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世界一長い大根! 守口漬で有名な伝統野菜「守口大根」とは【日本伝統野菜推進協会監修】

さとう ともこ

ライター:

連載企画:解説!全国伝統野菜

世界一長い大根! 守口漬で有名な伝統野菜「守口大根」とは【日本伝統野菜推進協会監修】

世界一長い大根「守口大根」。愛知・岐阜の木曽川流域で栽培され、名物「守口漬」の原料として受け継がれてきた幻の伝統野菜です。生で目にする機会はほとんどなく、すべてが漬物へと姿を変える希少な大根は、いったいどんな味なのでしょうか。愛知の醸造・発酵文化とともに歩んできたその来歴、特徴、食味や栄養、食べ方について、日本伝統野菜推進協会の監修のもと、守口漬の老舗・大和屋守口漬総本家への取材を交えて紹介します。

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守口大根とは

画像提供:大和屋守口漬総本家

守口大根は、長さ平均120~130cmの根を持ち、直径3~4cmの極めて細長い形状が特徴です。短めで愛知県扶桑町産の191.7cmが「世界最長の大根」としてギネス認定されています。葉は根の長さのわりに短めで薄い緑色をしています。

発祥は諸説ありますが、室町時代に淀川周辺の守口村(現・大阪府守口市)で生まれた説が広く知られ、1585年に豊臣秀吉が「守口漬」と名付けた伝承も残ります。一方、岐阜では江戸時代から栽培されている細くて長い「ほそり大根」という長良川流域の在来種に由来する説が有力です。

栽培には、水はけが良く通気性に優れ、地下1m以上まで柔らかく均質な砂質土壌が不可欠です。根が障害物に当たると曲がりや折れが生じるため、こうした条件を満たす木曽川流域の沖積地は数少ない栽培適地とされています。

明治以降に「守口大根」の名称が定着し、岐阜県の各務原市や笠松町で栽培され、戦後は木曽川を挟んだ愛知県扶桑町へも広がりました。都市化で栽培が途絶えた大阪の守口市でも2005年に市と市民により復活。その希少性から、「飛騨・美濃伝統野菜」「あいちの伝統野菜」「なにわの伝統野菜」に認定されています。

木曽川流域の産地/画像提供:大和屋守口漬総本家

守口漬と守口大根

守口大根は、守口漬の原料として全国にその名が知られるようになりました。昭和天皇が地方巡行で名古屋を訪れた際に献上された名産品です。守口漬は、守口大根を酒粕とみりん粕で漬け込む漬物で、明治時代に考案されました。みそや酒、みりんなどの醸造文化が根付く愛知の風土と結びつきながら、独自の食文化として発展してきたといわれています。

守口漬の製造は、塩漬けと粕漬けを合わせて5回の漬け替えを行い、収穫から完成までに約2年、種まきから足かけ3年を要する非常に手間のかかる工程です。極めて細長く、繊維が強く締まり、水分量のバランスに優れる守口大根は、長期間の漬け込みにも耐え、形を崩さず、心地よい歯切れを保ちます。この性質は他の大根では代替が難しく、守口漬ならではの食感と風味を生み出す決定的な要素です。

現在、守口大根は青果として流通することはほとんどなく、すべてが守口漬へと加工され、漬物文化とともに受け継がれています。

食味の特徴

守口大根は肉質が緻密で硬く、繊維質が強いのが特徴です。皮は薄いものの中身は締まり、辛みも強いため、生食には向きません。その個性が生きるのが酒粕やみりん粕での長期熟成です。約2年の漬け込み過程で硬い繊維は徐々に和らぎ、独特のシャキシャキ、バリバリとした歯ごたえへと変化します。加工によって引き出されるうまみと熟成に伴う香りの変化が、守口大根ならではの食味です。

旬の時期

守口大根の収穫期は12月から1月です。寒さが深まる時期に育った大根は身が締まり、ほのかな甘みとみずみずしさが増します。愛知・岐阜では全量が契約栽培で、収穫後は加工用として守口漬へと姿を変えていきます。

守口大根の栄養とその効果

守口大根には、大根由来の消化酵素であるジアスターゼ(アミラーゼ)をはじめ、食物繊維、ビタミンB群、ビタミンC、辛み成分のイソチオシアネートなどが含まれています。とくに加工して守口漬にすることで、ミネラルやビタミンB群の割合が高まり、発酵・熟成の過程でメラノイジンと呼ばれる成分も生まれます。
※引用:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

ジアスターゼ

でんぷんを分解する消化酵素で、胃腸の働きを助け、食後の消化を促します。

イソチオシアネート

大根特有の辛み成分で、抗酸化作用があるとされます。加工で減少しますが、守口大根の個性を形づくる成分です。

メラノイジン

発酵・熟成で生じる褐色成分で、抗酸化作用が期待され、守口漬の色合いや風味の形成に関わります。

守口大根のおすすめレシピと守口漬アレンジ5選

守口大根は繊維質で辛みも強いため、天ぷらやきんぴらにすると独特の歯切れや風味が引き立ちます。一方、守口漬はご飯のおともに最適で、卵料理や寿司、チーズとも好相性です。ここでは守口漬を使ったアレンジレシピと、守口大根の青果レシピをあわせて5品紹介します。なお、青果レシピには白首大根を使用しています。

守口大根のきんぴら

守口大根の歯切れの良さを生かした素朴なきんぴら。甘辛味でご飯のお供や常備菜に。

材料(2人分)

  • 守口大根(青果) 150g
  • ごま油 小さじ2
  • 砂糖 小さじ1
  • みりん 小さじ2
  • しょうゆ 小さじ2
  • 白ごま 少々
  • 唐辛子(輪切り・一味など好みで)少々

作り方

  1. 守口大根は皮をむき、細めの拍子木切りにする
  2. フライパンにごま油を熱し、中火で守口大根を炒める
  3. 全体に油が回ったら、砂糖・みりん・しょうゆを加える
  4. 水分が飛ぶまで炒め、仕上げに白ごま、唐辛子を加える

守口大根と葉のかき揚げ

守口大根の歯切れと葉のほろ苦さを味わうかき揚げ。塩であっさりいただきます。

材料(2人分)

  • 守口大根(青果) 120g
  • 守口大根の葉 1/2株分
  • 小麦粉 大さじ3
  • 冷水 大さじ3〜4
  • 揚げ油 適量
  • 塩 適量

作り方

  1. 守口大根は皮をむき、5cm長さの細めのせん切りにする
  2. 葉はよく洗い、水気を拭いて3〜4cm幅に切る
  3. ボウルに大根と葉を入れ、小麦粉をまぶして全体を軽く混ぜる
  4. 冷水を加え、粉気が少し残る程度にさっと混ぜる
  5. 170℃に熱した油に、食べやすい大きさにまとめて入れ、カラッと揚げる
  6. 油を切って器に盛り、塩を添える

守口漬卵かけご飯

画像提供:大和屋守口漬総本家

あつあつのご飯と刻んだ守口漬をのせるだけ。守口漬の甘みと塩気がアクセントになり、しょうゆいらずで楽しめます。

材料(1人分)

  • 温かいご飯 茶碗1杯分(約150g)
  • 卵 1個
  • 守口漬 10〜15g(粗みじん切り)

作り方

  1. 守口漬は5mm角ほどを目安に刻む
  2. 茶碗に温かいご飯を盛り、中央を少しくぼませて卵黄をのせる
  3. 刻んだ守口漬を周りに散らし、全体をよく混ぜていただく

守口漬だし巻きたまご

画像提供:大和屋守口漬総本家

守口漬のうまみとだしの風味がしみわたる、いつもと一味違うだし巻きを朝食に。

材料(2人分)

  • 卵 4個
  • 守口漬 50g(粗みじん切り)
  • だし汁 大さじ2
  • しょうゆ 小さじ1
  • 砂糖 小さじ2
  • サラダ油 適量

作り方

  1. 守口漬は5mm角ほどを目安に刻む
  2. ボウルに卵を割り入れ、だし汁、しょうゆ、砂糖を加えて混ぜる
  3. ザルでこし、刻んだ守口漬を加える
  4. 卵焼き用フライパンに油を熱し、数回に分けて焼き上げる

守口漬ちらし寿司

画像提供:大和屋守口漬総本家

刻んだ守口漬を混ぜた酢飯に、えびや錦糸卵、青菜を彩りよく合わせたちらし寿司。守口漬の甘みと歯切れが酢飯や具材をバランス良くまとめます。

材料(作りやすい分量・2~3人分)

  • 温かいご飯 400g
  • 守口漬 30〜40g
  • むきえび(ゆで) 6〜8尾
  • 菜の花(または小松菜) 1/2束
  • 干ししいたけ(戻したもの) 1枚
  • 焼きのり 適量

【すし酢】

  • 酢 大さじ2
  • 砂糖 大さじ1
  • 塩 小さじ1/3

【卵】

  • 卵 2個
  • 砂糖 小さじ1
  • 塩 少々

作り方

  1. 下準備をする。守口漬は細かく刻む。干ししいたけは甘辛く煮て角切りにする。菜の花はさっとゆでて水気を絞り、食べやすく切る。卵は砂糖・塩を加えて薄焼きにし、角切り(または錦糸)にする
  2. 酢飯を作る。ボウルにすし酢の材料を混ぜ合わせ、温かいご飯に回しかけ、切るように混ぜて冷ます
  3. 酢飯に刻んだ守口漬と干ししいたけを加え、全体を軽く混ぜる
  4. 器に盛り、えび・卵・菜の花を彩りよくのせ、仕上げに刻んだ焼きのりを散らす

守口大根の栽培方法

画像提供:大和屋守口漬総本家

守口大根は、その特異な形状と生育特性から、家庭菜園での栽培はきわめて困難です。播種直後から主根が勢いよく伸びるため、土づくりや水管理の精度が求められ、現在も限られた産地で専門の生産者によって栽培されています。ここでは、木曽川流域を中心とした産地での一般的な栽培の流れを紹介します。

床掘り・うね立て(9月)

播種に先立ち、1m以上の深さまで土を掘り下げ、石や硬盤を取り除きます。水はけと通気性を確保するため、丁寧な床掘りとうね立てが欠かせません。

種まき(9月)

播種から20日ほどで、細い主根が一気に下へ伸び始めます。近年は9月でも猛暑が続くため、気温を見極めながら播種時期を調整し、熱中症対策も必要とされています。

管理

播種から収穫まではおよそ90日。生育期間中は過湿や乾燥、台風による苗の被害に注意が必要です。近年は夏の異常高温の影響で生育が進まず、気候変動の影響も顕在化しています。

収穫(12~1月)

非常に長く伸びるため、手作業での掘り上げには大きな労力がかかります。現在はトレンチャーと呼ばれる機械で深く耕しながら収穫する方法が主流です。

そして、翌年の良質な守口大根づくりに欠かせないのが母本選抜です。例年12月下旬、生産者や県、JA職員らが一本ずつ形状や病害虫の有無を確認し、原々種と母本用を選抜します。母本用の大根は根の首から20~30cmで切断して定植し、翌年の種子を採取します。こうした工程を毎年繰り返すことで、守口大根の品質と品種が守られています。

漬物文化と共に歩む”技あり”の伝統野菜

画像提供:大和屋守口漬総本家

守口大根は、世界一長い大根として知られる希少な伝統野菜です。木曽川流域の限られた産地で、高度な技術を持つ生産者によって大切に育てられ、そのすべてが守口漬へと姿を変えます。

約2年をかけて丁寧に漬け込まれた守口漬は、独特の歯ごたえと深いうまみが魅力。ご飯のおともはもちろん、卵料理やちらし寿司など、さまざまなアレンジでも楽しめます。

しかし現在、生産者の減少や高齢化、気候変動の影響により、産地は厳しい状況に直面しています。守口漬を味わい、そのおいしさを広めていくことで、守口大根と伝統的な食文化を未来へつなぐ大切な一歩となるでしょう。

取材協力:株式会社大和屋守口漬総本家
日本伝統野菜推進協会

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