重要です。そして、Yさんは外部の人にはきっちり口が堅いのです。閉じたコミュニティだからこそ成立する内と外の線引きがしっかりできていることを補足して、少しばかり弁護させていただきます(笑)
まとめ
隣人たちは田舎暮らしの重要な構成要素です。そしてもちろんあなた自身も、他の人の隣人として暮らしの要素に組み込まれていきます。都会では隣人の評価対象にならないような技術や経験が最大の信用となったり、関係が深いからこそ起こる問題や摩擦もあります。
移住前に情報を集めようとしても、ただ人から聞くだけでは得られない情報もあるのでゆっくり観察することが大切です。少なくとも人間関係を甘く見たり、人を軽く見たりしないような心配りが重要です。

















