アピオスとはどんな野菜?

アピオスは、北米原産のツル性のマメ科の多年草で、地下に数珠状に連なる小さな塊根を食べる野菜です。アメリカ先住民が栄養源として食してきた作物で、日本では「アメリカホドイモ」または「ほど芋」と呼ばれています。明治時代に、北米から取り寄せたリンゴの苗木に混ざって青森県に伝わったといわれています。
見た目は西洋梨のような涙型で、その名は古代ギリシャ語で梨を意味するアピオンに由来します。アーモンドほどに小さいものからサトイモほどの大きさまでさまざま。寒冷地でもよく育つことから東北地方に定着し、保存性や栄養価の高さから、かつては貴重な食料として親しまれてきました。近年は、その栄養の豊富さや調理の幅広さが見直され、健康志向の高まりとともに、世界三大健康野菜(アピオス、キクイモ、ヤーコン)のひとつとして再び注目を集めています。
食味の特徴
アピオスは、ほくほくとした食感と、ほんのりとした甘みが特徴です。クセは少なく、ジャガイモとサツマイモを掛け合わせたような甘さに、サトイモに近い粘りがありながら、どこか豆の風味も感じられます。皮が薄いため、皮付きのまま調理して食べられる点も魅力です。
サイズによって食感の印象が変わるのも、アピオスの特徴です。小粒は軽やかで火通りがよく、大きめのものはデンプン質が多く、蒸し焼きや煮物にすると甘みとコクが際立ちます。揚げる、茹でる、蒸す、焼くなど、調理法を選ばず幅広く活躍します。
主な産地と旬の時期
アピオスの主な産地は、青森県の下北半島です。そのほか、山形県や長野県など、比較的寒冷な地域で栽培されています。
旬は晩秋から冬にかけて。収穫後、寒さに当てる「寒ざらし」をすると、デンプンが糖に変わり、甘みがより引き出されます。収穫後にしばらく寝かせることで味がなじみ、ホクホクとした食感が楽しめるのも特徴です。直売所や産直通販では、冬にかけて多様なサイズのアピオスが並び、用途に合わせて選べます。
アピオスの花も楽しめる

アピオスは夏(6〜8月頃)に、濃淡のあるピンク色の蝶形の可憐な花を咲かせます。独特の濃厚な香りがあり、花は食用や飲用としても利用されます。花は、天ぷらや酢漬けのほか、乾燥させてハーブティーにするのもおすすめです。お茶にすると、きれいなピンク色の水色と、ほんのりと甘い香りを楽しめます。
アピオスの主な栄養素とその効果

アピオスはイモ類でありながら高タンパクで、さらに食物繊維やミネラルを豊富に含む、栄養価の高い野菜です。ジャガイモと比べるとタンパク質は約3倍、カルシウムは約18倍、葉酸は約2倍、モリブデンは約18倍で、日常の食事では不足しがちな栄養素を効率よく補える点が特徴です。(日本食品標準成分表・八訂)
加えて、抗酸化作用の高いビタミンEや、ホルモンバランスに関わるとされるイソフラボン、体調管理に役立つとされるサポニンといった機能性成分も含まれています。こうした特性から、アピオスは滋養に富む食材として、古くから「1日3粒医者いらず」と親しまれ、「畑のうなぎ」と呼ばれてきました。
タンパク質
野菜としては珍しくタンパク質を多く含みます。タンパク質は筋肉や臓器、皮膚、髪など、体を構成する重要な栄養素で、日々の健康維持に欠かせません。アピオスは植物性のため脂質が少なく、肉や魚を控えたい人でも取り入れやすい点が特徴です。主食や副菜に加えることで、食事全体の栄養バランスを整えやすくなります。
カルシウム
カルシウムは骨や歯の形成に欠かせない栄養素で、成長期はもちろん、年齢を重ねた人にとっても意識して摂りたい成分です。野菜からカルシウムを補える点は、アピオスの大きな魅力であり、ミネラル補給の選択肢のひとつになっています。
モリブデン
微量ミネラルのモリブデンは鉄の代謝を助け、貧血予防に寄与するとされるほか、糖質や脂質の代謝をサポートする役割があります。また、プリン体の分解を助け、尿酸の生成や体外への排出を促す働きがあるとされ、体調管理の面からも注目される栄養素です。
アピオスの選び方

皮に張りがあり、表面がしなやかで乾燥していないものを選びましょう。しわが目立つものや、軽く押してへこむものは鮮度が落ちている可能性があります。サイズが大小さまざまあるので、料理の用途に合わせて大きさをそろえて選ぶと、調理がしやすく仕上がりも安定します。
また、土付きのアピオスは乾燥しにくく、鮮度が保たれやすいのが特徴です。保存性も高いため、すぐに使い切れない場合は、土付きのものを選ぶと安心です。
なお、流通形態には、生のまま真空パックされたものや、あらかじめボイル加工された商品もあります。用途や調理時間に応じて選ぶと、手軽にアピオス料理を楽しめます。
アピオスの保存方法
アピオスは乾燥に弱く、乾いてしまうと風味や食感が落ちやすいため、乾燥させないことが保存の基本です。購入後は、新聞紙で包んでからポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。この方法であれば、1週間程度を目安に食べきるとよいでしょう。
長期間保存したい場合は冷凍がおすすめです。蒸す、または茹でてから水気をよく切り、保存袋に入れて冷凍すると、1カ月ほど保存できます。食べる際は自然解凍し、そのまま食べるほか、炒め物や煮物などの料理に使うと、食感を生かしておいしくいただけます。
アピオスの食べ方とレシピ5選
アピオスは皮が薄く、皮ごと食べられるため下処理が簡単で、日常の食事に取り入れやすい野菜です。両端や皮の硬い部分が気になる場合は、あらかじめ取り除いておくとよいでしょう。基本は茹でる、蒸すといったシンプルな調理ですが、煮物、揚げ物、炒め物、焼き料理まで幅広く活用できます。あらかじめ茹でたり蒸したりしておくと、その後の調理がしやすくなり、手早く一品を仕上げることができます。
アピオスの塩茹で

アピオスの甘みと香りをシンプルに味わえる塩茹で。小粒は短時間でほくほくに仕上がり、中粒以上はより甘みが濃く、ねっとりとした食感が楽しめます。皮が硬い場合は、茹でた後に剥いて食べます
材料(2人分)
- アピオス 150g
- 塩 小さじ1(ゆで水用)
作り方
- アピオスは皮付きのままよく洗い、水気を切る
- 鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したらアピオスと塩を入れて10〜15分茹でる
- 竹串がすっと通ったら取り出し、好みで塩(分量外)をふって食べる
アピオスの素揚げ

皮ごと揚げてホクホク感と香ばしさを味わう一品。小粒サイズは火の通りがよく、素揚げの甘みが引き立ちます。小粒はおつまみ感覚で食べられます。
材料(2人分)
- アピオス 150g
- 揚げ油 適量
- 塩 少々
作り方
- アピオスはよく洗い、水気をふく
- 160〜170℃の油で7〜8分、竹串がすっと通るまで揚げる
- 油をよく切り、熱いうちに塩をふる
- 好みで刻んだパセリ(分量外)を散らしてもよい
アピオスとベーコンのガーリック炒め

アピオスの甘みとニンニクの香り、焦がししょうゆでうまみを足し算。炒め物には大きすぎない中粒サイズが扱いやすく、火の通りが均一に。おかずとしての食べ応えも十分です。
材料(2人分)
- アピオス 150g
- ベーコン 50g(細切り)
- ニンニク 1かけ(みじん切り)
- オリーブオイル 大さじ1
- しょうゆ 小さじ1
- 塩・こしょう 少々
作り方
- アピオスは皮ごと10〜15分下茹でし、食べやすい大きさに切る
- フライパンにオリーブオイルを熱し、ニンニクを入れて香りが立ったら、ベーコンを加えて炒める
- アピオスを加えて軽く焼き色がつくまで炒め、しょうゆを回しかける
- 塩・こしょうで味をととのえる
アピオスの甘辛煮

素朴な甘みをじっくり引き出す和の煮物。煮物には中粒〜やや大きめサイズが向き、栗のようなほっくりとした食感になります。作り置きにも向いています。
材料(2人分)
- アピオス 150g
- だし汁 150ml
- しょうゆ 小さじ2
- みりん 小さじ2
- さとう 小さじ1
作り方
- アピオスはよく洗い、皮ごと鍋に入れる
- だし汁・しょうゆ・みりん・さとうを加えて中火にかける
- 落としぶたをして15〜20分、汁気が少なくなるまで煮含める
アピオスのガーリック蒸し

青森特産のアピオスとニンニクを組み合わせ、香り高く蒸し上げるシンプルな料理です。小粒は火が通りやすく、中粒以上はほくほくとした甘みが引き立ちます
材料(2人分)
- アピオス 150g
- ニンニク 1かけ(薄切り)
- バター 10g
- 塩 少々
- 黒こしょう 少々(好みで)
- 水 大さじ2
作り方
- アピオスはよく洗い、水気をふく
- フライパンにバターとニンニクを入れて火にかけ、ニンニクの香りが立ったらアピオスを加える
- 水を加えてふたをして弱火で10〜15分蒸し焼きにする
- 時々フライパンをゆすりながら、アピオスに竹串がすっと通るまで蒸したら、塩と黒こしょうで味をととのえる
アピオスの栽培方法

アピオスは種芋から育てる作物で、比較的栽培しやすく家庭菜園にも向いています。寒冷地に適応し、水はけのよい環境を好むため、基本のポイントを押さえれば安定した収穫が期待できます。プランターでも栽培でき、ツル性のため緑のカーテンとして取り入れることもできます。
準備・土づくり
アピオスは水はけのよい日なたを好みます。植え付け前に土をよく耕し、必要に応じて堆肥(たいひ)をすき込んでおきましょう。酸性土壌では生育が鈍くなるため、酸性が強い場合はピートモスを混ぜて土壌改良を行うと育ちやすくなります。プランターは大きめを選び、野菜用培養土を用いると手軽です。
植え付け
植え付けの時期は3〜5月頃が目安です。種イモを深さ5cmほどに植え付け、軽く土をかぶせます。アピオスはツル性植物のため、生育が進むと地上部が勢いよく伸びます。ツルが伸び始めたら、支柱やネットを立てて誘引すると、風通しがよく管理もしやすくなります。
管理・水やり
生育期間中は極端な乾燥を避け、土の表面が乾いたら水を与える程度で、適度な水分を保ちます。夏(6〜8月頃)に咲く花は、摘み取ることでツルの生育が促され、地下部の肥大につながります。比較的病害虫に強い作物ですが、風通しが悪いとハダニやうどんこ病が発生することがあります。
収穫
秋(10月下旬〜11月頃)に葉やツルが枯れ始めたら、収穫の目安です。イモは地下で数珠状につながっているため、掘り残しがないよう注意して収穫します。収穫後は乾燥させず、土に埋めたまま保存すると甘みが増し、条件がよければ春先まで少しずつ収穫することも可能です。
アピオスはマメとイモのいいとこ取り
アピオスは、マメ科ならではの栄養価と、イモ類のような食べ応えを併せ持つ、いわば「マメとイモのいいとこ取り」の健康野菜です。高タンパクで食物繊維やミネラルを豊富に含み、北米原産ながら青森県を中心に受け継がれてきました。皮ごと食べられ、茹でる、蒸す、揚げる、煮るなど調理の幅も広く、日々の食卓に取り入れやすいのが魅力です。素朴ながら滋養に富む「畑のうなぎ」アピオスを、季節の味として楽しんでみてください。

















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